チラッと見えるだけで、一気に老け見えしてしまう白髪。白髪はまだ解明されていないことも多く、完全になくすことは難しいのが現状です。そのため、白髪カバーのために定期的に染めているという人も多いと思います。白髪染めをしている人からは、頭皮のダメージが心配という声も聞かれます。
そこで今回は、サロン向けのヘアカラー剤やヘアケア剤などを製造販売している株式会社ミルボンの研究員の櫻井さん・長谷部さんに、カラー剤による頭皮トラブルやアレルギーについて教えていただきました。
■白髪染めで頭皮がかゆい、しみる、かぶれた…原因は?
ーーサロンや自宅で白髪を染めている時に、頭皮がピリピリしてしみたり、痒くなったりという経験があります。カラーリングで頭皮に影響が出るのはなぜですか?
「ヘアカラー中に頭皮がピリピリする、しみる、痒くなるというのは、多くの場合はカラーリング剤による一時的な皮膚への刺激と考えられます」
「一時的な皮膚への刺激というのは、ヘアカラーに限らず、刺激物質に触れた時に感じるもの。ヘアカラー剤は、過酸化水素やアンモニアなどのアルカリ剤を使用しているものが多く、それらが刺激の原因になることが多いと考えられます」
「一時的な皮膚刺激の場合は、染めている時、つまりカラー剤が頭皮についている時に刺激を感じることが多く、洗い流して1時間もすれば刺激や赤み、痒みがなくなることがほとんどです」
ーーカラー剤を洗い流してしまえば、刺激や痒みがなくなるということは、特に心配することはないのでしょうか?
「カラー剤で一時的な皮膚刺激を感じた場合、頭皮が敏感になっている可能性が高いので、新しいシャンプーやヘアケア剤などを使用することは避けて、日常的に問題なく使えているアイテムを使うのがいいと思います」
■痒みや赤みがヘアカラー後、数日続くならアレルギーの可能性も
「ただ、ヘアカラーをして数時間〜半日後くらいから痒みや赤みが出る、腫れる、湿疹が出る。そして、それが数日間続く場合は、カラー剤によるアレルギーの可能性があるので注意が必要です」
「これは一時的な皮膚刺激とは異なり、アレルギーの原因となる物質に対する過剰な自己防衛反応、いわゆるアレルギー反応によって起こります」
「一般的に、症状が出始めて2日後くらいに一番悪い状態になりやすい傾向があり、ひどい場合は顔がパンパンに腫れる、頭皮がジュクジュクになってしまう、カラー剤を塗っていない体にまで赤みや痒みが出ることもあります」
「こうした症状が出た場合は、まず皮膚科を受診してください」
ーーカラー剤でアレルギーになることがあるんですね。それはどんなカラー剤でも起こるのでしょうか?
「ヘアカラーリング製品と一言で言っても色々な種類があります。大きく分けると、『酸化染料」を用いたヘアカラー(永久染毛剤)と、ヘアマニキュアやヘアカラートリートメントのようなもの(半永久染毛剤)に分類でき、そのうち、アレルギーのリスクに注意したいのは、酸化染料を用いたヘアカラーです」
「酸化染料の内、主要な染料の一つに『パラフェニレンジアミン』という成分があり、その通称を取って『ジアミンアレルギー』と呼ぶこともあります」
「ジアミン以外の染料もアレルギーの原因(アレルゲン)となりますが、ジアミンを使ったカラー剤が多いので、ヘアカラーでアレルギーを起こした場合、ジアミンが原因であることが多くなっています」
「花粉症など他のアレルギー疾患と同様に、特定の成分や物質に対して過剰に免疫を獲得してしまうとアレルギー症状を発症すると考えられており、一度ジアミンアレルギーを発症してしまうと、ジアミンを使用したカラー剤で髪を染めることはできなくなってしまいます」
「ジアミンアレルギーを発症した場合、ヘアカラーでアレルギーになったことを必ず美容師さんに伝えてください。ジアミンが入っていても別の商品を使えば大丈夫、別の美容室に行けば大丈夫と考えてしまいがちですが、ジアミンアレルギーになった方はジアミン配合カラー剤は使えません」
「ホームカラー用のカラー剤にもジアミンは使われているので、アレルギーに関して言うとサロン用とホームカラー用のどちらが安全ということはありません。」
■ヘアカラーの不安や疑問は美容師さんに相談を
ーージアミンアレルギーになった場合は、もう髪を染めることはできないのでしょうか?
「ヘアマニキュアやカラートリートメントなど、ジアミンを使用していないヘアカラーリング製品であれば、染めることが可能な場合が多いので、美容師さんにアレルギーがあることを伝えた上で、染める方法があるか相談することをおすすめします」
ーー花粉症は、体内に蓄積された花粉が一定の量を超えると発症するという説がありますが、ジアミンアレルギーもヘアカラーを長年している人やヘアカラーの頻度が高い人がなりやすい、ということもあるのでしょうか?
「統計的なデータは持ち合わせてはいませんが、おそらくそういったことはあるだろうと思います。アレルギーの発症メカニズムとしては、同様のことが起きていると推測できるので、染めている年数が長い人、染める頻度が高い人ほどアレルギーが起こる可能性は高いと考えられます」
「花粉症のような他のアレルギー疾患がある、いわゆるアレルギー体質の人の方が、ジアミンアレルギーを発症しやすいという話もありますが、それについてもはっきりしたことは分かっていません。ただ、一般的に肌のバリア機能が低い人は、肌からアレルゲンを吸収しやすいので、関連はあるかもしれません」
ーー先に伺ったヘアカラーによる一時的な皮膚刺激を感じやすい人が、刺激を感じたまま染め続けているとアレルギーを発症してしまうということはありますか?
「アレルギーの原因となる成分と一時的な皮膚刺激の原因となる成分は異なりますので、一時的な皮膚刺激を感じやすい人がアレルギーになるとは言い切れません。花粉症などと同様に、同じようにヘアカラーをしていてアレルギーを発症する人もいれば、しない人もいます」
「ただ、アレルギーに直結しないとはいえ、一時的な皮膚刺激も頭皮のダメージに繋がりますので、ヘアカラーするたびに刺激を感じるという場合は、皮膚科を受診したり、美容師さんに相談したりすることをおすすめします」
ーーヘナで染めている人もいますが、ヘナはアレルギーを起こさないのでしょうか?
「ヘナと言っても、ヘナに別の染料を混ぜているカラー剤もありますし、ヘナ自体へのアレルギーもゼロではないので、『ヘナ』だからリスクがないとは言えないと思います」
「アレルギーが心配な人や肌が弱く刺激を感じやすい人は、一人で判断するのではなく、美容師さんに相談しながら使用するカラー剤を選ぶことをおすすめします」
ーーありがとうございます。次回は、ヘアカラーによる頭皮のダメージやアレルギーを防ぐためにするべきことや、ヘアカラーをするときに気をつけることなどを教えていただきます。
(つやプラ編集部)
【櫻井 勇希(さくらい ゆうき)さん プロフィール】
株式会社ミルボン 研究開発部 基礎研究グループ 安全性評価室 マネージャー
関西大学非常勤講師。名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻(化学系)修士課程修了。2007年入社。ヘアケアブランド「Aujua」の立ち上げに携わり、その後育毛・スカルプケア製品の研究開発を担当。2018年より全製品の安全性評価を担当している。
【長谷部 未来(はせべ みき)さん プロフィール】
株式会社ミルボン 研究開発部 基礎研究グループ シニアリサーチャー
関西大学非常勤講師。お茶の水女子大学大学院ライフサイエンス修士課程卒。2008年入社。ヘアカラーブランド「オルディーブ」の開発を10年間担当。2019年からは、ヘアケアアイテムが毛髪に与える作用検証などの基盤研究を担当している。
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