お肌が乾燥すると、化粧のノリが悪くなるだけでなく、さまざまな肌トラブルを引き起こします。
肌の乾燥に悩む30代、40代の女性のために、乾燥肌の原因から、スキンケアはもちろん、生活の中で気をつけたいことまでを、皮膚科医の矢加部文先生に、くわしくお伺いしました。
■目次
1.肌が乾燥するとどんな症状が起こる?
(1)ドライスキンとは
(2)ドライスキンになりやすい部位
2.乾燥肌を放っておくとどうなるの?
3.肌の乾燥の原因は?
4.乾燥肌の対処法~スキンケア編~
(1)クレンジング
(2)保湿
(3)洗顔後、入浴後のケアが大切
(4)ニキビの原因も、乾燥かも!?
(5)お肌のためにもしっかり入浴を
5.乾燥肌の対処法~食事編~
6.乾燥肌の対処法~睡眠編~
7.乾燥肌の対処法~運動編~
8.乾燥肌の対処法~環境編~
9.外出先での応急処置
■プロフィール
形成外科・美容皮膚科 みやびクリニック 矢加部文 先生
2002年に長崎大学卒業後、長崎大学形成外科入局。その後、日本形成外科学会専門医、日本抗加齢学会専門医、乳がん学会認定医、マンモグラフィ認定読影医として活躍中。
■1.肌が乾燥するとどんな症状が起こる?
肌が乾燥すると、どのような症状がみられるか、くわしくご説明します。
(1)ドライスキンとは
乾燥肌は、別名「ドライスキン」とも呼ばれています。ドライスキンは、肌の水分や皮脂が不足することによって、うるおいがなくなった肌の状態を指します。
ドライスキンになると、入浴後に肌がつっぱる、全身がカサカサする、粉をふく、かゆみが出る、など、さまざまな症状を引き起こします。
(2)ドライスキンになりやすい部位
特に乾燥しやすいのは、もともと皮脂の分泌が少ない部分です。
顔では頬や目、口のまわりなど。身体では、すね、ひざ、ひじ、足の裏などが挙げられます。
■2.乾燥肌を放っておくとどうなるの?
乾燥肌を、そのまま放置すると、どのようなトラブルが起こるのでしょうか? くわしくご紹介していきます。
(1)少しの刺激でかゆみが発生
ドライスキンは、通常の肌よりもバリア機能が低下し、外部刺激に対して肌が無防備な状態です。
そのため、髪の毛や衣類の繊維など、通常ならほんの少しの刺激でも、ドライスキンにとっては大きな刺激になり、かゆみを引き起こしてしまいます。
(2)皮膚炎を引き起こすことも
ドライスキンの肌は、バリア機能が低下しており、皮膚の表面から細菌が侵入しやすい状態になっています。 細菌が繁殖して皮膚の内部に入り込むと、皮膚炎を引き起こす可能性もあります。
(3)細菌以外にも注意が必要
気をつけたいのは細菌だけではありません。花粉やハウスダストといった、アレルギーの原因となっているアレルゲン物質や化学物質に対しても、肌のバリア機能が弱まると、過敏に反応しやすくなります。
(4)かゆみの悪循環
肌が乾燥することでかゆくなり、肌を掻くと、肌の表面が荒れてしまいます。そうなると、肌がますます刺激を受けやすい状態になり、かゆみがさらに強くなるといった悪循環を引き起こす恐れがあるのです。
また、肌を掻くことで、かゆみの原因であるヒスタミンを誘発する物質が発生し、かゆみを強めてしまうこともあります。
(5)他にもさまざまなトラブルが
乾燥肌が悪化すると、皮膚がカサカサしたり、粉をふいたようになったりします。さらにはひび割れや、ウロコのように見える鱗屑が生じることも。また、赤みや湿疹が生じる場合もあります。
それだけではありません。乾燥肌は皮脂が詰まりやすい状態にあるので、ニキビの原因にもなります。
さらに、乾燥肌は水分と皮脂が少ない状態なので、肌を守ろうとして角質が固くなり、シワができやすくなってしまいます
■3.肌の乾燥の原因は?
では、なぜ肌は乾燥するのでしょうか、その原因を探ってみましょう。
(1)外的要因
外的要因として考えられるのは、紫外線や花粉、それにほこり、大気汚染などのアレルゲンです。さらに、急激な温度や湿度の変化も乾燥肌の原因になります。
(2)内的要因
内的要因としてまず挙げられるのは、加齢です。加齢によって、水分を保持する力が弱まることで、肌が乾燥してしまいます。
また、角質のターンオーバーの乱れ、女性ホルモンの減少やバランスの乱れも、乾燥の一因です。
(3)間違ったスキンケア
洗浄や保湿など、スキンケアが間違っていても、乾燥を引き起こすので注意しましょう。
洗顔の際、ゴシゴシこすり過ぎると、肌を痛める原因になったり、皮脂を過剰に洗い流すことになったりします。洗顔後にすぐに保湿を行わないと、さらに皮膚の水分は奪われます。
またシートパックを長時間乗せることで、かえって皮膚の水分を奪っている場合もあるので、気をつけましょう。
(4)バランスの乱れが乾燥の原因
これらの外的、内的要因が原因で、表皮の皮脂や皮脂膜、角層の細胞内にあるNMFと呼ばれる天然保湿因子や、セラミドなどの角質細胞間脂質のいずれか、もしくは両方が減少することがあります。
そうなると肌の成分バランスが崩れ、乾燥を引き起こしてしまうのです。
■4.乾燥肌の対処法~スキンケア編~
次に、乾燥肌に効果的なスキンケア方法をくわしくご紹介していきます。
(1)クレンジング
乾燥肌の人や、冬場乾燥がひどくなる人は、オイルタイプでなく乳液タイプのクレンジングがおすすめです。
オイルタイプは、メイクを落とす力が強い半面、皮脂も奪いやすくなるため、乾燥を誘発しやすい一面があります。
(2)保湿
外側から徹底的に保湿ケアをする習慣をつけましょう。毎日の保湿ケアが、水分の蒸発を防いでなめらかな肌を守ってくれます。
化粧品は、ヒト型セラミド配合など、保湿力の高いものを選びましょう。
化粧水で肌に水分をたっぷり与えた後は、乳液やクリームで肌にフタをして、水分が逃げないようにお手入れをします。
(3)洗顔後、入浴後のケアが大切
洗顔後や入浴後は、肌の水分や皮脂が奪われている状態にあります。タオルで軽く押さえて水気を拭き取ったら、すぐに保湿ケアを行いましょう。
洗顔後、入浴後5分以内に保湿ケアをすることが大切です。
(4)ニキビの原因も、乾燥かも!?
「ニキビができているから」と、ベタつき予防のために保湿を簡単に済ませるのはNGです。乾燥が原因でニキビや吹き出物ができていることもあります。
きちんと保湿を行なうことが、ニキビや吹き出物などの肌荒れを守る重要なポイントなのです。
(5)お肌のためにもしっかり入浴を
入浴で全身の血の巡りをよくすることが、末梢臓器である皮膚へと栄養を行き渡らせることにつながります。
「面倒だからシャワーで済ませよう」と思わずに、肌のためにもしっかりと入浴する方がいいでしょう。リラックス効果やストレス解消効果も高まりますよ。
■5.乾燥肌の対処法~食事編~
次に、乾燥肌に効果的な食事についてご説明しましょう。
(1)ビタミンB2
肌の健康のために、バランスのとれた栄養補給を心がけましょう。特に、ビタミンB群をはじめとする、ビタミンの摂取が、積極的な乾燥肌予防となります。
中でも「美肌ビタミン」と呼ばれているビタミンB2は、皮膚の健康にとても関係が深い成分です。
ビタミンB2は、肌を作る材料となる、たんぱく質や脂質、炭水化物(糖質)の代謝に深く関わり、細胞の再生をうながして、なめらかに整った健やかな肌を育んでくれます。
激しい運動や仕事で疲れた時や妊娠中は、ビタミンB2が不足しがちです。積極的に摂取するように心がけましょう。
(2)その他のビタミン
ビタミンB6は、皮膚炎の予防に働きかけてくれる、肌に欠かせない成分です。ビタミンB2とともに皮脂をコントロールして、ニキビ改善に効果を発揮します。
抗酸化作用、皮膚や粘膜の修復に欠かせないのがビタミンA、コラーゲン生成やシミの予防に効果的なのがビタミンC、末梢の血の巡りをよくしてくれるのがビタミンEです。
肌状態を健康に保つために、ビタミン成分は欠かせません。食事での摂取が難しい場合は、ビタミン剤やサプリメントを活用するとよいでしょう。
(3)ビタミンを多く含む食べ物
うなぎやサバなどの青魚、牛・鶏・豚レバー、アーモンドなどのナッツ類にはビタミンB2が多く含まれています。
また、豚肉、うなぎ、豆類にはビタミンB6が、牛・鶏・豚レバーやうなぎなどにはビタミンAが豊富です。
果物(特にかんきつ類)や野菜(特にトマト、ブロッコリー)にはビタミンCが多く含まれ、アーモンドや落花生、ヒマワリ油、いくら、たらこにはビタミンEが多く含まれています。
これらの食品を積極的にとるようにしましょう。
■6.乾燥肌の対処法~睡眠編~
健康な肌のためにも、上質な睡眠は欠かせません。
(1)質の高い睡眠を
私たちの肌は、日々眠っている間に細胞分裂と再生を繰り返して修復されています。日中受けたダメージを残すことなく肌荒れを予防するのに必要なのが、「質の高い睡眠」です。
(2)肌のゴールデンタイム
22時から翌2時までの間は、「肌のゴールデンタイム」と呼ばれています。この時間にしっかりと睡眠をとると、肌を育む成長ホルモンがより分泌されやすくなるのです。
毎日6時間以上はぐっすりと眠るように心がけ、休日のだらだら寝や夜更かしを避けて、体内時計のリズムを壊さないように気をつけましょう。
(3)ブルーライトは避ける
スマートフォンやパソコンなどの光であるブルーライトは、入眠の妨げになるだけでなく、光老化の原因となる恐れもあります。就寝前にスマートフォンやパソコンを見るのは避けましょう。
■7.乾燥肌の対処法~運動編~
ストレス解消のためにも、常日頃から体を動かす習慣を取り入れましょう。
(1)軽めの運動でOK
激しい運動よりも、ウォーキングやヨガ、ストレッチなどの軽めの運動の方が肌には効果的です。
体をほぐして酸素を体内にたっぷりと取りこむことで、血の巡りがよくなり、気持ちもやわらぎ、ストレス解消につながります。
(2)筋肉を維持しよう
ほどよく筋肉がついた体を維持することも大切です。筋肉がポンプとなって血液の巡りがスムーズになり、体のすみずみまで栄養が行き渡って、肌の健康へとつながります。
■8.乾燥肌の対処法~環境編~
室内環境や季節ごとの対策も重要です。特に冬場は、外気が乾燥していることやエアコンなどの暖房機の影響で、皮膚の水分が蒸発しやすくなっています。
加湿器などで空気を加湿することも、肌荒れ対策のひとつです。加湿器は清潔な状態を保つようにしましょう。
■9.外出先での応急処置
外出先でお肌の乾燥を感じたら、どのような応急処置をするのが効果的なのでしょうか。
(1)スプレー化粧水
外出先でお肌が乾燥したなと思ったら、早めの水分補給を心がけましょう。
バッグの中に常にスプレー化粧水をしのばせておくと安心です。乾燥が気になったらシューっとスプレーすればいいだけ。メイクも落ちないので安心です。
(2)乳液、保湿クリーム
化粧水だけで乾燥が補えないときは乳液、もしくは保湿クリームを使いましょう。
乾燥が気になる部分につけてあげてください。メイク直しは保湿した上から行ないましょう。
(3)ワセリン
乾燥による皮むけやヒリヒリが生じたときは、ワセリン軟膏を塗って皮膚のバリア機能をサポートしましょう。
ワセリンはドラッグストアでも販売されており、万能に使う事ができます。
ワセリンを塗っても乾燥が治らない場合、もしくは湿疹や肌荒れが生じた場合は、専門医の診察を受けてください。
肌の乾燥には正しいスキンケアと、規則正しい生活、バランスのとれた食事が大切です。体の健康がお肌の健康にもつながります。30代、40代は、ヘルシーな生活を心がけましょう。
(美容ライター 大中千景)
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