美容業界の最前線で活躍しているプロフェッショナルに、その輝きの秘訣を伺うインタビュー。
今回は、ヘア&メイクアップアーティストとして、長年に渡りトップランナーとして走り続けている山本浩未さんに、大人女性の美容についてお話を伺いました。
年齢を重ねることで起こる変化を受け入れて、次へのステップに!
ーーつやのある肌と髪、イキイキとしたとした表情が印象的な山本さん。ずっと以前から、そして今も変わらず精力的に活動を続けていらっしゃいますが、エイジングをお感じになることはありますか?
もちろんありますよ。40代半ば頃から肌のハリがなくなったり、爪がもろくなったり、目が見えにくくなったり、ちょっとずつ変化があったのですが、なんとなくやり過ごしていました。
「もうやり過ごせない」と思う段階にきたのは49歳の時。体力がなくなるし、気持ちも落ち込むし、色々なことが変化していて、これからどうなっちゃうんだろう? と不安になりましたね。
でも、そういった変化をすでに経験している少し年上の女性が周りにいて、その方たちに色々と話を聞いていたので、「ああ、先輩たちの話していた通りになるなぁ」「でも、少しやり過ごせばなんとかなるのね」と思えて助けられました。
様々な変化が起こってどうしたらいいんだろう? と悩むことも次へのステップになって、ヘアメイクの仕事に役立ったと思いますし。
40代こそ「時代の空気を感じさせるもの」を取り入れるべし!
ーー心身ともに変化があったのですね。メイクにも変化はありましたか?
49歳の頃、体型が変わってどんな服を着ても似合わないと、すごく悩んでいた時に、スタイリストの地曳いく子さんの本を読んだんです。
地曳さんは、洋服のスタイリングやチョイスのことを本に書いていたのですが、体型が変わって見た目が変わったのなら考え方を変えて、「今の自分に合う服を着なさい」と書いていたんです。
当たり前のことのようですが、「なるほど!」と思いましたね。自分が一番イケてた30代の時に好きだった服、似合うと思ってた服を引きずって、今も似合うような気がして買うけれど、似合わない。
そうではなく、今の自分に似合うものを買いなさいと書いてあって、目からウロコでした。
その本で一番響いたのが、「今の時代を表す洋服を着ると、それがパワーになる」ということ。「良いものを一生ものとして使いなさい」と言われて育った世代で、それまでに買ったいいものを着続けようと思っていたけれど、そうではなく、「今の時代を語るものを買うといい」とあったんです。
それで試しに買ってみたら、それだけで元気になるし、自信が持てる! そういうことがあって、時代の空気を取り入れることはすごく大切なんだ! と思って、美容も同じだなと感じたんです。
その頃から少しずつメイクの方向性が変わってきました。それまでは、シンプルなメイクがいいと思っていましたが、シンプルなメイクにちょっと今時の色を入れるとか、そういうことを積極的にするようになりましたね。
そして、それを楽しむようになったら、美容に対する考え方も変わってきたように思います。
メイクにも、シンプルがいい時代もあれば、色を使う時代があったり、太い眉が流行したり、バッチリまつげが流行ったり、赤い口紅が人気だったりと流行りがあって。
その時代の流れのようなものを取り入れていった方が、刺激を受けて活性化されて楽しい人生が送れる気がするんです。何歳でもその年齢なりの取り入れ方がありますから。
顔の中に「白・黒・赤」を作るのが大人メイクの基本です
ーー40代になるとの流行を取り入れることに臆病になりがちです。「流行りに乗ってイタい人」と見えないかな?と思ってしまったり。イタくならずに上手に流行を取り入れるには、どうすればいいのでしょう?
大人女性のメイクの基本は、顔の中に「白・黒・赤」の3色をちゃんと補ってあげること。そこにプラスちょっと流行りもの、というのが私のメイクの考え方です。
ーー顔の中に「白・黒・赤」の3色を作るとはどういうことですか?
白は「明るい肌色」、黒は「くっきりとした目周り」、赤は「頬や唇の血色」を指します。年齢を重ねると、顔の中の色のメリハリがなくなってくるんです。そうすると、顔がぼやけて見えてしまったり、くすんで疲れて見えたりするので、まずこの3色を顔の中にちゃんと作りましょう。
そうしてベースを立て直してメリハリをつけておけば、流行りものはそこにちょっと入れるだけでOKなんです。そうすれば、痛いメイクには絶対なりません。
若い人のメイクっていうのは、白・黒・赤を入れなくても、元から白・黒・赤がちゃんとあるので、流行りものだけ盛っても平気なんです。でも、大人の場合は、ベースの立て直しをちゃんとしてあげずに、流行りものをのせるだけだと、ゴテゴテのただのハリボテになってしまい、痛い感じになってしまうんです。
大人は、全部を流行りものにしてはダメ。白・黒・赤を作って、たるんで少し下がってきたものを水平に整えてあげるところまでがベースの立て直しで、大人メイクの基本なんです。
赤みのあるアイカラーでこの秋冬の空気を漂わせて
ーー今、メイクに時代の空気をプラスするにはどうすればいいでしょうか?
今は圧倒的にアイカラーがおすすめです。ここ最近、色を使うメイクが流行っていますよね。10年くらい前までは、色よりもキラキラなどの質感、肌に溶け込むナチュラルメイクが流行っていましたが、今は色を使いたい!
少し前までは、赤い口紅が人気でしたが、これからおすすめしたいのはアイシャドウですね。私自身も以前はあまりアイシャドウは使っていなかったのですが、最近はよく使います。
おすすめはオレンジみを含んだ、赤からオレンジくらいの色。これをアイメイクの中に入れてあげるんです。それが例えば、アイシャドウでもいいし、アイライナーでもいいし、マスカラでもいい。どこかにその色をちょっと入れると、ぐっと今風になる。
おすすめはアイシャドウなんですが、アイシャドウが苦手な人はアイライナーがおすすめです。ボルドーやピンク、パープルなどのアイライナーを、目尻にちょっとだけ入れると、それだけで今の空気を感じさせるメイクになりますよ。
ーーアイメイクに色を取り入れる時のポイントを教えてください。
色を効かせたアイメイクをするときのポイントは、マスカラとアイラインの両方を黒にしないことですね。両方黒にしてしまうと重い感じになってしまうので。
例えば、アイシャドウに赤っぽいオレンジ系の色を使うときは、マスカラを黒にするなら、アイラインはブラウンにしたり、両方ともブラウンにするのもおすすめです。ラインもマスカラも真っ黒にすると、古臭く強すぎな感じになってしまうんですよね。それをブラウンに変えることで、軽やかな感じになるんです。
大人メイクをイタくしないコツは「木を見て、森も見る」
ーー今時のメイクを取り入れる時に、「あれこれは違うな」「イタいかも?」という見極めはどうしたらいいですか?
「木を見て、森も見る」ことが大切だと思います。というのは、メイクは近くを近視眼的に見てしまいがち。でも、大人になると全体の雰囲気が大切なんです。
だから、鏡を持った腕をぐっと伸ばして、その距離から鏡を見てみるということをするんです。近くで見たり、遠くから見たりすることで、客観的な目を持てるようになります。
自分だけではわからないときは、友達に聞いてみるのが一番! それも自分が「ちょっといいな」と思う友達に、私どうかな? どうしたらいいと思う?と聞いてみるといいですね。
周りにいる女友達は最大の理解者であり、応援者であると思うんです。ちょっと厳しいことも言ってくれる友達を持ってる人は、きれいな人が多いの。みんなできれいになれるから。
私も周りの人に、「今日の口紅似合っているね」とか「眉がいいね」とか「それはあまり似合わないかも」と言うようにしています。そうすると、言われた人たちは意識をするようになるので、みんなきれいになっていくんです。
大人のベースメイクは下地使いがポイントです
ーー先ほどは、ポイントメイクについて伺ったのですが、40代になると、隠したいものが増えてベースメイクも変わってくると思います。ベースメイクで気をつけることを教えてください。
ベースメイクは肌の状態に合わせて、下地をうまく使うのがとても効果的だと思います。下地というのは、要は下着、補正下着のようなもの。
大人になると、素敵な服を着るときは、胸を綺麗に見せてくれるブラをしたり、補正下着を着けたくなりますよね。下地はその役目かなと思っていて、表には決して出ないけれど、土台のところで支えてくれるんです。
40を過ぎると、毛穴が目立つとか、化粧崩れしやすいとか、くすみが気になるとか、肌のトラブルが色々と出てきますよね。そういう肌トラブルは、下地の段階でケアしてあげるといいですよ。
なんとなく日焼け止めを塗ってファンデを塗ってる、面倒くさいから BBだけで済ませているという人も多いと思いますが、BBを塗る前に部分的に下地を使うとか、気になるところをちょっとフォローしてあげると、ベースメイクが大きく変わると思います。
隠したいものが増えてくる年代ですが、今は化粧品が本当によく出来ているので、とにかく隠そう! と思わなくても、塗るだけでなんとなく目立たなくなる化粧品がすごく多いんですよ。なので、こってり塗らなきゃダメ! と思わないで、まず全体に薄く塗って、その上で足りないとこだけ重ねるという風にしてあげるといいと思いますよ。
【山本浩未さん プロフィール】
ヘア&メイクアップアーティスト
1964年生まれ、広島県出身。資生堂ビューティークリエーション研究所を経て独立。「今すぐ実践できるテクニック」を発信するメイクアップの第一人者。メイクのみならず、気持ちが元気になるポジティブな美容理論が人気で、多数の美容誌、女性誌で連載を持つほか、テレビや講演会、トークショーなど多方面で活躍。化粧品や美容グッズの開発にも携わる。著書に、『おとなメイクは白・黒・赤だけでいい』(宝島社)など多数。
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