つやプラ世代の最大の関心事といっても過言ではない更年期。更年期の不調は人それぞれですが、眠りに関する不調が現れる人も多くいます。
十分な睡眠が取れなかったり、眠りの質が低下したりすることで生じることや、ぐっすり眠るためにするべきことなどを、睡眠と健康について研究している味の素株式会社の研究員・農学博士 坂内 慎さんに教えてもらいました。
■睡眠不足が肌・髪の老化、更年期太り、イライラを引き起こす?
「肌が新しく生まれ変わるためには、表皮の奥の基底層というところで細胞分裂が起こることが必要ですが、この細胞分裂は寝入りばなに多く分泌される『成長ホルモン』によって促進されます」
「また、皮膚の真皮にはコラーゲン線維がびっしりと詰まっていて、こちらも成長ホルモンにより合成が促進されます。このため健やかな肌やツヤのある髪を保つためには質の良い睡眠が欠かせません」
「睡眠と肥満に関しては、特に海外で著名な論文が出ています。睡眠が不足していると、満腹中枢と摂食中枢をつかさどるグレリンとレプチンというホルモンバランスの乱れが起こりがちです。これにより摂食が増強され、睡眠不足時は絶えず間食をしてしまい、肥満の原因にもなるという研究報告が出ています」
「更年期の不調のひとつであるイライラも、睡眠がしっかり取れているとかなり予防できるという報告(事例)が出ています。このように心身を健やかに保つためには、質の良い睡眠が欠かせません」
■夜の寝付きと朝の目覚めは眠りの質を測るバロメーター
「一般的には、朝すっきり起きられ、日中元気に活動ができ、夜も就寝後にぐっすり眠れれば問題ないといわれています。睡眠時間は7〜8時間が良いといわれています」
「しっかり眠れているか不安な人は、不眠症の判定に使われる国際基準である『アテネ不眠尺度』というテストがありますので、一度チェックしてみることをおすすめします。チェック結果が6点以上だったら睡眠に注意が必要です」
■眠りの質をアップさせるカギはアミノ酸!?
「ここまでお話ししてきたように、美と健康には質の良い睡眠が欠かせません。味の素が行っている睡眠に関する研究で、アミノ酸の一種である『グリシン』が眠りの質の改善に役立つことがわかってきました」
「グリシンは体内に広く存在して、さまざまな働きを担っています。例えば、皮膚のタンパク質であるコラーゲンを構成するアミノ酸の約3分の1がグリシンです」
「また、神経伝達物質の一つとしても働き、運動や感覚、呼吸といった身体機能にも関わっています。さらに長年にわたって、アミノ酸の研究を行っている味の素の研究成果から、睡眠改善にも効果があることがわかってきました」
「日ごろから睡眠に不満を持っている方々に、就寝前にグリシンまたは対照食を摂取してもらい、翌朝の疲労感を調査した結果、グリシンを摂取したときの方が、翌朝の目覚めがすっきりして、疲労感も軽くなることがわかりました」
「また、日ごろの睡眠に不満がない方々に、意図的に睡眠不足の状態で、寝る前にグリシンまたは対照食を摂ってもらい、翌日の作業効率と眠気を調べたところ、グリシンを摂取した時の方が日中の疲労感や眠気が軽くなり、作業の効率もアップすることがわかりました」
「睡眠には『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』があります。ノンレム睡眠で特に眠りの深いステージは、『徐波睡眠』と呼ばれ、成長ホルモンが活発に分泌され、筋肉や皮膚の修復を促す大切な時間です」
「寝る前にグリシンまたは対照食を摂取してもらったところ、グリシンを摂取した時の方が、よりすみやかに『徐波睡眠』に到達することがわかりました。深い眠りに早く達することにより、グリシンは睡眠の質を改善する効果があることがわかっています」
「また、質の良い睡眠と体温には深い関係があり、睡眠中は脳や体を休ませるために代謝量を減らすことが必要です。良質な睡眠では、まず手足の体温が上昇して体内の熱を外に逃がし、ついで深部体温がスムーズに低下すると考えられています」
「つまり、良質な睡眠のためには、スムーズに深部体温を下げることが大切なのです。研究によって、就寝前にグリシンを摂取すると、足の表面体温を上昇させ熱放散を高め、深部体温を下げる効果があることもわかってきました」
■食事でグリシンを摂取して眠りの質をアップ!
「アミノ酸の一種であるグリシンは、天然の食品に広く含まれ、特にエビやホタテなどの魚介類に多く含まれています。魚介類の甘みはグリシンの味なのです」
「エビやホタテを使ったレシピでグリシンを摂取し、さらに睡眠の質を高めるための生活習慣にも気を配りましょう。睡眠のためには朝食も重要です。朝目覚めたら、朝日を浴び、しっかりと朝食を食べることで体にスイッチが入ります」
「朝食はパンとコーヒーだけで済ませてしまう人もいますが、ヨーグルトやハム、卵などたんぱく質も食べましょう」
「また、夕食は就寝2時間前までに済ませるのが、質の良い睡眠のためにはベスト。夕食で消化の良くないものを食べることはおすすめできません」
■グリシンたっぷり!「エビとキャベツのオイマヨ炒め」
グリシンが摂れる「エビとキャベツのオイマヨ炒め」をご紹介します。
材料(4人分)
・キャベツ1/2個(500g)
・むきえび160g
・しめじ1/2パック
A
・酒大さじ1
・片栗粉大さじ1
B
・マヨネーズ大さじ3
・オイスターソース大さじ2
・塩少々
・こしょう少々
・サラダ油大さじ2
作り方
(1)キャベツはひと口大に切り、芯の部分は薄切りにする。エビはAで下味をつける。しめじは小房に分ける。
(2)耐熱性のビニール袋、または耐熱性の保存容器にキャベツを入れ、電子レンジ(600W)で3〜4分、少ししんなりするまで加熱する。
(3)フライパンに油を熱し、エビを入れて炒め、色が変わったら、しめじを加えて炒める。しんなりしたら、キャベツを加えてサッと炒めて火を止める。Bを加えて全体を混ぜ合わせ、塩・こしょうで味を調える。
最近、なんとなく体がだるい、疲れが取れにくいという人は、ぐっすり眠れていないのかもしれません。今日から食事や生活習慣を見直して、睡眠の質の改善を始めてみてはいかがでしょうか。
【坂内 慎(ばんない まこと)さん プロフィール】
味の素株式会社 研究員 農学博士 入社以来、アミノ酸研究を通じて、人の睡眠や健康に関する研究開発業務に従事。現在は食を通じて人の健康をサポートする事業開発を行っている。専門は脳科学、アミノ酸の栄養学。
参考
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【参考】
※アミノ酸大百科
※味の素パークアミノ酸大百科