化粧水からクリームまで、多くの化粧品に使用される成分「グリセリン」。成分表などで1度は目にしたことがある名前でも、実際どんな成分なのか知らない人も多いのではないでしょうか。
グリセリンは化粧品のみならず、医薬品や食品添加物など幅広い用途で使用されており、すぐれた吸湿性を持っているのが特徴です。
今回は、グリセリンの特徴や種類、グリセリンを使用した手作り化粧水の作り方を詳しくお伝えします。
■目次
1.グリセリンとは
2.化粧品成分としてのグリセリンの特徴・安全性
(1)グリセリンのアルコール成分はほとんど蒸発しない
(2)グリセリンの安全性
3.グリセリンの種類
4.グリセリンを使用した手作り化粧水の作り方
(1)用意するもの
(2)作り方
5.グリセリンを使用する際の注意点
(1)肌に直接塗らない
(2)容器を密閉する
■1.グリセリンとは
グリセリンはアルコールの一種で、無色透明のやや粘性のある液体です。植物や海藻などに多く含まれており、私たちの体内にも中性脂肪として存在しています。
水に溶けやすい性質を持っており、甘味があることから化粧品や医薬品、食品添加物と幅広い用途で使用されています。
強い吸湿性を持っているので、保湿剤としても使用することができ、手作り化粧水を作ることもできます。
グリセリンは、薬局やドラッグストアで簡単に手に入ります。
■2.化粧品成分としてのグリセリンの特徴・安全性
化粧品にも多く使用されるグリセリンですが、化粧品成分としてのグリセリンは下記を目的に配合されています。
・すぐれた吸湿性により肌の水分量をキープする
・乳液やクリーム特有の粘性をキープする
・質感を調整することで化粧品のテクスチャーをなめらかにする
・温感をもたらす
グリセリンにはすぐれた吸湿性があり、角質層の水分をキープすることで肌にうるおいをもたらす効果が期待できます。
グリセリンはヒアルロン酸と相性が良く、「水分を掴む」グリセリンの働きと「水分を抱え込む」ヒアルロン酸の働きによって、保湿力を発揮します。
(1)グリセリンのアルコール成分はほとんど蒸発しない
グリセリンは水と混ざることで発熱する性質を持っています。「アルコール類は蒸発するのでは?」と思われる方も多いかも知れませんが、グリセリンは「多価アルコール」に分類されるのでほとんど蒸発することがありません。
最近では、グリセリンの発熱性を利用した「温感クレンジング」にも注目が集まっています。
(2)グリセリンの安全性
グリセリンの安全性について気になる人は多いと思いますが、JETOC(社)日本化学物質安全・情報センターによると「グリセリンが皮膚に刺激を及ぼす可能性は低い」とされており、皮膚に対する危険性はほとんどないことがわかります。
また、メーカー独自の研究で、モルモットやウサギを使用したグリセリンの研究も行われていますが、ごくまれに軽度な皮膚刺激が見受けられるものの、共通して「皮膚刺激なし」と結論づけられています。
その安全性から、食品添加物として使用されることも多いです。
■3.グリセリンの種類
グリセリンには大きく分けて2種類あり、「植物性グリセリン」と「合成グリセリン」に分けられます。
植物性グリセリン
主に、パーム油やヤシ油を分解して精製する方法で作られています。化粧品で使用されているグリセリンは植物性グリセリンが主流です。
合成グリセリン
石油化学原料を利用して作られています。「合成」「石油」と聞くと、肌に良くないというイメージを持たれがちですが、純度が高く医薬品に多く使用されています。
■4.グリセリンを使用した手作り化粧水の作り方
グリセリンを使用した手作り化粧水をご紹介します。肌の乾燥状態によって濃度を調整することも可能ですが、初めての人は、グリセリンの濃度が5%の化粧水を作りましょう。
(1)用意するもの
・グリセリン 5ml(小さじ1)
・精製水 100ml
・容器(できればガラス製のもの)
グリセリンや精製水は薬局・ドラッグストアなどで簡単に手に入れることができます。今回筆者が購入したグリセリンは、100mlで500円、精製水は500mlで100円程度でした。
グリセリンは薬品コーナー、精製水はコンタクトレンズ用品のコーナーにおいてある場合が多いので、見つからない場合は店員さんへ確認してみてください。
容器は、衛生面からガラス製のものが好ましいです。ガラス製の場合、事前に煮沸消毒(熱湯消毒)をして、よく乾かしておきましょう。ガラス製ではない場合は、消毒用エタノールを使用したあとに中身をしっかり乾かしておいてください。
あると便利な「専用スポイト」
100円ショップの化粧品コーナーなどで販売されているので、こちらもチェックしてみてください。(計量スプーンや計量カップを使用してもOKです。)
(2)作り方
手をしっかり洗い、「精製水」と「グリセリン」を容器に入れ、よく混ぜ合わせたら完成です。
5%の作り方に慣れたら、グリセリンの濃度を10%(10ml)にしても良いでしょう。ただし、化粧品に配合できるグリセリンの濃度は10%が限度であり、欲張って入れすぎると、かえって肌のうるおいを奪い乾燥してしまう場合があるので注意してください。
また、手作り化粧水なので防腐剤や保存料などが一切含まれていません。化粧水は空気に触れると劣化が進んでしまうため、1度作った手作り化粧水は冷蔵保管し、1週間を目安に使い切るようにしましょう。
基本の作り方を覚えておけば、保湿成分や精油をプラスしてアレンジすることも可能です。
例えば、グリセリンと相性の良いヒアルロン酸をプラスすることで、肌の保湿力がアップします。
また、精製水を「ローズウォーター」に変えることで、香りを楽しみながらお手入れすることができます。精油をプラスする際は、光毒性のある「ベルガモット」「グレープフルーツ」「レモン」「アンジェリカ・ルート」は使用しないようにしましょう。
■5.グリセリンを使用する際の注意点
手作り化粧水を利用すれば、既製品の化粧水を買い続けるよりも経済的です。ただし、取り扱いには注意をしなければならない点があります。
(1)肌に直接塗らない
グリセリンは大気中の水蒸気を取り込んでしまうほど、吸湿性にすぐれています。薄めずに肌に直接塗ってしまうと、肌の水分まで奪い、乾燥肌や肌荒れを引き起こす可能性もあります。
肌に直接つけたり、グリセリン濃度が10%を超える手作り化粧水は作らないように注意しましょう。
(2)容器を密閉する
グリセリンの性質上、グリセリンが入った容器のキャップを閉め忘れると、空気の水蒸気を吸収してしまい容器中のグリセリン濃度が下がります。
はじめは粘性があっても、グリセリン濃度が下がるとともに粘性が失われてしまうため、グリセリンが入った容器を保管する際はきちんとキャップを閉めるようにしましょう
化粧水や医薬品、食品添加物と幅広い用途で使用される「グリセリン」は、吸湿性にすぐれていることから、角質層の水分をキープし肌の乾燥を防ぐ効果が期待できます。
グリセリンは薬局やドラッグストアで比較的安価で販売されているので、興味がある人は、ぜひ手作り化粧水にチャレンジしてみてください。
(コスメコンシェルジュ/美容ライター 岸田茉麻
日本化粧品検定1級保有。美容部員の経験を生かし美容ライターに転身。コスメのみならず、食生活や生活習慣を含めた美容に役立つ情報を発信中。)
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