芸術の秋ということで、秋になると数多くの展覧会が行われますが、中でも今話題になっている「春画展」。春画は浮世絵の一種で、昔から書籍では取り扱われていましたが、日本での展覧会は今回が初めてです。今回は開催に至った経緯や、その魅力をご紹介します。
■「世界が、先に驚いた。」その理由
『春画は、江戸時代に笑い絵とも呼ばれ、性描写と笑いが同居したユーモアや芸術性の高い浮世絵です。特に海外から高い評価を得ており、2013年から2014年にかけて大英博物館で行われた「春画 日本美術の性とたのしみ」は大きな話題を呼びました。』(永青文庫HPより)
春画展は海外での開催実績はあったものの、肝心の発祥地である日本での開催ができずにいました。性風俗を取り扱う春画は、18歳未満が入場できないことや、その内容の難しさから、日本各地の博物館・美術館で断られていたのです。そんな中、細川護煕氏が理事長を務める永青文庫が唯一、春画展に快諾をしました。
■女性客もたくさん!江戸時代から愛される春画展の魅力
性が主題なだけあって、女性は行きにくいのでは? とも思われる春画。筆者も先日春画展に足を運んだところ、女性グループのお客様が多かったようでした。もともと春画は江戸時代から、貴族や町民などの社会的地位に関わらず、また老若男女問わず愛された文化であることを考えれば、ごく自然なことなのかもしれません。筆者もまた、当時の絵師の意気込み溢れる性愛の世界観に、圧倒されるばかりでした。
■ため息が出るほど美しい「肉筆画」
今回の春画展では、浮世絵派生の初期に位置付けされる肉筆画の作品も数多く展示されています。どれも保存状態が素晴らしく、絵の具の色味も鮮明に残っており、美しく描き込まれた作品を前に、溜息が出るほどでした。その絵の保存状態の高さや豪華さからは、肉筆の春画がいかに貴族に長く愛されてきたものかということがよく理解できます。丁寧に描かれた肉筆画の数々は、「いやらしい」よりも「美しい」という表現がぴったりくるかと思います。
■ウィットに富んだ表現が楽しめる、江戸時代の作品
江戸時代に入ると印刷技術が発達し、いわゆる「浮世絵」が大流行となります。おなじみの葛飾北斎や喜多川歌麿の浮世絵なども数多く展示されていますが、絵自体の美しさや構成の素晴らしさだけでなく、江戸時代らしいユーモラスな表現が数多く楽しめるのも特徴です。本として長編になっているものもあり、江戸時代の春画の人気が伺えます。女性同士が行っても楽しめるのは、こうした春画の「笑い絵」としての魅力かもしれません。
■春画展を観終わった後は、ミュージアムショップへ
春画展の魅力は展覧会の内容だけではなく、永青文庫の建物自体の趣き深い美しさや展覧会後も楽しめるミュージアムショップにも隠されていると思います。永青文庫は駅から少し距離があり、途中に長い階段が。あるのですが、その間にも情緒が感じられます。ミュージアムショップにはユーモラスなTシャツやお洒落なエコバッグなど、さらに春画を楽しめるグッズが揃います。
女性でも気軽に足を運べる春画展。お一人でもグループでも、是非足を運んでみてください。
■『春画展』概要(※詳細は記事末の参考リンクをご参照ください)
・会期:2015年12月23日まで(11月2日・祝日を除く)
・会場:永青文庫 (東京都文京区目白台1-1-1)
・開館時間:9:30~20:00(日曜日は18:30まで)※入館は閉館の30分前まで。
・休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
・チケット:一般1500円
(レタル店主/デザイナー・パタンナー ヒグチトモミ)
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【画像】
・1枚目:喜多川歌麿「ねがひの糸口」(部分)
・3枚目:喜多川歌麿「歌満くら」 浦上満氏蔵
【参考】
※春画展 – 永青文庫