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かゆみはなぜ起こる?皮膚科医に聞く「乾燥肌のかゆみ」対策


大中千景

アラフォーになると、さまざまな肌トラブルに悩まされるようになります。肌がカサカサしてかゆみを生じる乾燥肌もそのひとつ。長引くかゆみにストレスを感じている人も多いことでしょう。

かゆみはなぜ起こる?皮膚科医に聞く「乾燥肌のかゆみ」対策

そこで今回は、肌にうるおいを取り戻してかゆみとサヨナラするために、乾燥肌によるかゆみの原因と対策について、皮膚科医の鈴木稚子先生にくわしくお聞きしました。

■目次

1.かゆみのメカニズムとヒスタミンの話

(1)かゆみが起こる原因は?

(2)ヒスタミンがかゆみと赤みを引き起こす

2.バリア機能の低下やphバランスの崩れ……乾燥肌とかゆみの関係

(1)刺激から肌を守り、うるおいを保つ角質層

(2)phバランスが崩れると!?

(3)中性に傾いた肌で皮膚常在菌の一部が増殖する

3.加齢、生活習慣……乾燥肌によるかゆみの原因と対処法

(1)アルカリ性の洗浄剤による乾燥

(2)加齢による乾燥

4.かゆみを予防するために!日常生活のポイント

(1)衣服やシーツの素材に注意

(2)加湿をしっかりと

(3)紫外線対策を充分に

(4)バランスのいい食生活を

(5)睡眠で肌のターンオーバー促進

鈴木稚子先生

■プロフィール
鈴木稚子 先生
1994年東京慈恵会医科大学医学部卒業
同大学皮膚科学教室、国立大蔵病院皮膚科 臨床研究部を経て、2017年に六本木スキンクリニックを開院
医学博士 日本医師会スポーツ認定医 日本温泉気候物理医学会 温泉療法医 日本旅行医学会認定医
女医+(じょいぷらす)所属

■1.かゆみのメカニズムとヒスタミンの話

かゆみの原因は、大きく2つに分けられます。

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(1)かゆみが起こる原因は?

まずひとつめは、紫外線の影響や、化粧品が肌に合わなかったなど、外的な刺激が原因となって起こる場合。汗やアレルゲン、時計や靴下の締めつけなどの圧迫も外的な刺激に含まれます。

もうひとつは、ストレスや乾燥が原因となって肌のバリア機能が乱れ、かゆみが起こる場合です。

(2)ヒスタミンがかゆみと赤みを引き起こす

紫外線や圧迫など外的刺激を受けると、皮膚に存在している免疫細胞がヒスタミンを分泌します。分泌されたヒスタミンは知覚神経に作用してかゆみを、毛細血管に作用して赤みを引き起こします

さらに、外的刺激は神経の末端にまで伝えられ、神経ペプチドという神経伝達物質を放出させます。そうすると、放出した神経ペプチドによって肥満細胞が刺激され、刺激された肥満細胞はヒスタミンを放出する……という悪循環が起こってしまうのです。

■2.バリア機能の低下やphバランスの崩れ……乾燥肌とかゆみの関係

私たちの皮膚の一番表面の部分を、「表皮」といいます。表皮にある角質細胞がきめ細やかに並び、細胞間脂質がしっかりと詰まっている部分が角質層(角層)です。

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(1)刺激から肌を守り、うるおいを保つ角質層

この角質層が水分の蒸発を抑え、肌をしっとりと保つ役割を担っています。角質層には通常30%以上の水分が含まれており、この水分が角質細胞間脂質と結合することで、蒸発しにくくなります。

セラミド

角質細胞間脂質にはさまざまな種類がありますが、一番重要なのがセラミドです。角質層は、セラミドの働きによって水分をたっぷりと含んでいます。

皮脂

さらに、正常な皮膚は皮脂線と呼ばれる部分から皮脂が分泌されています。この皮脂が汗腺から出ている汗と混ざり合い、皮脂膜と呼ばれるクリーム状の膜となって角質層の表面を覆っているのです。

皮脂膜とセラミドの働きにより、皮膚はうるおいを保って、外部の刺激から守られています。しかし、ストレスや乾燥によって肌のバリア機能が崩れてしまうと、正常な皮脂膜が作られなくなり、角質層が壊れた状態になります。角質層が壊れると乾燥を引き起こしたり、外部からの刺激に影響されやすくなったりするため、かゆみが起こりやすくなるのです。

(2)phバランスが崩れると!?

肌の酸性とアルカリ性を示す数値がph値(ペーハー値)です。

このphは中性を示す「7」を境にして、数値が低いほど酸性、数値が高いほどアルカリ性である、ということを表しています。肌のphは、皮脂膜にある遊離脂肪酸や汗の成分によって決定されます。

phは通常、4.5~6.5の弱酸性です。弱酸性の中でも脂性肌ほどphが4.5に近くなり、乾燥肌ほど6.5に近くなります。一般的にphが7に近くなり、中性に傾いた肌は、外部からの刺激を受けやすい、デリケートな状態です。

また、肌荒れや敏感肌の状態では、phバランスを保つ働きが弱くなるため、外部からの影響を受けやすく、角質層も壊れやすくなっています。その結果、外部からの刺激によってかゆみが誘発されてしまうのです。

(3)中性に傾いた肌で皮膚常在菌の一部が増殖する

皮膚の表面には皮膚常在菌と呼ばれる細菌が多数存在しています。量や種類は個人差がありますが、平均すると約10種類程度、数にして約1兆個存在しているといわれています。

主な常在菌として、ニキビの原因菌になっているアクネ菌や、皮膚にうるおいを与えて乾燥を防いだり、外部の刺激から守ったりしてくれる表皮ブドウ菌があります。

ph5〜6の弱酸性の肌は、表皮ブドウ菌にとって非常に住みやすい環境です。表皮ブドウ菌は、自分の住まいである肌を弱酸性に保つ働きを行います。しかし、肌が中性に傾いてしまうと、中性を好む黄色ブドウ球菌が増殖します。

黄色ブドウ球菌は湿疹やニキビ、アトピーの原因となり、増殖することでさまざまな肌トラブルを引き起こしてしまうのです。

■3.加齢、生活習慣……乾燥肌によるかゆみの原因と対処法

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乾燥の原因もさまざまです。ここでは、主な乾燥の原因と対策をご紹介します。

(1)アルカリ性の洗浄剤による乾燥

石鹸やシャンプー、ボディーソープなどはphが10前後ある、アルカリ性です。しかし、皮膚にはphをコントロールしてもとの値に戻そうとする緩衝能という機能が備わっています。そのため、洗浄後も皮膚の表面のphは、一時的に6.5~7.5程度にしか上昇しません。その後、2週間ほどかけて徐々に元のphに戻っていきます。

しかし、乾燥肌など肌トラブルを抱えている人や、洗浄を頻繁に繰り返している人は、phの回復に時間がかかってしまいます。その結果、かゆみなどのさまざまなトラブルを起こしやすくなるのです。

乾燥肌の人は、弱酸性など肌にやさしい成分の洗浄剤、うるおい成分が配合されている洗浄剤を選ぶようにしましょう。

(2)加齢による乾燥

残念ながら、加齢も乾燥の原因になります。年齢と共に発汗作用や皮脂の分泌能力が落ちていくため、皮膚の保湿機能は衰えていきます。一般的に男性の場合で40歳前後、女性の場合はさらに早く30歳代から衰え始めるといわれています。また、加齢によりセラミドなどの角質細胞間脂質も減少していきます。その結果、年齢と共に乾燥肌に悩まされる人の割合が増えていくのです。

さらに、加齢と共に肌の陳新代謝も衰えます。赤ちゃんの肌は常に新しい細胞に覆われているため、みずみずしい状態を保っています。

しかし、年齢と共に成長ホルモンが減少し、血行も悪くなり、代謝能力が衰えて、肌細胞の生まれ変わりも遅くなってしまうのです。さらに、加齢と共に自律神経やホルモンのバランスも乱れます。それが皮膚にも影響し、乾燥肌の原因となるのです。

加齢による乾燥対策として、保湿をしっかりと行うようにしましょう。

■4.かゆみを予防するために!日常生活のポイント

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日常生活を見直すことが、かゆみの予防につながります。

(1)衣服やシーツの素材に注意

乾燥肌の人にとって、ウールや化学繊維は肌への負担がとても大きく、さらに吸湿性も悪いため、かゆみの原因となりやすいです。

洋服は、吸湿性のいい木綿素材のものを選ぶといいでしょう。また、下着は、化学繊維のモノやレースが付いているようなものはなるべく避けてください。ゴムやホックがきついものを着用すると、そこからかゆみが出やすくなります。

シーツや毛布、枕カバーなども顔や首が直接触れるものです。なるべく綿素材のものを選ぶほうがいいでしょう。素材やデザインに注意しているのにかゆみが出る場合は、洗濯用洗剤に原因がある場合も。洗剤を肌にやさしいものに変えてみるのもひとつの方法です。

(2)加湿をしっかりと

エアコンなどが原因で、空気が乾いている環境も、肌には大敵です。自然が少ない都会は、緑が豊かなところと比べると、空気も乾燥しがちです。さらに女性は、職場や家庭など密閉された空間で一日の大半を過ごしている人が多いものです。

このような環境の中で暖房機器を使用すると、空気はさらに乾燥します。いくら表皮が水分を保護するようにできているといえども、保湿能力には限界があります。エアコンなどの暖房器を一日中つけっぱなしにするのは、肌にやさしくありません。

睡眠時に電気毛布を使用するのも、肌の乾燥をひどくする原因になります。暖房器具を使用する際は加湿器を活用する、布団を温めたい場合は電気毛布ではなく湯たんぽを使うなど、加湿をしっかりと行いましょう。

(3)紫外線対策を充分に

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紫外線対策は、夏だけでなく、冬の晴れている日にもしっかりと行いましょう。乾燥した肌は紫外線の影響を受けやすくなっています。UVカットの帽子や洋服を着用する、日焼け止めを塗るなど紫外線対策をしっかりと行うことは、肌の乾燥対策にもつながるのです。

(4)バランスのいい食生活を

女性の永遠の課題といえば、ダイエット。皆さんの中にもダイエットに励んでいる方は大勢いらっしゃるでしょう。確かに、太り過ぎは美容面でも健康面でもよくないことですが、極端なダイエットによる偏った食生活も考えものです。偏った食生活は健康を害して、結果的に肌トラブルを招く原因になります。

脂質不足が乾燥の原因

例えば、脂質。太るもとだから、と脂質を全く取らないのはよくありません。脂質は脳や細胞膜を構築する大切な要素です。脂質が不足すると病気にかかりやすくなりますし、乾燥肌の原因にもなります。

バランスのいい食生活を

人の体質はそれぞれ。どの食品が誰に合うか、結論は誰にもわかりません。結局は、「バランスよく食べること」。これが美容と健康に一番大切なことなのです。サプリメントに頼りすぎず、栄養バランスのいい食事を3食きっちり取りましょう。

(5)睡眠で肌のターンオーバー促進

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肌のターンオーバー、という言葉を聞いたことありませんか? これは、肌の生まれ変わりを意味しています。表皮の一番下にある基底層という部分で合成された肌の細胞は、形を変えながら表面へと押し出され、最終的には垢となってはがれ落ちることで新しい肌がどんどん作られていきます。これが、肌のターンオーバーです。

睡眠と成長ホルモン

肌のターンオーバーに必要なのが睡眠。睡眠時には成長ホルモンが分泌されるため、肌のターンオーバーが促進されます。逆に睡眠不足になると成長ホルモンの分泌が減少してしまうので、肌のターンオーバーが滞って、乾燥の原因となるのです。

成長ホルモンが最も分泌されるのが、就寝してから約3時間までの深い眠りのときといわれています。そのため、深く、質の高い睡眠を少なくとも6時間取るのが理想である、とされています。

12時前には就寝を

肌の細胞分裂が最も活発になっていくのが夜9時から11時、最低となるのは朝5時から10時ごろです。健康な肌を保つためには、夜12時前に就寝する習慣をつけるとよいでしょう。夜型生活は、肌にはもちろん、精神面にも健康面にも悪影響を及ぼします。できるだけ規則正しい睡眠を取るようにして、肌のターンオーバーをうながしましょう。

乾燥肌を放っておくとかゆみの悪循環に陥るだけでなく、さまざまな肌トラブルの原因になってしまうことがわかりました。しっかり乾燥対策することで、かゆみが解消できるだけでなく、みずみずしい肌を取り戻すこともできます。規則正しい生活を心がけ、加湿対策を充分に行って、肌も心もうるおい充分な毎日を送りましょう。

(美容ライター 大中千景)

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