ウィルス対策への意識が高まっている今年。特にこれから冬を迎えるにあたり、いつも以上に免疫力の強化が気になっている人も多いはず。
そこで今回は、冬に備える免疫力強化について、免疫・感染制御研究分野の教授、新藏礼子先生にお話しを伺いました。
■免疫力の強化には“粘膜”の免疫が重要!?
異物が侵入しやすい“粘膜”の免疫力を高めることが重要
新藏先生によると、粘膜は皮膚と比べて異物が侵入しやすいと言います。
「皮膚は多層構造になっているため、異物が付着してもすぐに体内に侵入することはありません。それに対し粘膜は体の外側と内側がたったの一層しかない細胞で区切られているため、異物が侵入しやすいと言えます。そのため、粘膜の免疫力を高めることが重要です」
「また、異物が侵入しやすい口や鼻の粘膜を守るためのマスクの着用、手洗い、うがいも非常に大切です」
免疫細胞の約7割が集まる“腸粘膜”が免疫力UPのカギ!
粘膜の中でも腸粘膜の免疫を高めることが重要だと新藏先生は言います。
「粘膜は異物が侵入しやすい上に、腸粘膜は表面積がテニスコートの1.5面分(400平方メートル)と非常に広いため、全身の免疫細胞の約7割が集まり、身体を守っています。生体防衛の最前線と言えます」
「生体防衛の最前線にある腸では、異物を排除してくれる“IgA”抗体が体内で最も多く作られています」
■腸で作られる“IgA”抗体が異物を排除してくれる!
異物を排除するだけじゃない!IgAの働きとは
「IgAは全身の粘膜で作用し、毒素などの異物を排除してくれます。また抗原の特異性が広く、1対1ではなく様々な異物に対応することができます」
「また、常在菌に含まれる善玉菌と悪玉菌を見分け、悪玉菌を排除することも近年発見されています」と新藏先生。
また、IgAには“強いIgA”と“弱いIgA”があると言います。
「“強いIgA”は、毒素を排除し腸内細菌叢のバランスを整えてくれますが、悪玉菌を見分けることができない“弱いIgA”が増えると、疾患の原因にもなる腸内細菌叢の乱れにもつながってしまいます。そのため“強いIgA”を作ることが大切です」
強いIgAを作る食材って?
「ビフィズス菌などの善玉菌が、『水溶性食物繊維』などをエサにして大腸内で作る『短鎖脂肪酸』がIgAの産出量を増やすのに重要な働きをすることが近年の研究結果で分かってきました」
「短鎖脂肪酸は、自分たちで作り出すことができず、ビフィズス菌などの善玉菌に作ってもらう必要があります」
「強いIgAを作るには発酵食品、野菜や雑穀、善玉菌のエサとなる食物繊維、ビフィズス菌などの善玉菌を取り入れることができる、バランスの良い食事が大切です」
「具体的には、ぬか漬け、チーズ、キムチ、ワカメ、ひじき、ごぼう、大豆、ヨーグルトなどを取り入れた食事を心がけることが大切です」
食生活を見直し、お腹の調子を整えることが免疫力UPには重要と言えそうです。
新藏先生によると、免疫が抗体を作るのに2週間程度時間がかかってしまうそう。食生活の見直しと共に、侵入するウィルスを減らすためにマスクの着用、手洗い、うがいも心掛けながら、この冬に備えていきたいですね。
(つやプラ編集部)
【新藏 礼子(しんくら れいこ)先生 プロフィール】
東京大学 定量生命科学研究所 免疫・感染制御研究分野 教授
86年京都大学医学部医学科卒業。同年麻酔科臨床医として病院勤務。92年京都大学大学院医学研究科分子生物学大学院生、続いて研修員。99年米国ハーバード大学こども病院留学。2003年京都大学大学院医学研究科分子生物学、寄附講座免疫ゲノム医学助手、講師、准教授。10年長浜バイオ大学バイオサイエンス学部バイオサイエンス学科生体応答学教授。16年奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科応用免疫学教授。18年東京大学分子細胞生物学研究所(現・定量生命科学研究所)免疫・感染制御研究分野教授。
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