ひと言で「痔」といっても、その種類や原因はさまざまです。また、どちらかというと男性より女性の方が、痔になりやすい傾向にあります。痔について詳しく知ることにより、きちんと対策をすることができるでしょう。
今回は、医師の木村眞樹子先生に、大人女性の痔の原因と、予防のための対策について教えていただきました。
■痔にはどんな種類がある?
まずは痔の種類についてご紹介します。
切れ痔
肛門の皮膚が切れたり裂けたりすることにより引き起こされる痔のことを指します。
排便時に肛門の痛みや出血などの症状がでやすいです。
いぼ痔
お尻の血行が悪くなることにより、血管の一部がこぶ状態になる痔のことを指します。
痛みを感じることは少なく、出血があって気づくことも多いです。
あな痔
肛門の周りに膿がたまることにより、炎症を起こしてしまう痔のことを指します。
肛門の周りが腫れて痛んだり、38度前後の発熱があったりすることもあります。
■大人女性が痔になりやすい原因3つ
どうして、大人女性が痔になりやすいのでしょうか。以下に原因を解説します。
(1)便秘
精神的ストレスや、更年期が原因となる自律神経の乱れが起こることにより、腸の動きも乱れ便秘になりやすくなります。
便秘になると便がかたくなるため、排出する際に肛門の皮膚が切れやすく、切れ痔にもなりやすい傾向にあるのです。
(2)ストレス
更年期に差しかかると、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが減少することにより自律神経が乱れ、ストレスを抱えやすくなってしまいます。
ストレスを抱えることにより免疫力が低下し、肛門が炎症が起こりやすくなる傾向にあります。
(3)冷え性
更年期になりホルモンバランスが乱れることにより、自律神経のはたらきが低下し、からだのすみずみまで血液が行き渡らず、冷え性になってしまうこともあります。
からだが冷え、血行が悪くなることにより、肛門のうっ血を引き起こすこともあるでしょう。
■生活習慣が大切!痔にならない対策法
痔を防ぐためには、毎日の生活習慣に心配りをすることも重要です。痔にならないための対策法についてご紹介します。
発酵食品や食物繊維の豊富な食材をとる
便秘を防ぐために、発酵食品や食物繊維の豊富な食材をとるようにすると良いでしょう。
穀類や豆類、納豆やヨーグルトなどがおすすめです。
適度な運動をする
自律神経のはたらきを高め、ストレスを軽減させるためには、適度な運動を行うこともおすすめです。
激しい運動を行う必要はないため、ヨガやウォーキング、ストレッチなど、軽めで毎日続けられるような運動をするようにしましょう。
からだを冷やさない工夫をする
ホルモンバランスを整えるため、からだを冷やさないようにするのも重要なポイントです。
お風呂にゆっくり浸かる、手首や足首を冷やさないようにするなど、日常生活の中でからだを冷やさない工夫をするようにしましょう。
■痔かも?と思ったら病院へ
「もしかして、痔かも?」と思ったら、迷わず病院に行くようにしましょう。
受診のタイミング
「肛門付近に痛みやイボの感覚がある」「下着に血や膿がついている」など、少しでも違和感のある出来事があったらすぐに受診をするようにしましょう。
何科に行けばいいか
受診の際は、肛門科・肛門外科をおすすめします。もしも肛門科が近くになければ、消化器外科でも可能です。
■痔には、漢方薬もおすすめ
生活習慣に気をつけることに加え、痔の予防には、漢方薬の服用もおすすめです。
漢方薬のなかには「痔」に効果が認められているものもあり、泌尿器科や婦人科でも処方されています。
痔の原因には、便秘がちで排便の際にいきんだり、長時間、同じ姿勢による肛門のうっ血などが考えられます。
痔の改善には、「血行を良くして、肛門の機能回復や痔の原因となるうっ血をとる」「肛門周囲の出血を抑える」などの働きがある生薬を含んだ漢方薬が選ばれます。
また、便秘による痔にお悩みの方には、「腸の動きをスムーズにする」「たまった老廃物を排泄する」といった働きをもつ漢方薬が用いられます。
漢方薬は自然由来の成分でできているため、一般的に副作用が少ないとされています。また、毎日決められた量を飲むだけで良いため、食事制限や運動などの手間がなく、続けやすいというのも特徴です。
痔の対策におすすめの漢方薬
乙字湯(おつじとう)
血流を良くしてうっ血をとり、腫れや炎症を抑えることで痔の治療に役立ちます。便がかたい、慢性的な便秘に悩まされているといった方におすすめの漢方薬です。そのほか、きれ痔の改善にも用いられることもあります。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
「気(エネルギー)」の流れと血流を良くします。ストレスによる精神不安や便秘などに悩んでいる方におすすめの漢方薬です。そのほか、更年期症状の改善にも用いられることがあります。
慢性的な出血や便秘などには、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
からだの内側から改善をめざす漢方薬を選ぶにあたって、自分の体質・症状にあったものを服用することが重要になります。自分にあった漢方薬を選ばなければ、思ったような効果が得られないどころか、副作用が生じてしまう恐れもあります。
薬剤師やAIが自分に合った漢方薬を選んでくれるようなオンラインサービスもあるため、気になる方は試してみるのもいいでしょう。
■しっかり対策して痔の症状を乗り越えよう!
痔の予防のためにも、症状を改善するためにも、毎日の心がけが重要です。とくに、自律神経が乱れやすくなる更年期の時期はしっかり注意するようにしましょう。
また、からだの内側からの改善を目指す場合、漢方薬の服用も検討してみましょう。
【監修医:木村 眞樹子(きむらまきこ)先生 プロフィール】
医師。医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科にて臨床に従事。妊娠、出産を経て、産業医としても活動するなかで、病気にならないからだをつくること、予防医学、未病に関心がうまれ、東洋医学の勉強を始める。臨床の場でも東洋医学を取り入れることで、治療の幅が広がることを感じ、西洋薬のメリットをいかしつつ漢方の処方も行う。また、医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、漢方のプロがAIを活用して自分に適した漢方薬を選びお手頃価格で自宅に郵送してくれる「あんしん漢方」でも情報発信をしている。
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