スキンケアに力を入れても、栄養バランスが偏っていては美肌になれません。では、肌にいい食べ物とは、具体的にどういったものを指すのでしょうか。
今回は栄養士がおすすめする肌にいい食べ物や、その効果についてご説明します。
■目次
1.美しい肌は「腸」と「血管」から
(1)美肌の基本は「腸」!便秘を避けるには
(2)年とともに減少する「毛細血管」が美肌には重要
2.肌のために摂りたい栄養素、避けたい成分・食べ物とは?
(1)肌にいい栄養素
(2)肌に悪い成分
(3)摂りすぎると悪い食べ物
3.肌悩み別・摂るべき栄養素や食べ物
(1)肌のハリツヤ不足のときに摂りたいのは?
(2)肌のくすみ改善に摂りたいのは?
(3)ニキビが出るときに摂りたいのは?
4.肌にいい「食べ方」のポイント
(1)まず「野菜」から食べはじめる
(2)よく噛んで食べる
5.肌にいい食材を使ったおすすめレシピ
(1)肌のハリツヤ不足におすすめのレシピ
(2)肌のくすみ改善が期待できるレシピ
(3)ニキビ改善に役立つレシピ
■1.美しい肌は「腸」と「血管」から
体内環境は、お肌の状態を大きく左右します。中でも、腸と血管は、肌に影響を及ぼす臓器とされています。
中でも気をつけたいのが、「便秘」と「毛細血管の減少」です。一体お肌にどんな影響があるのでしょうか。くわしくご説明しましょう。
(1)美肌の基本は「腸」!便秘を避けるには
毎日のお通じは、美肌に繋がります。腸は、体調や肌の状態を左右するといえます。では、便秘が続くと、どのようなことが起きるのでしょうか。
(i)便秘の原因と種類のいろいろ
便秘には、大きく分けて機能性便秘と器質性便秘の2種類があります。
多くの人に当てはまるのが、機能性便秘です。機能性便秘はさらに、弛緩性便秘、直腸性便秘、痙攣性便秘などに分けられます。
弛緩性便秘は、腸の筋力や運動力が低下することによって起こります。高齢者や出産を複数回経験した女性に多い便秘です。
直腸性便秘は、排便の反射が弱くなっている状態です。排便を我慢すると起こりやすくなります。
痙攣性便秘は、腸が痙攣したように運動するため、便の通過が悪くなります。下剤の乱用や、過敏性腸炎という病気が原因といわれています。
(ii)便秘が続くと何が起きるのか?
便とは食物の栄養が吸収され、不要になったものの集まりです。
本来は排出されるべきものが腸内に留まり続けると、腸内に悪玉菌が増えるだけでなく、全身の血行が悪くなったり、自律神経の働きが乱れたりするとされています。
また、便でお腹が圧迫されることで、食欲が低下することもあるようです。
(iii)便秘は肌荒れのもと!?
便が腸内に留まることで悪玉菌が増え、有害物質が発生します。その有害物質が再び吸収され、血液を通して全身を巡ります。
肌には汗や皮脂などから有害物質を排出する機能がありますが、排出に力をそがれると新陳代謝が追いつかなくなります。そのため、便秘が続くと肌の状態が悪くなるのです。
(iv)便秘を解消するには?
便秘を解消するためには、以下のような習慣が大切です。
1.水分補給をしっかりと行う
2.食物繊維が多い食品を積極的に摂取する
3.適度に運動を行う
4.食事のリズムを整える
5.毎日朝食を食べる
6.食事量を十分確保する
7.適度に油脂を摂取する
毎日の生活の中で心がけましょう。
(2)年とともに減少する「毛細血管」が美肌には重要
全身をくまなく巡っている血管には、酸素や栄養素などを臓器や細胞に届ける役割があります。従来は、大きな血管のみが注目されがちでしたが、近年の研究から毛細血管も重要視されるようになりました。
(i)毛細血管の役割
毛細血管は、血管の99%を占めています。動脈と静脈の間に存在し、細胞に酸素や栄養素を届け、老廃物を回収するという役割があります。
(ii)加齢により、毛細血管は劣化し、減少していく
毛細血管は、全身のありとあらゆる場所に張り巡らされています。しかし、毛細血管は年齢と共に減少するといわれています。
加齢により毛細血管が劣化すると、そこから過度に栄養や酸素が漏れだし、その先の血管まで血液が届かなくなり、やがて消滅してしまうのです。40代から徐々に減少するといわれています。
(iii)毛細血管が減少すると、さまざまな不調が起こる
毛細血管が減少すると、酸素や栄養が細胞に行き渡らなくなります。すると、肌にハリやツヤがなくなったり、シミやそばかすが出やすくなったりするといわれています。また、血流が悪くなるため、冷えやむくみといった症状も起こりやすくなるようです。
(iv)毛細血管の減少を防ぐためには
資生堂の研究では、血液が過度に漏れないようにする血管内皮細胞の成分「Tie2(タイツー)」の働きを活性化させることが必要だと分かりました。
Tie2は加齢によって減少しますが、Tie2が活性化すると、毛細血管の健康を維持し、傷ついている毛細血管を修復できる可能性があるようです。ヒハツやシナモン、ルイボスティーなどに、Tie2を活性化させる働きがあると考えられています。
■2.肌のために摂りたい栄養素、避けたい成分・食べ物とは?
肌にいい栄養素や、悪影響を及ぼす成分には一体どんなものがあるのでしょうか。正しく知って、食生活に取り入れましょう。
(1)肌にいい栄養素
肌にいい栄養素としては、ビタミンE、C、A、B群、鉄、たんぱく質などがあります。
(i)ビタミンE
ビタミンEには抗酸化作用があります。肌のシミやシワを増やすとされている活性酸素を除去し、美肌へと導きます。
ホルモンバランスを整える働きもあります。また、血管拡張作用があるため、細胞の新陳代謝を助けたり、冷えからくる肌トラブルを改善したりする働きが期待できるでしょう。
(ii)ビタミンC
ビタミンCはコラーゲン生成に関与するだけでなく、抗酸化作用も期待できます。鉄の吸収を助ける働きもあるので、美肌作りには欠かせません。
(iii)ビタミンA
ビタミンAの中でも特にβカロテンが、高い抗酸化作用を持ちます。肌や粘膜の保護にも役立ちます。
(vi)ビタミンB群
ビタミンB群には8つの種類が存在します。その中から、肌にいい働きをするものをご紹介します。
ビタミンB1
炭水化物の代謝に必要なのがビタミンB1。炭水化物の分解を助けます。ビタミンB1を摂取することで、疲労回復効果が期待できるでしょう。
ビタミンB2
ビタミンB2は、脂質の代謝を助けます。皮膚や髪を再生したり、過酸化脂質を分解したりといった働きがあります。
ナイアシン
ナイアシンは、皮膚や粘膜の炎症を防ぐ働きがあります。普通の食事をしていれば、欠乏することはほとんどないといわれています。
ビタミンB6
ビタミンB6は、たんぱく質の代謝に必要な栄養素です。脂質の代謝も助けます。
パントテン酸
パントテン酸は、脂肪酸を分解したり、糖質を代謝したりする働きがあります。副腎皮質ホルモンを合成することから、ストレス強化にも役立つといわれています。
(v)鉄
鉄は赤血球を作るだけでなく、コラーゲンや粘膜の生成に役立ちます。鉄が不足すると、血行不良で肌が青白くなるだけでなく、くすみや肌荒れなどに繋がります。
(vi)たんぱく質
たんぱく質は、体を作る大切な栄養素です。ダイエットなどでたんぱく質の摂取量が不足すると、肌にとって悪いことばかりが起きます。新陳代謝が悪くなり、肌の老化やくすみ、肌荒れなどに繋がるのです。
また、たんぱく質はコラーゲンを構成しているので、肌のハリやツヤ不足に陥るかもしれません。
(2)肌に悪い成分
ついついこんな成分を摂っていませんか? 肌に悪い成分についてご紹介します。
(i)過剰な油脂
揚げ物やスナック菓子、インスタント食品など、油脂を大量に摂取すると体内で酸化し、活性酸素を発生させます。それが肌荒れの原因にもなります。
また、油を摂りすぎると分解しきれず、皮脂として分泌されるといわれています。それがニキビの発生につながるのです。
(ii)過剰な糖分
糖分を摂りすぎると、ビタミンB群が大量に消費されます。ビタミンB群が消費されて不足状態になると、肌トラブルが起きる場合があります。疲れたときは甘いものが欲しくなる方も多いですが、食べ過ぎは肌トラブルのもとです。
(3)摂りすぎると悪い食べ物
摂りすぎると肌に悪い影響を与える可能性がある食べ物をご紹介します。摂りすぎないよう、十分注意をしましょう。
(i)油脂を大量に含む食べ物
揚げ物やマヨネーズには、多価不飽和脂肪酸が含まれています。多価不飽和脂肪酸は熱や空気などで酸化しやすいため、揚げ物やスナック菓子、ファーストフードなどを大量に摂取すると細胞の酸化に繋がります。
(ii)高GI値の食品
GI値とは、食後の血糖値が上がりやすい度合いを表す値のこと。GI値が高い食品ばかり食べると、急激に血糖値が上がるといわれています。それに対応するためにインスリンが分泌され、糖分がエネルギーに変わります。
消費しきれず余ってしまった糖分はたんぱく質と結びつき、老廃物となるのです。老廃物をAGEsといいます。
AGEsが蓄積されると、コラーゲンが固くなって肌のハリが失われたり、くすみの原因になったりするようです。精白米やもち、白砂糖など精製された食品は、GI値が高い食品です。
■3.肌悩み別・摂るべき栄養素や食べ物
お肌の悩みがあるときは、どんなものを積極的に摂ればいいのでしょうか? 肌の悩み別に、美肌に繋がる栄養素や食べ物をご紹介します。
(1)肌のハリツヤ不足のときに摂りたいのは?
(i)たんぱく質
肌のハリやツヤが不足していると感じたときは、たんぱく質が不足していないか見直してみましょう。たんぱく質は、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品に多く含まれます。
たんぱく質はコラーゲンを構成しているので、不足しているとハリツヤ不足のもと。また、活性酸素もハリ不足の原因になります。
(ii)ビタミンE、A(βカロテン)、C、ポリフェノール
抗酸化作用があるビタミンE、A(βカロテン)、C、ポリフェノールなども、摂取するとよいでしょう。
ビタミンEを含む食品はナッツ類やアボカドです。また、ビタミンA(βカロテン)は人参、かぼちゃ、ほうれん草など緑黄色野菜、ビタミンCは果物や野菜、ポリフェノールは赤ワインやココアなどに多く含まれています。
(2)肌のくすみ改善に摂りたいのは?
肌のくすみの要因は、血行不良、メラミン、乾燥、汚れ、AGEsなど様々です。食べ物や栄養素で改善が期待できるのは、血行不良、乾燥、AGEsの3つです。
(i)血行不良によるくすみの場合
血行不良によるくすみは、鉄不足や毛細血管が減少することで起こります。改善するには、鉄が多い赤身肉やあさり、レバーを摂取しましょう。その際、ビタミンCを含む食品を一緒に摂取するのがおすすめです。
(ii)乾燥によるくすみの場合
乾燥によるくすみは、ビタミンAやCを摂取することで改善する可能性があります。ビタミンAは皮膚や粘膜を保護するため、うるおいを維持するのです。緑黄色野菜に多く含まれています。
ビタミンCはコラーゲンの生成を促します。野菜や果物に多く含まれているので、生食での摂取がおすすめ。
(iii)AGEsによるくすみの場合
AGEsによるくすみは、AGEs自体が褐色のため、肌に蓄積するとくすんだ印象を与えます。AGEsの発生を抑えるには、GI値の低い食べ物を選びましょう。玄米やそば、野菜類などが該当します。
(3)ニキビが出るときに摂りたいのは?
ニキビができるときはホルモンバランスが乱れていたり、栄養バランスが崩れたりしていることが多いようです。ビタミンB群、A、Cが不足していないか見直してみましょう。
(i)ビタミンB群
ビタミンB群は脂質の代謝を助けるだけでなく、ターンオーバーをうながします。レバーやたらこ、うなぎ、豚肉などがおすすめ。
(ii)ビタミンA
ビタミンAもターンオーバーをうながす働きがありあります。ビタミンB群と合わせて摂取しましょう。レバーや緑黄色野菜に多く含まれています。
(iii)ビタミンC
ビタミンCはコラーゲンの生成に関与するので、ニキビ跡のケアにも期待ができます。
■4.肌にいい「食べ方」のポイント
肌にいい食べ物の効果をさらに高めるための、食べ方の順序、咀嚼回数をご紹介します。
(1)まず「野菜」から食べはじめる
「ベジタブルファースト」という言葉があるのをご存知でしょうか。文字通り、野菜から食べるという意味です。野菜には血糖値の上昇を抑える、食物繊維やクエン酸などが含まれています。
同じ食事をしても、野菜を先に食べると血糖値の上昇がゆるやかになるのです。血糖値が急激に上昇すると、処理しきれなった糖がたんぱく質と結びついてAGEsとなります。しかし、血糖値がゆるやかに上昇するとAGEsの発生が少なくなり、肌にも影響がでにくいと考えられます。
(2)よく噛んで食べる
咀嚼回数を増やすことにより、食べ物が消化吸収しやすい形になります。肌にいい食べ物の栄養素を吸収しやすくなるといえるでしょう。また、満腹感が得られやすくなることに加え、あご周りの筋肉を鍛えることにも繋がります。
■5.肌にいい食材を使ったおすすめレシピ
手に入りやすい食材を用いた美肌レシピを、肌のお悩み別にご紹介します。作りやすいものばかりなので、早速チャレンジしてみてください。
(1)肌のハリツヤ不足におすすめのレシピ
たんぱく質とβカロテン、ビタミンE、Cがたっぷりのサラダをご紹介します。生野菜のサラダは冷えが気になりますが、このサラダは温かい野菜を食べるので、冷えの心配もいりません。
ビタミンたっぷりホットサラダ
エネルギー 271cal/たんぱく質 19.4g/炭水化物 20.5g/脂質 12.9g/食物繊維 7.1g/βカロテン 4800μg/ビタミンE 6.3mg/ビタミンC 130mg
材料(1人分)
・アボカド 1/2個
・人参 中1/4本
・かぼちゃ 40g
・サラダチキン(プレーン) 半分
・ブロッコリー 30g
・赤ピーマン 40g
・お好みのドレッシング 適量(ここではゴマドレッシングで計算)
作り方
(1)アボカドは種と皮を外し、さいの目に切る。赤ピーマンは薄くスライスしておく。サラダチキンは適当な大きさに割きます。
(2)人参は皮をむき、さいの目に切ってゆでておきます。かぼちゃは種を取り、一口大に切ってレンジで柔らかくなるまで加熱します。ブロッコリーは房に分け、ゆでておきます。冷凍を使用してもOK。
(3)器に(1)と(2)を盛り付け、お好みのドレッシングをかけて完成。
(2)肌のくすみ改善が期待できるレシピ
低GI値の食品を使った料理をご紹介します。鉄分がたっぷり含まれているので、貧血対策にも。玄米は水を吸いにくいので、あらかじめ水に漬けておきましょう。
もっちり玄米炊き込みご飯
エネルギー 314cal/たんぱく質 13.7g/炭水化物 57.9g/脂質 2.8g/食物繊維 4.2g/鉄 9.2g
(※栄養価は1人分)
材料(2人分)
・玄米 1合
・干しシイタケ 2個
・あさり(殻なし) 50g
・人参 30g
・ひじき 2g
・薄口醬油 大さじ1/2
・酒 大さじ1
・塩 少々
作り方
(1)玄米は軽く洗って、1晩水に漬けておきます。干しシイタケは水に漬けて戻したものを薄くスライスし、戻し汁を取っておきます。ひじきも水に漬けて戻します。人参は千切りにします。
(2)水を切った玄米に全ての材料を加え、干しシイタケの戻し汁と足りない水を足して、玄米コースで炊飯します。
(3)炊き上がったらよく混ぜて完成。
(3)ニキビ改善に役立つレシピ
ニキビに効果的なビタミンB群は、レバーに多く含まれています。レバーの中でも鶏レバーは臭みが少なく、食べやすいのが特徴です。今回はさらに臭みが気にならない、ソースで煮るレシピをご紹介します。できたてより、冷めてから食べた方が、味が染み込んでいて美味しいですよ。
鶏レバーのソース煮
エネルギー115cal/たんぱく質 13.8g/炭水化物 6.4g/脂質 2.2g/ビタミンB1 0.27mg/ビタミンB2 1.27mg/ナイアシン3.3mg/ビタミンB6 0.47mg/ビタミンB12 31.2mg/鉄 6.5mg
材料(1人分)
・鶏レバー 70g
・生姜 5g
・ウスターソース 18g
・オイスターソース 6g
・酒 8g
・みりん 5g
・水 30ml
作り方
(1)鶏レバーを水洗いし、適度な大きさに切り分けます。血の塊がついていたら取り除きます。
(2)生姜は千切りにしておきます。
(3)鍋に調味料とレバー、生姜を入れて、15分程度煮て完成。
肌にいい栄養素の基本はたんぱく質、ビタミンA、B群、C、E、鉄です。肌のコンディションに合わせて、必要な栄養素が含まれている食品を選んでみてください。毎日バランスのいい食事をとって、美肌を目指しましょう。
(管理栄養士 橋場愛
管理栄養士の資格を持つ、2歳の男の子のママ。管理栄養士の観点から、ためになる記事を発信。)
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【参考】
※橋爪孝雄 監修「臨床栄養ディクショナリー 改訂4版 日本人の食事摂取基準(2010年版)対応」(2009年)メディカ出版
※便秘の仕組みについて 便秘が続くとどうなるの? - 大正製薬
※資生堂、加齢による皮膚毛細血管の機能低下が皮膚老化に関与していることを解明 低下した皮膚毛細血管の機能を回復させる成分「ケイヒエキス」を開発(PDF) - 資生堂
※食事が血糖値に及ぼす影響 第2報 -自由咀嚼摂取と強制咀嚼摂取の差-(PDF) - 名古屋文理大学