美容業界の最先端で活躍するプロフェッショナルの方々に、その輝きの秘密を伺うインタビュー。
今回は、ヘアサロン「AMATA」のオーナーで毛髪診断士の美香さんに、40代からの美髪を育むケアについて教えていただきます。
年齢と共に毛髪を育む力がダウンしてヘアロスの原因に
ーーヘアサロン「AMATA」のオーナーであり毛髪診断士でもある美香さんですが、ご著書の中にあった「ヘアロス」という言葉が印象的でドキッとしてしまいました。つやプラの読者は40代以上の方が中心なのですが、その世代にもヘアロスは起こるのでしょうか?
もちろん起こります。「ヘアロス」と一言で言っても色々な種類がありまして、薄毛の兆候であったり、白髪の兆候であったり、人それぞれ現れ方が異なります。
薄毛にも種類があって、髪の毛1本1本が細くなってくるパターンや、びまん性脱毛のように髪全体の密集度が下がってくるパターンなどがあります。
それらは40代からいきなりスイッチが入って始まる訳ではなくて、人それぞれに兆候があって、20代や30代前半でもストレスが溜まってヘアロス問題が起こることもありえます。
40代以降になるとそういったストレスなどの問題に加齢という要素が加わります。年齢を重ねるにつれて細胞が徐々に老化しますよね。それと共に皮膚組織や頭皮の中の組織、毛髪を育む力、そういったもののパワーがすべて少しずつ衰えていくんです。
ーー白髪もヘアロスに含まれるんですね。白髪はつやプラの読者のお悩みの上位に挙がるのですが、それもヘアロス対策、いわゆる予防的なケアができるのでしょうか?
白髪も薄毛もですが、髪の毛が生えている頭部だけで捉えないことが大切だと思います。
頭部につながる首の骨や神経、血管、リンパなど、そういったものがすべて関係してくるんですね。顔と頭皮は一枚の皮でつながっているとよく言われるのですが、それは首もデコルテもボディも同じですよね。
そういったことを考えると、血液の巡りが悪くなるとヘアに影響が出てくるということはお分かりいただけると思います。血液の巡りが悪くなって細胞の活性が低下すると、細胞が分裂しようとするパワーが足りなくなります。
そうすると毛球が十分に大きくならず、また毛球自体が細く小さくなったままですと、髪が抜けやすくなったり、毛髪サイクルが正常でなくなってきたりします。
白髪や薄毛は眠っている細胞をいかに起こしてあげるかが重要です
ーー肌は肌、髪は髪と別々に考えてしまいがちですが、そうではないんですね。
あと、40代以降になるとホルモンの問題もありますよね。ホルモンのバランスが乱れがちになってくると、髪にも影響が及び白髪のような兆候が現れてくることがあります。
色素細胞が活性化することでメラニンの量も増え髪を黒くする、ということができなくなってくるんです。
でも、細胞が死滅してしまったわけではなく、活動を休止しているだけなので、休んでいる(機能低下)細胞をどれだけ起こしてあげられるかが重要だったりします。
ーー休んでいる細胞を起こすことができれば、改善する可能性があるのでしょうか?
そうですね。細胞の活動が低下しているのが、身体の内側の栄養の問題なのか、血行不良などの問題なのか、加齢、またストレスなのか、それによって何をするべきかが変わってくると思います。
血行不良が問題なのであれば、ブラッシングやツボ押しなどで、シャンプーをする時以外にも頭皮に触れて刺激を与えることで、だいぶ巡りが良くなってきます。
トップが薄くなって悩んでいるなら、その部分にしっかりと刺激を与えてあげると、血液の流れが良くなって、毛母細胞も活性化されるんですね。
あとはストレスを受けることなどによって、毛細血管が萎縮して、白髪や薄毛の原因になってしまうので、ストレスを溜めないことも大切です。
ーー全身つながっているということですね。ヘアロス対策を始めるべきサインがあれば教えてください。
ヘアロスサインが見えたら、まずは頭皮の乾燥対策を!
例えば、「抜け毛が多くなる」「シャンプーをする時に抜ける感じが以前と違う」「ドライヤーをかけると、以前はトップがふんわりしたのに、ペタンとしてしまう」などが細毛や薄毛の兆候になると思います。
白髪については、一般的に側頭部、頭頂部に出やすいのですが、「1本だけ生えていたのが、髪をすくってみたら内側に何本もある」といったことがサインになると思います。
ーーそういったサインを感じた時に、まず始めるべきお手入れはなんでしょうか?
始めるべきお手入れは、頭皮状態によって異なります。
頭皮が乾燥している状態が何年も続いていると、ヘアロスにつながるという知見が出ています。なぜかというと、乾燥した頭皮からめくれた角質が、頭皮の脂質と混ざって酸化して毛穴に詰まる、それが刺激物になって毛髪の育成を阻害してしまうのです。
そうなると、毛髪が細くなったり、きちんと育たなくなったりということが起こります。それを防ぐためには、シャンプーの前にプレオイルを使うことをおすすめします。
シャンプー前にオイルで頭皮をケアをするんです。そうすることで、ベタベタすることなく、必要な栄養成分を浸透させることができますし、シャンプーの刺激から頭皮を守って、バリア機能も高めてくれます。
40代以降は頭皮ケアにフォーカスすべき! 育毛剤も取り入れて
ーーシャンプー前のお手入れが効果的なんですね。最近は女性向けの育毛剤もよく目にしますが、使った方がいいのでしょうか?
育毛剤や頭皮につけるエッセンスやセラムは、この年代には使うことをおすすめしますね。
保湿力の高いものか育毛効果が高いものか、自分自身の頭皮や毛髪の状態に合わせてセレクトしていただくといいのですが、育毛効果が高いものは基本的に、ある程度の潤い成分が入っているので、保湿効果も高いものが多いと思います。
40代は育毛にフォーカスしていくべき年代だと私は思います。「私にはまだ早い」ということはなく、50代からでは遅いと思っています。
ーー頭皮の乾燥のお話が出ましたが、顔や身体の肌と違って、見えにくい分、乾燥を感じ取りにくいと思うのですが、肌が乾燥しやすい人は頭皮も乾燥しやすいのでしょうか?
そうですね、体内の油分保持能力が関係するので、肌と頭皮はリンクしています。
頭皮から自身の油分が出て自然とバリア(皮脂膜)ができるまでに、女性の場合シャンプー後4~6時間なんですが、その間に頭皮が潤わず角質が剥がれ(フケ)て、黒い服を着た時に粉っぽく落ちていたりしたら、頭皮が乾燥している信号だと思ってください。
あとは、ドライヤーをかけた後に分け目を見たとき、なんとなくカサついているとか、フケが出ているとか、地肌がひび割れたようになっているとか、そういった状態が肉眼で見て取れるようであれば、頭皮が乾燥していると思った方がいいですね。
バロメーターの1つとして、シャンプーしてから4時間くらい経ち頭皮の潤いが保てているようならば問題ないので、様子を見るといいと思います。
乾燥は先ほどお話したように、古い角質が毛穴に詰まって刺激物質になり、抜け毛につながってくるので、気をつけてもらいたいと思いますね。
2~3ヶ月前のストレスやダメージが今の髪の状態に現れます
ーー頭皮の乾燥に季節は関係あるのでしょうか?
私たちの身体や肌もそうですが頭皮も湿度や気温に左右されますね。
あとは、エアコンをつけて絶えずコントロールされた状態にいると、湿度が低くなっていきますよね。それも頭皮の乾燥につながると思います。夏の紫外線のダメージも影響が大きく、紫外線を浴びてから約3ヶ月くらい後、秋冬になってから目に見える形でダメージが出てきます。
それと同じように、強いストレスがかかったり何かアクシデントがあったりすると、3ヶ月後くらいには毛髪にも現れます。
肌と違って、すぐには表に出ないのですが、急に抜け毛や白髪が増えたという人に2~3ヶ月前のことを聞いてみると、仕事のストレスが大きかったり、心配事で眠れなかったりと思い当たることがあることが多いんですよね。
ーーストレスで頭が突然真っ白に!というのは大げさでも、まったくないことではないんですね。
ストレスで血行が悪くなったりして、細胞の活性が低下するのが原因だと思いますね。
そうすると、毛髪サイクルが乱れて、毛球が育たずに新生毛が痩せ細って出てくるんです。こういう状態になって「ヘアロスですか?」と相談にいらっしゃる方は結構いますね。
ーーそういう状態になったとしても、お手入れをしっかりしていけば、立て直すことは可能でしょうか?
もちろんです。なぜかというと、先ほどからお話している毛髪サイクルをきちんと整えていき、毛根が健康で損傷していなければ、新生毛は生えてきます。
その新生毛が生えようとして栄養を必要としているときに、栄養を与えられるのが育毛剤なんです。見えている髪の毛に対してのケアばかりに気がいきがちですが、まだ潜んでいて見えていない毛髪に対してケアをすることが、コシやつやのある髪につながってくるんです。
ーー育毛剤やマッサージはすぐに効果が感じられないだけに続けることが難しいんですよね。
毎日5秒!頭皮プッシュで刺激を与えて元気な頭髪に
「マッサージや育毛剤は大切だと言われているし、よく目にするけれど、なかなか続けられない」という声はよく聞きますね。以前は、5分くらいのブラッシングプロセスをレクチャーしていたのですが、毎日のことになると5分が意外と長いんですよね。
なので、最近は10秒でできることを提唱しています。10秒でいいので、頭皮に対してのアクションを継続して行うことが大切だと思っています。
クッションのついたブラシで頭皮を押さえるだけでもいいんです。
オフィスでブラッシングはなかなかしづらいと思いますが、頭皮を押さえるだけならできるかもしれないですよね。ヘアロスが目立ちやすい頭頂部やペタッと寝てしまうような分け目の元気のない頭髪に刺激を与えてあげるといいですね。
ーー10秒であれば毎日続けられそうですね!
ブラッシングというより、どちらかというと頭皮プッシュですね。それだけでも血行が良くなりますし、何より気持ちがいいですよ。寝る前にちょっとプッシュしてから寝ると、それだけでもストレスが少し緩和されるので、毎日のルーティンにするといいと思います。
クッションブラシで頭頂部を5回プッシュ、それだけでも毎日続ければ、継続は力なりで変わってくるはずです。
色々なことを教わりすぎると、疲れてしまうんですよね。あれもやるの? これもやるの? となってしまって。スキンケアだけでもやるべきことが多くて大変なのに、ヘアケアまでそんなにできないとなってしまう。
40代からは「きれいを保っていく」ことが大切だと思います
ーー40代からは気になることが増えてきて、やるべきことが増える年代ですものね。
でも、やれば必ず効果が出ますし、それはスキンケアも同じですよね。やれば先があるので、それを目標に据えてもらって。
努力するというより、きれいを保つということが40代からは大切なので、「こうなってやる!」というより、「今の自分をもっときれいにしながら、それを保っていこう」と考えるといいと思います。
ーーこれからヘアケアを頑張ろう!と思う人が、まず揃えるといいアイテムを教えてください。
今生えている髪に対しては、ツヤを増すためのオイルですね。肌もツヤを与えたいところにオイルをつけると思うのですが、それと同じですね。
あとは、先ほどからお話しているシャンプー前の頭皮ケアに使うプレオイルと、クッションブラシを揃えるといいですね。あとは、健康で美しい髪のためにはインナーケアも重要だと思いますね。
どんなにマッサージをしてもブラッシングをしてもダメという人は、血液検査をしてみると明確に原因がわかることもあるんです。
40代以降の年齢になってくると、人間ドックまで本格的なものではなくても、検診のように自身の体内の状態を知っておく必要があると思いますね。
ーー頭髪のための血液検査やインナーケアもあるんですね! 次回詳しく教えてください。
【美香さん プロフィール】
毛髪診断士・ヘアサロン「AMATA」オーナー
約10年間ファッションデザイナーとして活躍後、本当に自分が行きたい大人のためのヘアサロン「AMATA」をオープン。多数の美容業界人を顧客に持ち、人気サロンオーナーとして注目を浴びる。また毛髪診断士と美髪の持ち主であることを生かし、雑誌やトークショーに数多く出演。監修本に『美髪力!』(双葉社)がある。
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