「ダイエットを一生懸命頑張っているのに、なかなか体脂肪が減らない」と悩んでいる方は、多いのではないでしょうか?
ダイエットは上手に行うと体型を美しく整えてくれますが、間違った方法で行うと、逆に体型と健康を崩してしまう原因になります。
女性の体型改善の専門家であるパーソナルトレーナーの筆者が、よくあるダイエットの間違いと、40・50代が心掛けるべきダイエットのやり方について紹介します。
■ダイエットのよくある間違い
(1)毎日ハードな運動
「ダイエットを成功させるためには毎日、しっかりと運動をしなければいけない」と思っている人は非常に多いと感じています。
しかしこれは、よくあるダイエットの間違いです。
毎日しっかりとした運動を行いすぎると、疲労の溜まりすぎが心配されます。
ただでさえ回復力が落ちる年代なのですから、疲労とストレスが溜まることで運動の継続が難しくなりますし、日常の仕事や家事にも悪影響が出てしまいます。
そして何より、疲労が溜まることで代謝が低下し、逆に痩せにくくなってしまう可能性もあります。
ですから毎日、「疲れたー!」とはっきり感じるような運動を継続することは、逆効果なのです。
(2)糖質も脂質も極端にカット
ダイエットにおいて、糖質と脂質をカットしすぎることも大きな間違いです。
確かに、体重が非常に落ちやすくなることは間違いありません。しかし、脂質も糖質も人体の重要なエネルギー源として利用されます。
体の代謝を行うためには脂質と糖質のエネルギーが必要で、これらが不足すると代謝が低下し、体重が落ちにくくなってしまうと考えられます。
また、脂質や糖質は細胞膜の材料となり、細胞内外の栄養や体液などの入れ替えを行います。これらが上手く作られなかったり機能しなかったりすることで、お肌の状態が悪くなるなど、美容にとって悪い影響が出てきます。
さらに糖質が不足すると、エネルギー源として体のタンパク質を分解し、糖質に変化させて利用させるため、筋肉量の低下が起こります。
以上のようなことから、糖質・脂質をカットしすぎると痩せにくくなり、お肌などの状態が悪くなり、筋肉が落ちて締まりのない体になってしまいます。
(3)タンパク質はとればとるほどいい
ダイエットにおいて、タンパク質のとりすぎは要注意です。
最近はタンパク質が注目されています。筋肉量を維持してくれる他、お肌や髪の毛・爪などに対して非常に良い効果が考えられますし、多めの摂取によって食欲を低下させてくれる効果もあります。
しかし、タンパク質はとればとるほど良いわけではありません。必要量をとれば十分に効果的なのです。
逆に、タンパク質をとりすぎた上に糖質と脂質の摂取量を落とさなければ、体型を保てなくなります。なぜなら、糖質・脂質をそのままにタンパク質をプラスすると、オーバーカロリーになって、体重が増加してしまうからです。
ですから、タンパク質を多くとるには糖質か脂質を減らさなければいけないのですが、タンパク質を「過剰」にとることで、糖質や脂質が不足してしまいます。
前述したように、糖質も脂質もダイエット中においても必要不可欠な栄養素ですから、タンパク質の取りすぎには注意しましょう。
(4)とにかく目標体重まで落とす
40・50代のダイエットにおけるよくある間違いは、「とにかく体重を落とせば以前のような体型に戻れる」と考えていることです。
しかし、「体重を落としてもあまり体型が変わらなかった」「思っていたよりもお腹周りのお肉が全然落ちなかった」という方も非常に多くいらっしゃいます。
それもそのはずで、若い時とは皮膚の垂れや筋肉量の低下、姿勢の変化などで体の状態が違います。ですから若い時の体重に戻したからといって、以前のような体型に戻ることはできません。
また、体重のみを目標にすると、無理な食事制限をしてしまいがちです。
ですから、体重のみを指標にダイエットを進めることはやめましょう。
■40・50代のダイエットの基本
(1)十分な睡眠をとる
「ダイエットに睡眠」と聞くと首を傾げる方も多いと思いますが、40・50代のダイエットにとって、睡眠は非常に大切になります。
その理由は、回復・代謝改善・脂肪燃焼です。
年齢をとるごとに、体は回復しにくくなります。一方で、ダイエットはある程度摂取カロリーを制限しますし、運動も行います。摂取カロリーの制限は回復を鈍らせますし、運動は体力を消耗させます。
つまり、ダイエットは体の消耗を早める一方で、体は歳をとるごとに回復しにくい状況になります。
ですから体の回復が追いつかなくなり、代謝を低下させて回復を促そうとすることも考えられます。
そのため、睡眠不足からの代謝低下で痩せにくくなることが考えられますし、睡眠不足だと脂肪燃焼効果も落ちてしまい、その意味でも痩せにくくなってしまいます。
厚生労働省は、一般的な成人に対して6〜8時間程度の睡眠時間を推奨しています。いきなりここに合わせるのは難しいかもしれませんが、少しでもここに近づけるように努めましょう。
ダイエットというと食事も運動も一生懸命やってというイメージが強いですが、まずはしっかりと身体を回復させることを意識しましょう。
(2)適度に糖質と脂質もとる
前述したように糖質と脂質は、健康的で美しい身体を作るためには必要不可欠な栄養素です。ですからこれらをカットはせず、毎食必ず糖質・脂質を摂取するようにしましょう。
では、どれくらいとればいいのでしょうか?
厚生労働省の調査で日本人の食事摂取基準を元に計算をしたところ、30〜49歳で活動量の低い女性が摂取を推奨される脂質摂取量は、最低で約39g、高くて58g程度になります。ですから摂取量を減らしたとしても、約40g程度までは摂ることがオススメです。
定期的な運動をしている方などは、45g程度は必要になります。ですから、すでに運動をしているかたやこれから始める方は、やや多めにとっておくことがオススメです。
一般的な40〜49歳女性は、1人1日あたり59.1gの脂質をとっています。これを見ると、多くの方は少し脂質のとりすぎかもしれません。
ですから体重を落とすときは、脂質摂取量を「少し」落とすことをお勧めします。
小さじ1杯のオイルには、脂質が4g程度含まれています。
ですから、いつもの食事をダイエット食に変化させる場合は、オイル小さじ1〜3杯程度を減らす目安にすると良いでしょう。
また、おやつをチョコレート・シュークリーム・ビスケットなど脂質が多い洋菓子から、ようかんや大福・団子などの和菓子にするとちょうど良いかもしれません。
糖質を含む炭水化物は、運動量が少ない方は1日に約218〜284g、ある程度運動量がある方は256〜333g程度が推奨されています。一般的な日本人女性の炭水化物摂取量は220.4g程度です。ですからこちらは、変化させる必要のある人は少ないかもしれません。
(3)適度な量のタンパク質摂取
タンパク質は、筋肉量を維持しお肌や髪の毛・爪などの材料になるため、ダイエットにおいて非常に重要な栄養素になります。
一方でカロリーが含まれるため、タンパク質のとりすぎは、体重増加や糖質・脂質摂取量が少なくなることにつながります。
タンパク質の1人1日の目標摂取量は、30〜49歳で運動量が低い女性の場合57〜88g程度、運動習慣がある程度ある方は67〜103g程度になります。
一方で、40〜49歳の平均的なタンパク質摂取量は、65.9g程度となっています。
年齢を重ねるごとにタンパク質摂取の重要性はましてきますし、運動を行うと多めにタンパク質が必要になります。
「これから健康のためにも、軽くでも運動を始めよう」という方は、少しタンパク質が足りない事が多いかもしれません。
ですから、1日の食事のどこかに、脂質少なめのお肉を50g程度足すと良いでしょう。
(4)適度な運動を継続する
以上のように、十分な睡眠・栄養をとって身体を良い状態に保った上で、ハードすぎない範囲で体力を向上させる運動をすることが、非常に大切です。
運動をすることにより、長期的に体重の維持に役立ち、筋肉量を維持・増加させ、お肌の状態を改善する効果が期待できます。
これらの運動効果は、毎日ハードな運動をしなくても得ることができます。
例えば厚生労働省では、週2回以上・一回30分以上運動をしている人を「運動習慣者」と呼んでいます。
週に2回以上30分程度運動をすれば、身体機能を維持・向上をさせることが十分に期待できるということです。
最初から週2回・30分/回は厳しすぎるかもしれません。しかし、今まで何もしていなかった人が週に1回5分やるだけでも体に違いは出ます。少しづつ積み上げて、週に2回30分程度の運動量を目指して、増やしていきましょう。
(5)体重よりも体型・そして健康
40・50代の方のダイエットする上での心がけで大切なことは、体重よりも体型、そして健康を気にすることです。
前述したように、体重を若い時と同じに戻したところで、同じ体型になるとは限りません。
しかし、適切な休養・栄養・運動を積み重ねることで、目標まで体重が落ちなくてもスリムな体型に変化することは可能です。
なおかつ、それらをキープするためには、健康的な身体を維持する事が非常に大切になります。
無理なダイエットをすれば「細い」身体を作ることはできるかもしれませんが、いつかそれは破綻してしまいます。「健康的な習慣を作った結果、スタイルアップする」ことを心がけて、ダイエットを進めましょう。
(パーソナルトレーナー 藤本 千晶)
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【参考】
※健康づくりのための睡眠指針2014(PDF) – 厚生労働省
※日本人の食事摂取基準(2020年版)(PDF) – 厚生労働省
※令和元年 国民健康・栄養調査報告(PDF) – 厚生労働省
※高齢者でタンパク質が不足 フレイル・サルコペニアを予防するためにタンパク質の摂取に工夫を – 日本生活習慣病予防協会
※21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21) 身体活動・運動 – 厚生労働省