「寝汗がひどく、朝起きるとシーツがびっしょり濡れている」「汗が不快でなかなか眠れない」という悩みを抱えていませんか?
40・50代になってから目立ってくる寝汗。実は、寝汗は更年期の代表的な症状といわれています。また、それ以外の重大な病気が隠れている場合もあるので、「ただの汗」と軽く考えるのは禁物です。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、寝汗について教えていただきました。
■寝汗がひどくなる原因3つ
寝汗の主な原因と、その理由について解説します。
(1)過度なストレス
日々の生活のなかで過度なストレスに晒されていることが、寝汗の原因のひとつとして考えられます。
40・50代は、仕事や子どもの独立、親の介護問題など、何かと悩みが尽きない時期です。
何気ない生活の変化がストレスになり、自律神経を乱す原因になることもあります。
交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、睡眠時の体温調節がうまくコントロールできなくなり、大量の寝汗をかいてしまいます。
(2)女性ホルモンの乱れ
閉経前後の10年間を更年期といいますが、更年期は女性ホルモンであるエストロゲンが徐々に減少し、からだのさまざまな部分に不調があらわれます。
自律神経の乱れにより体温調整が行いにくくなり、過剰に汗をかいてしまうこともあるのです。
また、PMS(月経前症候群)が影響している場合もあります。
PMSは、医学的に完全に解明されていない部分もありますが、生理前の女性ホルモンの分泌低下が関わっているといわれています。
ホルモンバランスが不安定になると基礎体温が上昇するため、寝汗をかきやすくなるのです。
(3)病気の可能性
ストレスや更年期とは別に、病気が寝汗の原因になっている場合もあります。
たとえば、多汗症には「続発性多汗症」という感染症、内分泌代謝異常、腫瘍などを原因とする症状が存在します。
また、甲状腺ホルモンが異常分泌される「甲状腺機能亢進症」という病気から過剰な発汗がみられることも。
白血球のリンパ球ががん化する「悪性リンパ腫」にも激しい全身発汗がみられます。
大量の発汗が続いておさまらないなどの異常を感じた場合は、なるべく早めに医療機関に相談しましょう。まずはかかりつけ医や婦人科を受診してみてください。
■寝汗を放置してはいけない理由
寝汗は運動時のサラサラとした汗とは異なり、ベタついた汗であるといわれています。
また、アンモニアといった悪臭の原因成分が含まれるので、不快なニオイを発してしまいます。枕や布団にも汗が染み、ニオイが移りやすくなるのです。
加えて、寝汗は睡眠の質を低下させます。寝汗の不快感で夜中に目が覚めてしまったり、朝起きたときに熟睡感が得られなかったりすることも。何度も目が覚めてしまうため、睡眠時間が不足することもあります。
このように、寝汗は二次的な問題にもつながりやすいため、放置せずに適切な対策を行うことが大切です。
■快適に眠るための寝汗対策
快適な睡眠のための寝汗対策を3つご紹介します。どれも簡単に実行できるものばかりなので、参考にしてください。
(1)吸水性・吸湿性のよい寝具やパジャマに変える
就寝時の寝具やパジャマの素材をきちんと選ぶことで、ある程度汗の不快感を軽減できます。
なるべく薄手で通気性があり、風通しのよいものを選びましょう。かいた汗を吸収してすぐに発散してくれるものが適しています。
綿、麻、シルクなどは吸水性や吸湿性が高いため、心地よい眠りを助けてくれるでしょう。
ポリエステル素材は速乾性がありますが、吸水性や吸湿性が期待できず、蒸れてしまうので、避けるのが無難です。
(2)適切な室温・湿度に設定する
質の高い睡眠をとるためには、室温や湿度を適切な設定にする必要があります。
一般的に、室温の設定は夏は26度、冬は18度ほどが目安。湿度は、季節を問わず50%前後が快適です。
夏場はエアコンの風が直接当たらないようにしましょう。寝汗を乾かすにはドライ(除湿)設定も有効です。扇風機なども同時に利用すると、温度を下げすぎずに快適な室内環境を保てます。
(3)就寝前のリラックスタイムを設ける
就寝前に以下を取り入れて、リラックスしてからベッドに入るのもおすすめです。
ぬるめのお風呂
37~39度ほどのややぬるく感じるお湯に、15分程度浸かりましょう。
入浴は副交感神経を優位にはたらかせ、就寝時のリラックスモードに入りやすくします。
夏場はシャワー浴だけでませてしまう人も多いですが、入浴は冷房で冷えたからだの温熱効果や疲労回復効果も期待できます。
ハーブティー
ハーブティーには、脳の興奮状態を抑える安眠効果があるといわれています。
寝る前のリラックスタイムにぴったりなのは、カモミールやリンデン、ラベンダーなど。とくにカモミールはクセが少なく飲みやすいと人気のハーブティーです。
ただ、過剰な水分摂取は寝汗の原因になるため、適度な水分補給に留め、飲みすぎには気をつけましょう。
軽めの読書
就寝前の読書は、ストレス軽減効果があり、安眠に適しているといわれています。
夢中になって読み耽るような作品ではなく、なるべくさらっと読めて、いつでも読み終われる本が、就寝前の読書には向いています。
■更年期の寝汗には漢方もおすすめ
からだの内側から改善を目指すために、漢方薬を服用するのもおすすめです。
更年期になると、女性ホルモンの乱れが自律神経を不安定な状態にするため、体温調整が上手にできなくなり寝汗が生じやすくなるとされています。
また、からだの水分バランスや、胃腸のはたらきの低下も寝汗の原因と考えられています。
対策には、以下のような働きのある生薬を含む漢方薬を選び、根本改善を目指します。
・ホルモンバランスや自律神経の乱れを整える
・水分代謝を改善してからだにこもった熱を冷ます
・胃腸の機能を回復させる
更年期の寝汗対策におすすめの漢方薬を以下に2つご紹介します。
寝汗対策におすすめの漢方薬
加味逍遙散(かみしょうようさん)
更年期症状に用いられる代表的な漢方薬で、からだの熱を冷ますことで、のぼせ・ほてり感を抑えます。更年期のイライラや不安などの精神症状にも用いられます。
知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
加齢によって衰えた泌尿器系・生殖器系の機能を高めることで、のぼせ・ほてりを改善します。
慢性的に寝汗が気になる場合には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
漢方薬は、自然由来の成分を原料とした薬で、副作用のリスクも少ないことで知られています。体質そのものを改善したい場合に最適です。
■生活習慣を改善して寝汗の悩みを解消
寝汗は汗そのものによる不快感だけでなく、ニオイ、睡眠の質低下など、二次的な悩みも生まれます。今回ご紹介したセルフケアを駆使しつつ、寝汗体質を改善していきましょう!
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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