「最近、暑さ対策をしっかりしているのに、なかなか寝つけない」「夜中に汗をかいて目が覚める」「朝早く目覚めてしまう」「眠りが浅くて何度も目が覚める」とお悩みの方はいらっしゃいますか?
それは、もしかしたら更年期の仕業かもしれません。
理学療法士で睡眠の専門家でもある筆者が、更年期の睡眠の問題と対策についてご紹介します。
■更年期に「自律神経の不調」のような症状が見られるわけ
閉経の前後10年間を「更年期」といいます。女性ホルモンは、閉経が近づくにつれて卵巣機能が低下することにより減少してきます。すると脳は女性ホルモンをなんとか分泌させようと卵巣に命令を下します。
しかし、卵巣の機能低下によりその命令に応えることができません。すると脳は混乱し、自律神経のバランスや感情面、免疫系の働きなども一緒に乱れてしまうと考えられています。
更年期症状の出方には個人差がありますが、不眠をはじめとした自律神経失調症の症状にとてもよく似ているといわれるのは、上記のような理由からなのです。
■更年期の睡眠の悩み
更年期では、睡眠の問題も多く聞かれます。
まず、加齢により睡眠が浅く短くなっていきます。そこに、のぼせ・発汗・動悸などがきっかけとなり、深く眠れないことが多くなります。
また過度なストレスは不眠につながります。更年期の時期に、子供の独立や身体の衰えなど、ストレスの要因になる事柄が重なる人も多く、更年期の睡眠悩みを加速させている可能性があります。
さらに閉経後には、ホルモンの関係でいびきをかきやすくなり、睡眠時の呼吸トラブルのリスクが高まると考えられています。
眠れない日が続くと「また今夜も眠れないのではないか」と不安になり、「早く眠らなければ」と焦れば焦るほど目が冴えてしまう、なんていうことが起こりやすくなります。
■更年期の「眠れない」対策3つ
(1)規則正しく、生活リズムを崩さない
何かと忙しい更年期世代。つい夜遅くまで家事や仕事に追われ、生活リズムを崩しがちです。
朝は一定の時間に起き、カーテンや窓を開けて、朝日を浴びましょう。
人は日光を浴びると脳内からメラトニンという物質を分泌し、体内時計を調整すると考えられています。
(2)身体を動かす
日中、軽く疲れる程度の運動を心がけましましょう。
現代人の睡眠問題の多くは、身体は疲れていないのに脳だけが興奮しすぎて眠れないのが原因の1つです。
運動というとキツい、ツラい運動をイメージしがちですが、心地よい疲労を感じる程度のヨガやピラティスは、良い眠りのためにもおすすめです。
また、エレベーターやエスカレーターを階段に変えるなど、生活の中で運動量を増やしましょう。
(3)無理をしない
無理をするとストレスなどから身体が緊張して眠れなくなります。全てを完璧にこなそうと思わないことが大切です。
ホルモンのバランスが急激に変化している更年期世代は、無理をしないことを覚えるのも大切な予防法です。
更年期症状は出かたが違うだけで、誰でも起こりうるものです。調子が悪い時は、周りにSOSを出すなど協力をお願いしましょう。
■「更年期」の問題ではない場合も
更年期時期にはさまざまな症状が現れるために、そのすべてが更年期によるものと決めつけてしまいがちです。
しかし「実は別の病気だった」という可能性もあるので、からだや心の不調を感じたら、まず更年期によるものかどうかを確認するために早めに受診しましょう。
更年期について、そして更年期の睡眠の問題と対策についてご紹介しました。あまり悩みすぎると、かえってストレスにもなります。お伝えしたような生活習慣を心がけて、睡眠の悩みを軽くし、更年期を前向きに過ごしていきましょう。
(著者/講師・理学療法士 矢間 あや)
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【参考】
※2. 更年期障害の起こるメカニズムとは? – 日本産婦人科医会
※更年期障害 – 厚生労働省
※更年期障害の症状・原因 – 第一三共ヘルスケア
※不眠症(睡眠障害) – 知ることからはじめよう こころの情報サイト
※Progestin and estrogen reduce sleep-disordered breathing in postmenopausal women – NCBI