「最近、マスクで肌荒れを起こしてしまった」「自粛生活で肌の老け見えが加速してしまった気がする」なんてことはありませんか? これは、もしかすると自粛中の生活習慣が関係しているかもしれません。
美容、健康、ファッションで、皆さまのライフスタイルにいま以上の笑顔を増やす方法をご提案するクポノライフデザイナーの筆者が、つやプラ世代が今知っておくべき”大腸と肌の関係性について“六本木にある美容皮膚科 医療法人青輝会 アオハルクリニック院長の小柳 衣吏子(こやなぎ えりこ)先生と「大腸劣化」対策委員会にお話を伺ってみました。
Q.どのようにして大腸と肌が関係しているのか
40代女性というと、シミやくすみ、シワやたるみ、抜け毛、白髪などといったエイジングサインが現れる年齢ですが、なかでも肌のシミやくすみでお悩みの方が多いようです。また、マスクで肌荒れをしてしまったというお声も多くいただいています。
今回、大腸と肌が関係しているとの発表があり、具体的にどのようにして大腸と肌が関係しているのか伺ってみました。
小柳先生
実はまだ研究途中ではありますが、近年、腸内細菌と皮膚に関連する論文が10年間で約6倍と、かなり増えてきています。
そのなかでも、便秘をすることで便が悪玉菌のエサとなり有害物質である「フェノール類」が産生され、その有害物質が腸の壁から血流に乗って全身に運ばれ肌にも届いてしまうことが、肌荒れの主な原因のひとつだといわれています。
そんな有害物質が全身を巡ってしまうなんて、なんだか怖いですよね。
腸内環境を整えるには食生活が重要
小柳先生
昔から便秘をするとニキビや吹き出物ができるといわれていますよね? それは、この有害物質が原因なのではないかと現在では考えられています。なので、排便したいのに我慢することはよくないことですし、ずっと便秘ぎみな状態を放っておくということは肌荒れを固定化させてしまいやすいので、腸を健康に保つべきだということになります。
腸内環境を整えるには食生活が重要で、普段からヨーグルトや発酵食品、プロバイオティクスやプレバイオティクス、シンバイオティクス食品を積極的にとり入れることを習慣づけてください。
また、女性はホルモンのバランスによっても便秘になりやすい時期があるので注意が必要です。
やはり、腸内環境を整えることが、肌の状態をキレイにキープすることにつながるということですね。
プロバイオティクス
「大腸劣化」対策委員会
「プロバイオティクス(プロバイオ)」とは、腸内フローラのバランスを改善することによって健康に好影響を与える生きた微生物(乳酸菌・ビフイズス菌・酢酸菌等)のことで、元々ある善玉菌とともに腸内環境を整える他の種類の善玉菌や、それを含む食品のことをいいます。
プロバイオティクスで積極的に補いたいのは、さまざまな発酵食品に含まれている「ビフィズス菌」や「乳酸菌」などの善玉菌やそれを含む食品です。
食事などで外から摂取したプロバイオティクスの菌は便と一緒に排泄されてしまうため、長く定着させておくことはできません。ただし、大腸内に存在している間は常在する腸内細菌と同様の働きをするため、毎日摂取して善玉菌を補うことで腸内環境を弱酸性の良い状態にキープすることができます。
プレバイオティクス
「プレバイオティクス(プレバイオ)」とは、自らが善玉菌のエサとなることで善玉菌を育てる成分のことをいいます。
プレバイオティクスは、ビフィズス菌などの善玉菌が餌にする食物繊維やオリゴ糖などです。毎日摂取することで常在菌の栄養となり育てる働きをするため、大腸ケアは毎日継続して行うことが非常に重要となります。
食事の際は、プロバイオティクスとプレバイオティクスを両方摂れているか意識しながらメニューを選ぶと良いでしょう。
Q.つやプラ世代だからこそ気をつけなければならないこととは?
「大腸劣化」対策委員会
善玉菌が優位な状態に保たれていることが理想的な腸内環境です。
腸内フローラのバランスが乱れて、悪玉菌が優位な状態が続いてしまうと、便秘や下痢、肌荒れといった症状が現れやすいということがわかってきています。それだけではなく、腸内フローラの乱れによって腸のバリア機能が衰えると、大腸劣化を引き起こすこともあるといわれています。
一般的に腸内フローラは、年齢を重ねることによる老化と生活習慣が関係すると考えられています。腸内環境は人にもよりますが、これまで腸内環境について考えたことのなかった方や肌荒れにお悩みの方は、腸内環境を整えることを意識すると良いと思います。
年齢とともに大腸劣化が起きるということを考えると、今日から食生活を見直すことが未来の肌のために必要となってきそうですね。
Q.小柳先生が、日々意識している食べ合わせとは?
小柳先生
平日のお昼は診療で忙しくて時間がないので、朝と夜にしっかりとプロバイオティクス(菌を補うもの)とプレバイオティクス(育てるエサになるもの)をとるようにしています。
例えば、山芋や納豆、めかぶやオクラなどのネバネバ食品や、キムチやお新香などの発酵食品、味噌を食べることの有用性が高いと聞いたので、味噌を使ったお味噌汁はとるようにしています。あとは、無糖のビフィズス菌配合のヨーグルトにオリゴ糖をかけて食べたりしてますね。
ご飯には、大麦や雑穀を入れています。野菜やご飯、味噌もそうですが、定期便でまとめ買いしておくことがおすすめです。食べないと減っていきませんからね。こうすることで、今では勝手に習慣となっています。
最近は、スムージーを定期便で購入しています。刻まれた野菜やフルーツ、豆が数種類、ごろごろ入って冷凍されており、そこに無脂肪牛乳と大人の粉ミルク、オリゴ糖を少し入れてスマッシュして飲んでいます。
ゴーヤなども入っているので、こうすることで美味しくいただくことができる楽しい習慣です。
Q.なぜ、ビフィズス菌が良いのか
「大腸劣化」対策委員会
日本人の大腸内にはビフィズス菌が多く棲んでいます。乳酸菌とビフィズス菌はどちらも善玉菌として良く知られていますが、この2つは大きく特性が違います。また、2つの細菌が棲息する場所も違います。
乳酸菌
「乳酸菌」は乳酸をつくる細菌の総称で、食物繊維やオリゴ糖などを分解してつくる代謝物の50%以上が乳酸である細菌のことをいいます。
酸素があっても生きられる乳酸菌は主に小腸に棲息しています。
ビフィズス菌
ビフィズス菌も乳酸をつくり出すのですがその量は代謝物の50%に満たないため、乳酸菌の定義にはあてはまりません。
ビフィズス菌は酸素があると生きられないため、主に酸素がほとんどない大腸に棲息しています。そのため、大腸内での比率は、ビフィズス菌999に対し乳酸菌はわずか1しかありません。
両者は消化物のなかの食物繊維やオリゴ糖などを食べて乳酸をつくり出すという点は共通していますが、ビフィズス菌はさらに短鎖脂肪酸の一種である「酢酸」も生み出します。この酢酸には強力な殺菌作用・抗炎症作用・腸管バリア保護機能があり、抗メタボ作用なども認められたため近年とても注目されています。
Q.ビフィズス菌をサプリでとることもできる?
「大腸劣化」対策委員会
ヨーグルトや乳製品を摂れない体質の場合、サプリメントでの摂取も良いでしょう。善玉菌の代表格でもあるビフィズス菌を増やすためには、「プロバイオティクス(菌を補うもの)食品」や「プレバイオティクス(育てるエサになるもの)食品」を、毎回の食事で意識的にとり入れることが大事です。
Q.つやプラ世代が意識するスキンケアのポイントや注意点とは?
小柳先生
ニキビの人がマスクをすると、非常に治りにくいです。医療従事者はマスクをするので、ニキビの治りが遅い人が多いです。なので、1人でいる時はとにかくマスクを外すことが大事です。
洗顔のポイント
洗顔料を泡立てたらニキビができやすいorできているUゾーンやTゾーンに泡を乗せてから、やさしく全顔を洗うと良いでしょう。
ただ、角層が弱い乾燥肌の方がマスクをしていると2〜3時間でマスクをしている部分が蒸れて、ふやけた状態になる人が多いです。そういう方は、頬の面や唇などをゴシゴシと洗ってはいけません。唇がふやけている人もいらっしゃるので、マスクをしていてもリップクリームは塗っておくと良いでしょう。
日々、拝見している敏感肌の方は、耳の上や頬のマスクが当たる部分、ちょうど肝斑やシミが出る部分がこすれたり、かゆくなりやすいので、丹念に保湿をすることをおすすめします。
肌がこすれると肌のバリアが破壊されて弱くなっている状態なので、「人工的なバリアという意味で、よくこすれるところは保湿をするように」とお伝えしています。それに加え、製品選びも大切です。
製品選び
例えば、脂浮きする時はビタミンC入りの化粧品や、スーパーヒアルロン酸や乳化ワセリンなど、保湿できてサラッとした使い心地のものを選ぶと良いでしょう。マスクをしているのにベタつくと不快に感じてしまうからです。
もちろん、自分に合うメーカーを探すことは良いことです。
また、不織布のマスクは紫外線を通すので、マスクをしていても日焼けします。日焼け止めを塗っていても、マスクをして2〜3時間で蒸れて、大体落ちてしまうのです。なので、ずっと外にいるような方は、特に塗り直しを意識してください。
Q.どのくらい肌荒れをしたら病院へ行った方がいいの?
小柳先生
どんな状態でも、不安ならお越しください。お薬を出すか出さないかは状態によってこちらで判断させていただきます。
お薬が必要ない時でも正しいスキンケアをレクチャーすることもできますし、肌の状態をお伝えすることで安心されてご納得される場合もありますから、いつでもご来院いただいてOKです。
最後にとてもやさしいお言葉をいただけて、肌にお悩みを持つつやプラ読者の皆さまも安心したのではないでしょうか。筆者は、小柳先生が手がけた「AOHAL(アオハル)」のスキンケアアイテムも気になりました。
普段、肌に関する悩みはメイクやスキンケアアイテムの見直しだけで解決しようと考えがちですが、やはり腸内環境と皮膚はつながっているということがわかりましたね。だからこそ、これからも美しく年齢を重ねるために、今後は外側のケアだけではなく内側のケアも念頭におき、どちらからもケアしていきたいですね。
(クポノビューティー代表。美容研究家、美容ライター 星 ゆうこ)
【小柳 衣吏子先生 プロフィール】
医療法人青輝会 アオハルクリニック院長【専門分野:皮膚科、美容皮膚科】順天堂大学医学部1998年卒業。順天堂大学皮膚科学教室非常勤助教、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会評議員。著書『美肌の王道(日経BP社)』。2011年から六本木の美容皮膚科「AOHALクリニック」院長(現在に至る)。美容皮膚科の草分けのひとり。治療コンセプトに『ウェルエイジング(Well Aging)』を掲げ、単に加齢に抗うのではなくよりよく歳を重ねる「王道」を、患者とともに歩み続けることを信念としている。「見た目の美しさにはカラダの中の健康が欠かせない」と訴え、男性・女性問わず、お肌の健康と美しさの改善・維持・向上を真剣に求める方々から、多くの共感をあつめている。
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【参考】
※「大腸劣化」対策委員会