健康リスクが高まる更年期に、カカオポリフェノールの抗酸化作用が有効であるということを前回の記事でお伝えしました。しかし、女性にとっては、チョコレートを食べ続けることによる体重増加も気になるところ。
今回はチョコレートの摂り方や選び方について、株式会社 明治研究本部の博士(農学)夏目みどりさんにお話を伺いました。
摂るべきカカオポリフェノールの量って?
ーーカカオポリフェノールの抗酸化作用が健康リスクから守ってくれることを前回教えていただきましたが、どの程度のカカオポリフェノールを摂るのが望ましいのでしょうか。
「チョコレートは薬でもありませんのでこの量を摂ったからといって効果効能がある、というわけではないのですが、1日に600 ㎎※1程度のカカオポリフェノールを摂取した試験で血圧に良い結果が出たという報告があります※2」
「ただ、少ない量で長期間続けた場合も良い結果が得られた、という報告もありますので、600㎎を摂らないと意味がない、ということではないと思います」
「カカオ含有量72%の高カカオチョコレートを25g程度食べると、600㎎超のカカオポリフェノールを摂取することができるので、ひとつの参考にしてみてください」
※1 チョコレート業公正取引委員会による公定法によりポリフェノール量測定 / ※2 大澤俊彦 第20回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム2015年(Midori Natsume, et al: Advances in cinical and Translational Research 2018, 2.)
チョコレートは実は太りにくい!?
ーーチョコレートでカカオポリフェノールは摂取できても、カロリーの高さや血糖値の上がりやすさが気になります。
「チョコレートは、食後血糖値の上がりやすさを示す『GI値』が実は低い食べ物。高GI値食品の摂りすぎは肥満の原因になると言われていますが、主成分がお米であるおせんべいの方が実はGI値は高いです」
「チョコレートは甘いので高GI値だと思われがちですが、甘さとGI値は必ずしも比例しないんですね」
「もちろん、今まで間食をする習慣がなかった方がチョコレートをたくさん食べるようになった、などの場合は太ってしまうことも考えられると思いますが、
例えば今まで間食でおせんべいを食べていた方が、同じカロリー分の高カカオチョコレートに間食を変えた場合、太りにくい食品に切り替えた、と言えると思います」
「高カカオのチョコレートになればなるほど、砂糖の含有量が少ないので、よりGI値は低くなります。そのため高カカオチョコレートは間食としてもおすすめの食品です」
ーーチョコレートの1日あたりのおすすめの摂取量や摂り方を教えてください。
「チョコレートに限らずなんでもそうですが、食べ過ぎてはもちろん良くありません。厚生労働省のHPにもあるのですが、一般的には間食は1日に200kcal程度が適量とされていますので、それを目安に召し上がるのがいいのでは、と思います」
「200kcalは、カカオ含有量70%のチョコレートであれば30g程度。この量を1日に摂ることができれば、カカオポリフェノールの量の観点からみてもおすすめできます」
「ポリフェノールはチョコレート以外からも摂取できますので、『他のスイーツをたくさん食べたからチョコは控えて、今日はコーヒーを飲もう』など、カロリーも考えながらポリフェノールを柔軟に取り入れてみてください」
高カカオチョコが苦手でも大丈夫!選ぶべきチョコレートとは
ーーチョコレートは種類がたくさんありますが、どのようなチョコレートがおすすめでしょうか。
「例えばカカオ70%のチョコレートというのは、カカオ由来の成分の割合が70%ということ。残りの30%は砂糖など、他のものが占めているということになります」
「そのため、含有量は異なりますが、ミルクチョコレートなどの高カカオではないチョコレートにも、カカオポリフェノールは含まれています。ちなみにホワイトチョコレートはカカオを使用せず作られているので、ホワイトチョコをベースとしているチョコレートにはカカオポリフェノールは含まれていません」
「カカオ含有量が低いほど、砂糖の量が増えることが考えられるので、カロリーやGI値を気にするのであれば高カカオの方がおすすめですが、それ以外のチョコレートでもポリフェノールは摂取できます」
「ちなみに高カカオチョコレートとは、一般的にはカカオ含有量70%以上のチョコレートを指しますが、明確な定義はありません」
ーー高カカオチョコレートは苦くて苦手…という方に向けて、おすすめの摂り方はありますか?
「チョコレートは薬ではなく、あくまでも食品。お菓子の一種なので楽しく美味しく召し上がっていただくものだと考えています。そのため、苦手なのに無理に食べる…となるとかえってストレスになりかねません」
「美容のためといって、苦い、楽しくないと思いながら我慢して高カカオチョコレートを食べている方がいますが、抗酸化力を上げるために高カカオチョコレートを摂っていても、ストレスで活性酸素が増える原因を作ってしまっては元も子もありません」
「苦いものは苦手だけれども、高カカオチョコレートに挑戦したい、という方はまずは70%くらいのカカオ含有量のものを、少ない量から試してみてはいかがでしょうか」
「研究の結果、カカオ70%チョコレートを最初は苦いと感じていたけれどもだんだん慣れてきて美味しく感じられるようになった、という人も少なくなかったので、試してみていただきたいですね」
「あとは、同じカカオ含有量でも、香りなど他の要素によって食べやすく感じる、などもあり得るので、色々なチョコレートの中から、好みのものやそれぞれの美味しさを楽しんでもらえればと思います」
【夏目 みどり(なつめ みどり)さんプロフィール】
名古屋大学農学部食品工業化学科卒業後、明治製菓株式会社(現・株式会社 明治)に入社。入社後、食品の機能性、特にカカオに含まれるポリフェノールに関する研究に携わっている。2008年 博士(農学)を取得。
【前回の記事】
・更年期は心疾患リスクが上昇!?身体を守るカカオ習慣とは?
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【参考】
※日本チョコレート・ココア協会 チョコレート・ココア健康講座
※教えて!チョコせんせい!
※みんなの健康 チョコライフ 5分で分かる効果 (高カカオ)健康リスクを防ぐための低GI
※厚生労働省 e-ヘルスネット