夏も終わり、秋になると夏の疲れからか生理が乱れがち……という方も多いのでは? 筆者もこの時期は毎年、生理周期が短くなったり、長くなったりと不安定になります。
今回は、生理など女性の身体や不調と漢方の関係をご紹介したいと思います。
■「PMS・生理不順」と漢方の関係
東洋医学の上では、人は、
・気(き):生命活動、心身のエネルギー
・・血(けつ):血液
・水(すい):リンパ等の水分とその循環のこと
の3つの要素で構成されていると考えられています。このうち生理に関係するのは、主に「気」と「血」の異常とされています。
■生理前の不調は「気滞」と「血虚」が原因!?
特に、生理前に何となく不調を感じる「生理前症候群(PMS)」は、気の巡りが悪くなる「気滞」が原因と考えられています。また、栄養不足で血が不足した状態「血虚(けっきょ)」も生理不順にみられる主な原因とされています。そして、この「気滞」と「血虚」は、20~40代前半に多く見られるのです。
漢方における「不調」から、女性の不調を考える
PMSや生理不順は、この2つだけでなく多くの原因があるとされていますが、今回は代表的な気の滞りである「気滞」と、血が不足する「血虚」という漢方におけるそれぞれの状態について、その対処法をご紹介しましょう。
■「気滞」の症状と解決法
喉のつかえや頭重、お腹や胸が張る。酷くなると滞った気が摩擦を起こして熱を生じ、頭痛、イライラ、目の充血や不眠などの症状となっていきます。 また、気が滞ることで、血や水の巡りも悪くなり、むくみや「瘀血(おけつ)」という血が滞った状態に。生理でいえば、ドロっとレバー状の血の塊りがそのあらわれです。秋の始まりにある生理の乱れは、夏の疲れ、自律神経の乱れによる、この「気」に関わることが要因になっている場合が多いです。この「気滞」には、気の巡りを良くして、神経の昂ぶりを抑える漢方薬がおすすめです。
■「気滞」を解消して神経の昂ぶりを抑える漢方薬
「加味逍遥散(かみしょうようさん)」
のぼせや不眠、イライラ。布団につくと悶々として寝付けないなどの症状の際に。同じような症状でのぼせではなく、冷えがある場合は「逍遥散」がオススメ。
「抑肝散(よっかんさん)」
気が高ぶり怒りやすい、イライラが激しく神経過敏になっている状態。これらに消化器系が弱まっており、お腹が張るなどの胃腸症状がある場合は、「抑肝散加陳皮半夏(よっかんさんかちんぴはんげ)」がオススメです。
■「気滞」の解決法
深呼吸、イライラ、気持ちが昂ぶっているなと感じたら、まずは深く吸い込み、吸い込んだ倍の時間をかけて、細くゆっくりと息を吐きましょう。 ミントティー、ジャスミンティー、ローズティーもオススメ。気が昂ぶって、のぼせ気味、目も充血気味(または、眼精疲労や頭重)のときにおすすめなのが「菊花茶」です。入眠、安眠効果がたいへん高く、デトックス効果がたいへん高い薬膳茶です。
■「血虚」の症状と解決法
血虚は、生理周期が長くなったり、経血量が少なくなるなどの症状があたります。「血虚」は冷えも誘引し、血の滞り「瘀血」も引き起こします。川をイメージしていただくと分かりやすく、川に充分に水が満たされていないと流れも悪くなりますよね。それが私たちの身体でも起こっているのです。 この「血虚」には、不足した血を補って血の巡りを良くする漢方薬がおすすめです。
■「血虚」に効く、血巡りを良くする漢方薬
「当帰芍薬散」
血が不足して顔色が悪い、生理異常、生理痛、産前産後や流産後の貧血、疲労倦怠、冷え症などに効果的。また、血を補う代表的なものとして「四物湯」も効果的です。
■「血虚」の解決法
生理中から生理後は出血による消耗が大きいので、身体を休めましょう。また、血を補う食べ物、ナツメ、プルーン、ブドウ、ブルーベリーやナッツ類、黒ごま、黒豆、ひじきなど黒いものも積極的に摂りましょう。
PMSや生理不順は私たち女性にとって、決して無視できないものです。少しでも異常を感じたら、必ず専門医に診てもらうことをオススメします。また、こちらでご紹介した漢方薬はあくまでも代表的なものです。決して自己判断で摂取しないでくださいね。
(美巡セラピスト&漢方美容家 余慶尚美
「美巡(びじゅん)」をコンセプトにて、「巡り」のスペシャリストとして、美容・健康に関わる分野で幅広く活躍中。和漢サロン「manna マナ」を東京、白金にて主宰。
国際薬膳師・漢方養生指導士/毛髪診断士)
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【参考】
※有藤文香著(2008)『中医アロマセラピー家庭の医学書』(池田書店)