近年、40代以降の女性に急増している「下肢静脈瘤」のことはご存知でしょうか?
脚の静脈にできたこぶが、なんともいえないだるさや痛みを引き起こし、ついには脚のむくみや皮膚トラブルなどの原因になってしまうのです。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、下肢静脈瘤の原因や症状、そして予防法について教えていただきました。
■ふくらはぎのだるさ・痛みは下肢静脈瘤かも
下肢静脈瘤は、すねやふくらはぎの血管(静脈)が、瘤(こぶ)のように凸凹した状態で、さらに脚の皮膚が変色するといった症状があらわれる疾患のことです。
脚の静脈には血液の逆流を防ぐ逆流防止弁がありますが、これらが何らかの原因で閉じなくなると、脚の血管に血液がたまり、青く浮き上がるようになるのです。
具体的には以下のような症状があらわれます。
・ふくらはぎが痛む
・脚がむくむ
・睡眠中に脚がつる
・血管にふくらみがある
・皮膚が黒ずんでいる
・脚にしつこいかゆみがある
いくつか当てはまるものがあり、下肢静脈瘤だった場合、静脈が変形しふくらんだ状態のままになってしまうので、自然に治ることは期待できません。そのため、このような症状が続く場合には、 早めの対策が必要です。
直接命に関わる病気ではありませんが、慢性的かつ進行性のある病気なので、悪化する前に適切な医療機関での治療をおすすめします。
下肢静脈瘤は、基本的には「血管外科」が専門診療科ですが、血管外科の病気の多くは心臓血管外科で診察しています。その他、一部の医療機関では、皮膚科、形成外科、外科で診察しているところもあります。
■下肢静脈瘤は更年期に起きやすい?
下肢静脈瘤は、主に40代以降の女性に発生しやすい疾患です。
妊娠中の腹圧上昇は逆流防止弁にダメージを与えるため、出産経験のある女性の場合、逆流防止弁が破壊されやすい状態のまま年齢を重ねていきます。
また、ふくらはぎは血液を送り出すポンプの役割をしていますが、その筋力は年齢とともに低下します。すると、血液の循環障害が生じ、血液を下肢から心臓に戻すことが困難になってしまうのです。
つまり、40代以降の女性は、下肢静脈に血液がたまったり、弁が壊れやすくなったりするため、下肢静脈瘤が起きやすいのです。
■下肢静脈瘤の予防とセルフケア
下肢静脈瘤の予防とセルフケアについて3つご紹介します。
(1)積極的に脚を動かす
積極的に脚を動かすと、ふくらはぎの筋肉がポンプの役割を果たし、停滞している血流を促すので、下肢静脈瘤の予防につながります。
ふくらはぎの筋肉を鍛えるためには、毎日30分程度の散歩やジョギングなどを行うのが理想的ですが、普段の生活のなかで積極的に脚を動かすだけでも効果が期待できます。
たとえば、家事の合間にかかとの上げ下げを繰り返すことでも、簡単にふくらはぎの筋肉を鍛えることができますよ。
(2)入浴時や就寝前のマッサージ
入浴時や就寝前にマッサージを取り入れてみましょう。からだの疲れが取れるだけでなく、下肢静脈瘤の予防につながります。
まずは、床に座り、片方のひざを寝かせて、2〜3分間ふくらはぎを手でもみほぐします。
次に、ひざを立て、両手の親指で足首からひざ裏に向けて、ふくらはぎを押し上げるようにマッサージします。マッサージオイルを使うと、肌のすべりがよく、保湿効果も期待できます。
(3)弾性ストッキング、着圧ハイソックスの活用
下肢の血行が逆流するのを防ぐためには、弾性ストッキングや着圧ハイソックスも有効です。
ただ、締めつけがきつすぎると、かえって血行を悪くすることもあります。医療用のものも販売されていますが、専門家に相談しながら購入することをおすすめします。
■下肢静脈瘤には漢方もおすすめ
下肢静脈瘤の対策には、自然由来の治療薬として処方され、心とからだの不調の根本改善を得意とする「漢方薬」の活用もおすすめです。
下肢静脈瘤の原因となる静脈のうっ血は、加齢やストレス、冷え、ホルモンバランスの乱れにより悪化すると考えられています。
下肢静脈瘤の対策には以下のような働きをもつ漢方薬を体質に合わせて選びましょう。
・ストレスによる血行不良を改善する
・血行をよくして、筋肉の柔軟性を高める
・ホルモンバランスの乱れを整える
漢方薬を服用すると、心とからだのバランスが整います。漢方薬は下肢静脈瘤の予防だけではなく、更年期によるさまざまな症状にアプローチすることができます。
下肢静脈瘤におすすめの漢方薬
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
比較的体力があり、のぼせやすいのに足の冷えがある人に。血液の流れをよくし、うっ血を改善します。
苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
腰から足にかけて冷えが強くて疲れやすい人に。からだを温めることで、下半身の冷えと痛みを改善します。
慢性的に下肢静脈瘤、脚のむくみやだるさなどが気になる場合には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
■早期対策で健康的な脚を目指しましょう!
下肢静脈瘤の予防に努めることは、健康的な脚を保つための第一歩となります。今回の記事でご紹介したセルフケアなどを取り入れて、下肢静脈瘤を予防していきましょう!
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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