40代になると、女性はからだの不調を感じることが多くなります。
「もしかして更年期かも?」と思う一方、本当にこれが更年期なのかどうか判断できず、どう対処したらよいものかと迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/理学博士の碇純子さんに、更年期症状の見極め方と、受診する際の診療科について教えていただきました。
■この症状は更年期が原因?
閉経前後の5年間は更年期と呼ばれ、女性ホルモン分泌量の急激な低下によってさまざまな不調が生じます。
更年期による症状は、頭痛やめまいなどの身体的な症状から、イライラや気分の落ち込みなどの精神的な症状まで幅広く、個人差も大きいです。
更年期症状が広く知られてきたことによって、ちょっとした不調を「更年期による一次的なものだろう」と思い、ガマンしてしまうことも少なくありません。
しかし、なかには別の原因によって症状が出ていることもあるため、自分の不調がどこからきているのかを見極めることが大切です。
■症状別! 更年期症状の見極め方
それぞれの不調の原因が更年期なのか、あるいは他に原因があるのか、どのように見極めればいいのでしょうか。
更年期症状によく見られる代表的な3つの症状について、見極め方の例をご紹介します。
頭痛
片頭痛や緊張型頭痛は、代表的な更年期症状です。
とくに、片頭痛は更年期に悪化しやすく、女性ホルモン分泌量の低下によって自律神経が乱れ、血流が悪くなることで引き起こされます。
この2つの頭痛は、更年期の前から経験している女性が多いことから、「以前から同様の症状があった」かどうかが、更年期症状かを見極めるポイントとなります。
もし過去に経験したことがない急激な痛みの場合、脳腫瘍やくも膜下出血など、頭の病気が原因の可能性も考えられるため、注意して見極めましょう。
不眠
不眠は、更年期女性の約半数に生じるといわれるほど代表的な症状です。
頭痛と同様に、自律神経の乱れが原因であり、のぼせや発汗などにより体温調整がうまくできず、眠りが浅くなります。
のぼせや発汗、ほてりなど他の更年期症状が同時に起こっているかどうかが、ひとつの見極めポイントになるでしょう。
加齢によって睡眠が浅くなっている可能性や、精神的なストレスで自律神経が乱れ、不眠となることもあります。
個人で判断するのは難しいこともあるため、不眠に悩んだときには病院を受診することがおすすめです。
イライラや気分の落ち込み
更年期には、気分の浮き沈みが激しくなります。
イライラしやすくなったり落ち込みやすくなったりするのは、頭痛や不眠と同様に、自律神経の乱れが原因です。
症状が40代半ばごろから強くなった場合や、今まで気にならないような些細なことでイライラしたり、落ち込んだりするようになった場合は更年期が関係している可能性があります。
更年期による精神的な症状は50代後半ごろには自然と落ち着くことが多いです。
しかし、人との関わりが憂鬱になったり朝起きられなくなったりするなど、日常生活に支障をきたす場合には、うつ病や適応障害など他の病気の可能性があります。
自己判断せず、病院を受診することがおすすめです。
■更年期症状で行くべき診療科
更年期症状でかかるべき診療科は、婦人科や専門外来(更年期外来・女性外来)です。
症状によって、診療科を変える必要はありません。
これらの診療科では、問診や血液検査などによって、更年期症状かどうか診断することができます。
とくに気になる症状がある場合には、先にその症状の専門科を受診するのもよいです。
「更年期症状だけで受診してもいいのか」と悩む必要はなく、気になった際には、悪化する前に病院へ相談しましょう。
■更年期の諸症状には漢方薬も有効
更年期症状には、漢方薬の服用もおすすめです。
更年期症状の治療では、ホルモン補充療法や向精神薬以外に、自然由来の治療薬である漢方薬の使用も標準治療のひとつとなっています。
更年期には、女性ホルモン分泌量の急激な減少による自律神経の乱れや血行不良によって、さまざまな症状を引き起こすと考えられています。
漢方薬は、更年期症状の原因となる、血流や自律神経、ホルモンバランスの乱れを整えることで、心身の不調の根本改善を目指します。
具体的には、更年期によく起きるイライラや気分の落ち込み、不眠などの精神症状や頭痛や関節痛などの身体症状、ほてりなど血管に関する症状にアプローチします。
更年期によくある症状には、次の漢方薬がおすすめです。
頭痛には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血を補い、血の巡りをよくします。血行不良が原因で、頭重が起こりやすい方におすすめの漢方薬です。
不眠には柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
エネルギーの巡りをよくしてからだにこもっている熱を冷ますことで気分を落ち着かせるため、不眠症や不安などさまざまな精神症状に用いられます。
イライラや気分の落ち込みには加味逍遙散(かみしょうようさん)
自律神経のバランスを整え、イライラや不安などの精神的な症状の改善に役立ちます。
ほてり・のぼせには桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体内の血の巡りが悪くなって、上半身、とくに顔面に血が停滞している状態のときに用いられます。
慢性的に更年期症状が気になる場合には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
漢方薬は、からだの状態や体質に合った生薬を選ぶことが重要です。体質に合わないものを選んでしまった場合、効果が得られないだけでなく、副作用が生じる可能性もあります。
更年期にはさまざまな症状が複雑に出現しますが、自分で適切な漢方薬を選ぶのは難しいため、医師や薬剤師に相談するのがベストです。
■更年期の見極めで迷ったら専門医に相談を
女性ホルモン分泌量の低下による更年期症状にはたくさんの種類があります。
今回紹介した見極めのポイントを参考にしつつ、からだの声に耳を傾けましょう。
症状がつらいときは決してガマンせず、悪化する前に病院の受診や漢方薬を試してみてください。上手に更年期と付き合っていきましょう!
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:碇純子(いかりすみこ)さん プロフィール】
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師/修士(薬学)/博士(理学)。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いから、オンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
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