気温に関係なく、汗が止まらないというお悩みを抱えていませんか? 滝のような汗や、カーッとからだが熱くなるほてりは、更年期が関係しています。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師の碇純子さんに、更年期の汗やほてりについて教えていただきました。
■更年期の汗やほてりのメカニズム
女性は、50歳頃に閉経を迎えます。閉経前後の10年間を「更年期」と呼びますが、更年期の女性にはさまざまな心身の不調があらわれます。
汗やほてりも更年期症状の特徴です。これは、女性ホルモンの変動と関係があります。
更年期を迎えた女性は、女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌が減少し、自律神経の不調があらわれます。
暑くもないのに汗をかいたり、上半身がいきなりほてったりするという症状は、「ホットフラッシュ」という更年期によくみられる不調のひとつです。
自律神経の調整がうまくいかないと、血管の収縮や拡張のコントロールも正常に行えず、異常な発汗やのぼせが起こります。
■更年期の汗やほてりは、生活習慣の影響も大きい
更年期世代の女性の汗やほてりの根本的な原因は、エストロゲンの急激な減少ですが、実はそれ以外にも原因があります。
そのひとつが生活習慣です。運動不足、睡眠時間の不足、不規則な食生活、ストレスの蓄積など、日々の生活習慣の乱れによって、汗やほてりの症状は悪化します。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」という2種類があり、お互いのバランスがとても大切です。この切り替えがうまくいかなくなると、心身の不調にもつながります。
■更年期の滝汗を和らげるおすすめ習慣4つ
更年期の汗やほてりを改善するセルフケアを4つご紹介します。
毎日の生活のなかで簡単に行えるものばかりなので、ぜひ参考にしてください。
(1)1日20分以上の有酸素運動
有酸素運動は、自律神経を整えるのにおすすめの方法です。
代表的な有酸素運動は、ウォーキング、ジョギング、水泳などがあります。
たとえばウォーキングなら、20~50分くらいを目安に運動しましょう。「毎日50分歩くのはきついかも……」という人は、軽めの散歩でもかまいません。
炎天下や雨天の日など、外でウォーキングができない日は、屋内で足踏みをするだけでも同じ効果が得られます。
足踏みをするときは、姿勢を正し、足をできるだけ高く上げるのがポイントです。
まずは5分間行い、1分間休んで、また5分間やってみましょう。無理なくできるようになったら、これを3セット繰り返します。これならテレビを見ながらでもできます。
重要なのは、意識的に運動を習慣づけること。まずは毎日からだを動かすことを目標にしましょう。
(2)最低6時間の睡眠
毎日の睡眠は、自律神経の安定にとても大事です。起床と就寝の時間を決め、最低6時間の睡眠をとりましょう。
ぐっすりと眠りにつくには、朝起きたときに陽の光を浴び、体内時計を正常にすることです。
日光を浴びれば、セロトニンという物質が分泌されます。セロトニンは14~16時間後にメラトニンという睡眠物質に変わるため、夜にスムーズに入眠できるようになります。
家から出ない日でも、朝に陽の光を浴びるだけで、規則的な生活を送りやすくなります。
(3)脂質・糖質の摂り方に注意
「脂質=太る」という考えから制限しすぎてしまう人もいますが、女性ホルモンのエストロゲンを作り出すには、脂質が必要不可欠です。
脂質摂取のポイントは、オメガ3といわれるDHAやEPA・α-リノレン酸などの不飽和脂肪酸をきちんと摂取すること。
DHAやEPAは青魚に、α-リノレン酸はアマニ油・えごま油などに多く含まれ、血液の流れをよくするはたらきもあります。
糖質も、ホルモンバランスや体質、睡眠などに深く関わります。糖質を摂りすぎると、血糖値を下げようとインスリンがはたらき、さらにアドレナリン・ノルアドレナリンが分泌されます。
血糖値の変動は自律神経を乱す原因になるため、糖質の過剰摂取は更年期症状にも影響を与えるのです。
また、糖質を過剰に制限すると、ホルモンバランスの乱れや、からだや脳のエネルギー不足の原因になります。
一汁三菜のようにさまざまなものをバランスよく食べることが、自律神経の安定と更年期症状の改善につながります。
(4)毎日1回のリラックスタイム
自律神経を整えるためには、意識的にリラックスできる時間を設けることも大事です。たとえば、以下のようなリラックスタイムを作ってみましょう。
・好きな音楽を聴く
・アロマを焚く
・散歩をする
・ゆっくりと深呼吸をする
気分転換になる行動なら何でも構いません。短時間でもいいので、気分を変えられる時間を意識的に作ることで、心の余裕をとり戻し、ストレスを軽減できます。
■更年期の汗やほてりには漢方薬もおすすめ
「いろいろ試したが、汗やほてりが気になる」「セルフケアだけではなかなか効果が感じられない」
そんな人には漢方薬がおすすめです。漢方薬は、慢性的な症状の改善を得意とします。体質から変えていくので、女性ホルモンの変動からくるからだの不調に対処できる漢方薬も多くあります。
汗やほてりなどの、ホットフラッシュ症状のケアができる漢方薬をご紹介します。
更年期の汗やほてりにおすすめの漢方薬
加味逍遙散(かみしょうようさん)
女性ホルモンの変動にともなう月経障害や更年期障害に効果がある漢方薬です。からだのエネルギーの流れを整えるため、のぼせなどのホットフラッシュ症状にも使われます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血行や栄養の滞りを解消し、流れをよくすることで婦人科系の疾患を改善する漢方薬です。下半身が冷えてのぼせやすい人に処方されます。
漢方薬は、体質との相性がとても重要です。同じ症状でも人によって処方すべき漢方薬が異なるのが難しいところで、正しい診断と処方がセットになって初めて漢方薬は効果を発揮します。
副作用のリスクは、西洋薬に比べると低いものの、漢方薬の服用で絶対に起こらないわけではありません。漢方薬は、必ず医師や薬剤師などの漢方のプロに体質診断と処方を行ってもらいましょう。
■更年期の汗やほてりはセルフケアで緩和できる
更年期の汗、ほてりといったホットフラッシュ症状は、閉経前後の女性ホルモンの変動が自律神経に影響を与えることであらわれますが、日々の生活習慣の見直しなどで軽減できることもあります。
悩みすぎず、おおらかな気持ちで過ごすことも大切です。自分に合った改善方法を見つけて、更年期とうまく付き合っていきましょう。
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:碇純子(いかりすみこ)さん プロフィール】
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師/修士(薬学)/博士(理学)。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いから、オンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
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