40代や50代になってひざの痛みが気になりはじめていませんか?
そのひざの痛みを放置すると、「変形性ひざ関節症」へと悪化する可能性があるため、注意が必要です。
今回は横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、変形性ひざ関節になりやすい人の特徴や、ひざの痛みへの対策について教えていただきました。
■加齢でひざが痛くなる原因
40代以降の女性が感じるひざの痛みは、変形性ひざ関節症のはじまりのサインかもしれません。
変形性ひざ関節症とは、年齢とともに関節内の軟骨がすり減ることで起こるひざの病気です。
男性よりも女性に多く、40〜50代、60代以上へと年齢を重ねるに従い発症する人が多くなります。
■加齢でひざが痛くなりやすい人の特徴
40代以降にひざの痛みを感じはじめたら、変形性ひざ関節症を予防してひざの痛みが悪化しないようにすることが大切です。
加齢によってひざが痛くなりやすい人の特徴をご紹介します。思い当たる方は、変形性ひざ関節症の予防を心がけましょう。
(1)肥満の人
肥満の人は、ひざにかかる負担が大きくなるため、加齢とともにひざが痛くなりやすい傾向があります。
体重の増加が原因でひざが痛くなると、ひざの痛みで運動を避けるようになります。運動不足による体重増加で、ひざの痛みが悪化する恐れがあります。
40・50代で肥満傾向にある人は、ひざの痛みが悪化する前にダイエットをはじめましょう。
(2)運動をする習慣がない人
運動をする習慣がない人は、太ももの筋肉やひざ関節の柔軟性が低下して、ひざに痛みを感じやすくなります。
太ももの筋肉量が低下すると、ひざ関節が不安定になって関節が傷つきやすくなります。
また、ひざ関節の柔軟性が低下すると、ひざの曲げ伸ばしができなくなり、ひざの周囲の組織に負担がかかり、痛みを感じやすくなるのです。
(3) ひざに負担がかかる仕事をしている人
しゃがむ、重い荷物を運ぶ、立ち上がるといった動作を繰り返す仕事は、ひざに負担がかかりやすいです。
変形性ひざ関節症が進行して痛みが出やすくなる可能性があるので、これらの動作が多い人は、日頃から痛みがあるかどうか注意しましょう。
■加齢によるひざの痛みを予防するには
加齢によるひざの痛みを予防するためには、40代や50代から生活習慣を見直したり、セルフケアを実践したりすることが大切です。
(1)生活習慣を見直す
最近、体重の増加が気になっている場合は、カロリーの摂取量を抑え、ウォーキングや水泳などの有酸素運動でエネルギーを消費するようにしましょう。
すでにひざの痛みを感じる場合は、水泳や水中ウォーキングなどのひざへの負担が少ない運動がおすすめです。
(2)筋肉トレーニングをする
運動習慣のない40代以降の女性は筋力が衰えやすいので、日常生活に筋肉トレーニングの時間を設けて筋力が衰えないようにしましょう。
ひざの痛みを予防する場合は、次のような大腿四頭筋と呼ばれる太ももの筋肉トレーニングがおすすめです。
太もも(大腿四頭筋)の筋肉トレーニング
(1)椅子に座って足を伸ばして、足首を交差させた状態でひざを伸ばします。
(2)上の足は下向きに力を入れ、下の足は上向きに力を入れて両方の足を押し合いながら5秒間キープします。
(3)足の上下を入れ替えて、(2)と同じように両足を押し合います。
(4)(1)~(3)を5回繰り返します。
以上を1セットとして、1日に2~3セットを続けてみてください。ひざに痛みを感じる場合は、無理をせずにトレーニングを中止しましょう。
(3)ストレッチをする
ひざに負担のかかる仕事やスポーツをする人は、ひざを使った後にストレッチをしてケアするといいでしょう。
大腿四頭筋が固くなると、ひざが痛くなりやすくなります。次の手順で、太もものストレッチを実践してみてください。
太もも(大腿四頭筋)のストレッチ
(1)壁に向かって立ち、左手を壁につきます。
(2)右側のひざを曲げて右手で右側の足首を持ちます。
(3)右足のつま先をお尻に近づけながら、ひざをさらに曲げます。
(4)太ももの前側に伸ばされている感覚があれば、その状態で20秒ほどキープします。
(5)右足をおろしたあと、今度は右手を壁について左側のひざで(1)~(4)を繰り返します。
(1)~(5)を1セットとして、1日2~3セットを習慣にしてみてください。
■加齢によるひざの痛み対策には漢方薬もおすすめ
加齢によるひざの痛み対策には、ひざへの負担が少ない生活を心がけながら、漢方薬を取り入れるのもおすすめです。
ひざの痛みの解消には、関節や筋肉の痛みを取る鎮痛作用に加えて、以下のような働きのある生薬を含む漢方薬を選びましょう。
・加齢による体力の衰えを補い痛みを和らげる
・血流をよくして痛みを改善する
・水分の循環をよくしてひざの負担となる水太りやむくみを解消する
変形性ひざ関節症に悩まされている人に、よく利用される漢方薬を下記の通りご紹介します。
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
からだを温めて、表面の気(生命エネルギー)の流れをよくすることで、重だるい痛みに働きかけ、関節痛、神経痛などに用いられます。冷えのある人におすすめです。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
水分代謝を促し関節にたまった余分な水分を取り去ることで、肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみに用いられます。水太りで疲れやすい人におすすめです。
慢性的にひざの痛みが気になる場合には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
また、漢方薬は自分の体質に合ったものを選ぶことが大切です。体質に合わない場合、十分な効果を得られなかったり、副作用が生じたりすることもあります。初めて飲むときは、漢方に精通した医師、薬剤師などにご相談ください。
最近はオンラインで漢方薬の専門家に、自分に合った漢方薬を気軽に無料相談できるサービスもありますので、試してみるのもいいでしょう。
■放置は禁物!筋肉トレーニングやストレッチを習慣化しましょう
40代や50代で起こるひざの痛みを放置すると、変形性ひざ関節症になる恐れがあります。変形性ひざ関節症を予防するためには、太ももの筋肉トレーニングやストレッチを生活に取り入れることがおすすめです。
ひざへの負担を減らすように心がけて、変形性ひざ関節症の悪化を予防しましょう。
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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