鏡を見て、自分の顔が老けて見えると驚いてしまったことはありませんか?
老化には個人差がありますが、「老け見え」の理由には閉経が関係しています。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、「閉経後の老化」について教えていただきました。
■閉経後の「老け見え」の理由
女性が閉経を迎えると急に老けて見えてしまう理由は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量にあります。
通常エストロゲンは、肌の角質層の水分を保つ、肌のハリに大きな影響を与える真皮層のコラーゲン・エラスチンなどの生成を促す、などの働きがあります。
エストロゲンのひとつ、「エストラジオール」はとくに重要で、分泌量が少ないと、たとえ20代でもシワやたるみの原因になるのです。
そして、閉経後にはエストラジオールがほぼ分泌されなくなり、これは閉経後の老け見えにつながります。
■閉経後に老化が加速する人の特徴3つ
続いては、閉経後に老化が加速するタイプの特徴を3つご紹介します。
(1)食生活が偏っている
偏食は、老化に影響する可能性があります。
とくに加工食品には、塩、砂糖、脂肪やデンプンが多く含まれており、「1日3食以上食べると慢性疾患を患うリスクが増加する」ということが最近の研究で明らかになっているのです。
また、加工食品の摂取頻度が高い人は間食が多く、食物繊維やタンパク質、野菜や果物のような自然食品を摂取していないタイプが多いとされています。
このような食事バランスの崩れは、老化の原因や健康を害する原因になっている可能性があります。
(2)運動をほとんどしない
慢性的な運動不足は、足腰や心肺機能を低下させるだけでなく、食欲の減退や、運動器症候群(ロコモティブシンドローム(通称ロコモ))にもつながります。
また、心身の老い・衰えを意味する「フレイル」のリスクも上がり、どんどん老いが進行してしまうのです。
ジョギングなどの有酸素運動は、脳の萎縮の進行を防ぐといわれていますし、運動をほとんどしないと、脳の老化も早く進行してしまいます。
(3)寝る前にスマホを見ている
スマホやテレビの画面から発せられているブルーライトは、紫外線の次に波長が短い光です。
とても強い光なので、夜間、寝る前にスマホを見てブルーライトを浴びてしまうと、体内時計のリズムが崩れ、寝付きが悪くなる原因になります。
夜間にきちんと睡眠をとることは、成長ホルモンの分泌量を増やすために必要です。
骨や筋肉を作るのに重要な成長ホルモンが十分に分泌されないと、老化につながる可能性があります。
■閉経後の老化の加速を食い止めるには
閉経後の老化を防ぐために必要な3つのポイントをまとめました。
(1)食生活を見直す
食生活の偏りをなくすのはもちろん、老化防止のためには積極的に摂取したい栄養素があります。
DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、タンパク質です。
DHAやEPAは脳細胞の活性化が期待でき、認知機能の維持にも重要な脂肪酸です。
また、タンパク質は筋肉や臓器を構成する栄養素であり、タンパク質の栄養状態がよいほど老化速度が遅いという研究結果もあります。
DHA、EPA、タンパク質が豊富に含まれる食材
食事バランスを意識しながら、これらの栄養素を積極的に摂取しましょう。
DHA
サバ、マグロ、サンマ、ブリ
EPA
イワシ、サバ、アジ
タンパク質
牛乳、たまご、豚もも肉、白米、納豆
(2)適度に運動する
40歳以降に必要なのは、過剰な運動よりも適度な運動です。目安としては、1日約8000歩を目指しましょう。
運動不足の人がいきなり激しいランニングを始めると負荷が大きすぎ、負担になる場合があります。とくに、ひざが悪い人は無理にジョギングをするのは避けましょう。
そのほかの運動としては、スクワットのような室内でできる筋トレがおすすめです。10回を1セットとして、1日3回ほど習慣的に行いましょう。
(3)睡眠の質を高める
寝る前にスマホを見る、パソコンを使うなどは避け、就寝前のリラックスタイムを作りましょう。
また、深く眠るためには、寝室の環境作りも大切です。適切な高さの枕、寝やすい寝具を選びましょう。
リラックスするには、アロマもおすすめです。寝室には緊張やストレスを和らげるラベンダー、リフレッシュの効果もあるベルガモット、心を落ち着けるサンダルウッドなどが合います。
■いつまでも若々しくいたいなら漢方薬もおすすめ
閉経後も若々しく健康的なからだを維持したい場合は、漢方薬もおすすめです。
漢方薬は、ホルモンバランスや血流、自律神経の乱れを整えることで、心身の不調を根本的に改善することを目指します。
また、肌のターンオーバーの乱れを改善し、潤いを補い、若々しい見た目を維持するなど、アンチエイジングとしての漢方薬も注目されています。
閉経後の老化が気になる人におすすめの漢方薬
八味地黄丸(はちみじおうがん)
生命力にかかわる「腎」の働きを高める漢方薬です。加齢によって低下した腎機能を回復させ、老化速度の抑制を目指します。下半身が冷えやすく頻尿の傾向がある人におすすめです。
当帰飲子(とうきいんし)
血流を改善し、肌に潤いや栄養を与える漢方薬です。皮膚の乾燥やかゆみ、冷えなどの症状が目立つ人におすすめです。
老けにくいからだを目指すためには、中長期的に漢方薬を服用しましょう。また、漢方薬を選ぶ際には自分の体質に合ったものを選ぶことが大切です。
体質に合わない場合、十分な効果を得られないだけでなく、副作用が生じることもあります。購入時にはできる限り漢方に精通した医師、薬剤師などにご相談ください。
最近はオンラインで漢方薬の専門家に、自分に合った漢方薬を気軽に無料相談できるサービスもありますので、試してみるのもいいでしょう。
■閉経後も若々しさをキープしよう
老いは突然訪れるものではなく、今までの生活習慣の積み重ねが影響します。とくに今回解説したように、食事、運動、睡眠は若さと健康を保つために重要な三本柱です。いつまでも若々しさをキープするために、不摂生を避け、健やかな毎日を送りましょう。
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
【前回の記事】
・閉経前後の不調を乗りきる!40・50代が知るべきこと&対策
・更年期の「いびき」に要注意!放置してはいけない理由
・更年期は肌質が急変する!?40・50代がすべき肌ケア
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・閉経後は何が変わる?40・50代から備えるべきこと
・更年期に◎40・50代がすべきデリケートゾーンケア
・更年期の悩みに◎摂るべき食材と効果的な食べ方
【参考】
※加工食品を食べすぎると老化が加速…最新の調査研究で。がんや糖尿病のリスクも上昇 – Business Insider Japan
※動くことは脳を鍛えること【認知症予防】 – 国立長寿医療研究センター
※老化予防のための睡眠 – 長寿科学振興財団
※記憶力を維持する!EPA・DHA効果とは? – ニッスイ
※タンパク質摂取の重要性 健康長寿の「食と栄養」 – アクティブシニア「食と栄養」研究会
※身体活動・運動 健康日本21 – 厚生労働省