お茶の中でも、日本で特に親しまれているのが緑茶です。風味と香り豊かな味わいが特徴で、健康面や美容面で効果が期待できることが分かっています。
緑茶に含まれるさまざまな成分と期待できる働きや、美容効果のある緑茶を使ったスキンケア、緑茶を飲む適正量についてご紹介します。
■目次
1.緑茶の成分
(1)渋み成分のカテキン
(2)苦み成分のカフェイン
(3)旨み成分のアミノ酸
(4)五大栄養素のビタミン
2.緑茶の健康面での働き
(1)虫歯菌の増殖を抑える
(2)ピロリ菌の増殖を抑える
(3)抗ウイルス作用
3.緑茶の美容面での働き
(1)ダイエット
(2)アンチエイジング
4.美容に役立つ緑茶を使ったスキンケア
(1)緑茶洗顔の方法
(2)緑茶パックの作り方
5.緑茶の適正な摂取量
(1)緑茶の飲みすぎに注意
(2)一日一リットルを目安に
■記事監修:医師 プロフィール
鈴木稚子 先生
1994年東京慈恵会医科大学医学部卒業
同大学皮膚科学教室、国立大蔵病院皮膚科 臨床研究部を経て、2017年に六本木スキンクリニックを開院
医学博士 日本医師会スポーツ認定医 日本温泉気候物理医学会 温泉療法医 日本旅行医学会認定医
女医+(じょいぷらす)所属
■1.緑茶の成分
緑茶には、カテキン、カフェイン、アミノ酸、ビタミン、サポニンなどの成分が含まれています。
(1)渋み成分のカテキン
中でもよく知られているのがカテキンです。
カテキンは、ポリフェノールの一種で、緑茶の渋みの主成分であり、古くからタンニンと呼ばれているものです。
カテキンは成長によって含有量が異なり、一番茶よりも二番茶に多いというように、茶期(茶の生産時期)によって違いがあります。また、成熟した3枚目から4枚目の葉より、1枚目から2枚目の若い芽に多く含まれることが分かっています。
また、玉露のような光の当たらない環境で栽培されるものは、カテキンの生成が抑制されています。
(2)苦み成分のカフェイン
お茶の苦みに寄与している成分のカフェインは、若い芽に多く含まれています。茶期によって含有量の差が生じることはほとんどありません。
(3)旨み成分のアミノ酸
緑茶の旨みを引き出す成分であるアミノ酸も、緑茶の主な成分です。
緑茶に含まれるアミノ酸のうち、半分以上がテアニンと呼ばれるものです。テアニンは、初期の若い芽に多く含まれています。
その他、グルタミン酸のほか、アスパラギン酸やアルギニンなどのアミノ酸が数種類含まれています。
(4)五大栄養素のビタミン
緑茶にはビタミンがほかの食品と比べても特に多く含まれています。
ビタミンは13種類あるとされており、糖質、脂質、たんぱく質、ミネラルと並ぶ五大栄養素のひとつで、人間にとって欠かせない成分です。
そのほか、強い苦みとエグみを持ち泡立つ成分サポニンも、お茶全般に共通して含まれています。
■2.緑茶の健康面での働き
緑茶でうがいをすると風邪の予防になるという話を耳にしたことがあるかもしれませんね。
緑茶の健康効果についての研究は進行しており、さまざまな病気の予防につながることが分かっています。
(1)虫歯菌の増殖を抑える
「ミュータンス菌」と呼ばれる虫歯を作り出す原因菌が歯の表面に付着すると、酸を生成します。そして歯の表面のエナメル質を酸によって溶かすことで虫歯になります。
ミュータンス菌による酸の生成を抑えることが、虫歯の予防につながります。そこで効果的なのが緑茶に含まれるカテキンです。カテキンは、虫歯菌の増殖を抑えるほかに、歯垢が歯に付着するのを防ぐ働きをもっています。
また、カテキンは強い殺菌、抗菌効果も持っています。
(2)ピロリ菌の増殖を抑える
カテキンの殺菌作用は虫歯だけにとどまりません。食中毒を引き起こすO-157や、胃潰瘍や胃がんの原因といわれているピロリ菌の増殖を抑える働きもあることが分かっています。
カテキンの「吸着性が高い」という性質は、ピロリ菌がたんぱく質と結びつくことを防ぎ、細菌の活動を抑制し、細胞そのものを破壊する効果にもつながります。
(3)抗ウイルス作用
カテキンには抗ウイルス作用もあることから、冬場に大流行するインフルエンザの予防効果も期待できます。
インフルエンザにおいても、カテキンの吸着性が高いという性質によって、ウイルスのとげに吸着し、ウイルスが体内へ侵入することを防いでいると考えられています。
健康になりたい方は、緑茶を飲んで強い身体づくりを心がけましょう。
■3.緑茶の美容面での働き
緑茶には、ダイエット、アンチエイジングといった美容面でも注目されています。
(1)ダイエット
そのひとつがダイエットです。緑茶に含まれるカテキンには脂肪の吸収を緩やかにして、血行や代謝をうながす働きがあります。
さらにカフェインは脂肪分解のサポート役として、カテキンと同様に血行や代謝を促進し、脂肪を燃焼しやすくします。カフェインには利尿作用もあるので、老廃物の排出やむくみの改善にもつながります。
緑茶は、飲むことでダイエットしやすい体へと導いてくれるだけでなく、カロリーもありません。そのため気軽に飲むことができます。コーヒーや紅茶のように砂糖やミルクといったカロリーのあるものを混ぜなくても、そのままで美味しくいただけるのもうれしいポイントですね。
運動前に飲むものは、冷たい緑茶でなく温かい緑茶の方が、より新陳代謝を高めるのに効果的です。
また、食前に飲むことで満腹感がでて食べ過ぎ防止に、食後に飲むことで脂肪や糖質の吸収を緩めてくれます。
(2)アンチエイジング
もうひとつ、緑茶はアンチエイジングにも効果的です。緑茶にはさまざまなビタミンがたっぷり含まれています。
その中のひとつビタミンCはフルーツにも多いとされていますが、緑茶3杯のビタミンCとりんご1個分のビタミンCが同じということですから、緑茶にも多いことが分かります。ビタミンCは、シミやそばかすを作り出す原因となるメラニン色素が肌にとどまるのを阻止。また肌内部にあるメラニン色素も、ビタミンCによって薄くします。
また、緑茶の中に含まれるカテキンには抗酸化作用があり、活性酸素を除去する効果も期待できます。しわ、たるみ、肌のくすみなどの肌老化を抑える働きがあります。
■4.美容に役立つ緑茶を使ったスキンケア
緑茶は飲むものというのが一般的な考え方ですが、肌に直接使用することで美容効果を発揮するため、スキンケアにも用いられています。
(1)緑茶洗顔の方法
その中のひとつが緑茶洗顔です。緑茶をいれて、水またはぬるま湯で2倍から3倍に薄めて使用。クレンジングや洗顔をした後の仕上げに用いられます。
緑茶洗顔では、緑茶に含まれるカテキンの殺菌作用によって、ニキビの原因となるアクネ菌を殺菌。ニキビが酷くなるのを防いでくれます。
また、緑茶にはビタミンCも多く含まれることから、シミを薄くする美白対策も期待できます。
(2)緑茶パックの作り方
緑茶と小麦粉を使った緑茶パックは、自宅で手作りできます。
緑茶は、ミキサーやすり鉢で粉末状にしましょう。小麦粉と緑茶が2:1の分量になるようにして混ぜたら、水を入れて硬さを調節します。
顔に塗ったら、5分から15分そのままの状態にしましょう。肌を痛めないためにも、完全に乾く前に水で洗い流します。
また、顔に直接塗る前に、腕などの目立たない場所でパッチテストを行い、アレルギー反応が起きないかどうかを確認してから行うようにしましょう。
緑茶パックでは、ビタミンCだけでなく、粉末状の茶葉に含まれる葉緑素のクロロフィルが、肌細胞の生まれ変わりをうながしてくれます。
美白のほかしわ、シミ、肌の傷も修復します。緑茶洗顔も緑茶パックも、市販の緑茶を使ってできるので、ぜひ試してみてください。
■5.緑茶の適正な摂取量
(1)緑茶の飲みすぎに注意
緑茶には、カテキンなどの栄養素が数多く含まれており、病気予防やダイエット、アンチエイジングなどにもいい働きが期待できることを上記で説明しました。
しかし、いくら美容や健康によいとはいっても、飲み過ぎてはいけません。緑茶の成分の中には、摂りすぎることで身体の不調につながるものもあるのです。
緑茶の成分の中にあるカフェインは、集中力アップなどいい影響もあるものの、取りすぎると胃が荒れる原因になります。
またタンニンは、鉄の吸収を妨げることがあり、貧血の人の場合、緑茶を飲み過ぎると症状が悪化するケースも考えられます。
シュウ酸は、腎臓でカルシウムと結合することで結石になるため、尿路結石の原因になることもあります。
(2)一日一リットルを目安に
それでは、緑茶の適正な摂取量はどのくらいなのでしょうか?
緑茶の種類や濃さ、飲む人の体格や体質によって、身体の不調につながる成分の摂取量は大きく左右されるため、どれくらいとれば防げるとは一概にいえません。
あくまでも目安としてですが、摂取量は一日一リットル程度が適正量と考えられます。チョコレートやコーヒーなどカフェインの入った食べ物や飲み物を多く摂取している場合には、少し控えめにするといいでしょう。
健康、美容の効果は、たくさん摂取するほど効果が得られるというものではありません。緑茶の適正な摂取量を守るようにしましょう。
緑茶には、健康や美容にいい成分がたくさん入っています。ただしたくさん飲めばいいというものではなく、適正な量を守ることが大切です。
飲む以外に、スキンケアとして肌に直接使用するという方法もあるので、いろんな取り入れ方を試してみてください。
(美容ライター/子育てママライター 杉谷敦子
スキンケアブランドでビューティーアドバイザーをした経験を活かし、美容ライターとして活動する3児のママ。)
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