「40代、50代に入ってからおならが多くなってきた」「おならを我慢すると腹痛が起きてつらい」……このように悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
実は、更年期世代はからだの変化によって、おならが出やすくなるといわれています。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、更年期でおならが多くなる原因と対処法について教えていただきました。
■更年期におならが増える理由とは
更年期におならが増える原因は、ホルモンバランスの変化です。
女性ホルモンが減少すると自律神経が乱れやすくなり、腸の機能や筋力が低下します。
排便を促す腸のぜん動運動が低下すると便が硬くなり、腸の中にたまって悪玉菌が増えます。悪玉菌が増えると、臭いガスが発生してしまうのです。
さらに、筋力低下による「ぽっこりお腹」も、ガス発生の要因です。
内臓下垂や骨盤の歪みによりお腹が出ている場合、腸が変形して排便がスムーズにいかず、便秘がちになっておならが増えてしまいます。
■おならの悩みは我慢してはいけない!
誰しも、人前でおならをするのは気が引けます。しかし、おならを我慢したり、ガスだまりの症状を放置したりするのはよくありません。
なぜなら、下記のような悪影響があるからです。
・口臭・体臭の原因になる
・腹痛が起きる
・腸内環境が悪化しておならが出やすくなる
おならのガスは排出されずにいると、腸管から再吸収されて全身に運ばれ、口臭や体臭として臭いを発する原因となります。
また、我慢をしてガスが腸内にたまると、腹痛が起きたり腸内環境が悪化したりして、よりおならが出やすくなる悪循環に陥ることもあるのです。
おならに関する悩みは、恥ずかしさから相談しにくく我慢しがちですが、放置すると悪化したり別の症状が出たりする可能性もあるので、早めに対処することが大切です。
■更年期のおならが気になるときのセルフケア
更年期のおならを解消するためにできるセルフケアを4つご紹介します。
(1)正しい姿勢を心がける
正しい姿勢を心がけることで、おならの原因となる便秘を予防できます。
背中が丸くなる姿勢は腹圧を上昇させ、便秘につながるからです。
座った姿勢は姿勢が崩れやすいので、背筋をまっすぐ伸ばし、両足の裏がしっかりと床についた状態をキープしましょう。
さらに、体幹や下半身の筋力を鍛えることで、立っている状態・座っている状態の正しい姿勢を保てるようになります。
片方の脚で立てない方、靴下を立ったまま履けない方は体幹が衰えているため、プランクやピラティスがおすすめです。
座った状態から片足を上げて立ち上がれない方は、下半身の筋力が衰えているため、スクワットで下半身の筋力を強化しましょう。
(2)食事の見直しを行う
食事の内容や食べ方を見直すことも、おなら・便秘の解消に効果的です。
ごぼうなどの不溶性食物繊維は便をかさ増し、藻類などの水溶性食物繊維は便を柔らかくするため、便秘対策ができます。
食物繊維以外にも、腸内環境を整えるヨーグルトや発酵食品、乳酸菌の働きをサポートするオリゴ糖もおすすめです。
また、食べるスピードも見直してみてください。
早食いは余分な空気を飲み込みやすくなります。飲み込んだ空気は腸内でガスに変わり、おならの増加につながります。
しっかり咀嚼(そしゃく)し、ゆっくり食べることで、余分な空気を飲み込むのを防ぎましょう。
(3)運動習慣をつける
おならを減らすには、便秘をしないことが重要です。
筋力の衰えは、便秘の要因のひとつ。排便に必要な筋肉を鍛えて、規則正しい自然なお通じを目指しましょう。
排便には、腹筋と太ももの付け根にある筋肉が関係しています。
ウォーキングやスクワット、階段の昇り降り、スーパーが家から近い場合は歩いて向かうなどして、運動量を増やしましょう。
また、運動とは”負荷をかけずに意図的にからだを動かすこと”なので、家事も運動に含まれます。
「いつもより大きく足を踏み出し、腕を大きく動かして掃除機をかける」「食器類を下の棚に直すときに深くしゃがむ」といったことも、運動量の増加につながります。
(4)お腹を温める工夫をする
お腹が冷えていると腸管の動きが悪くなり、腸内にガスがたまりやすくなるため、お腹を温める工夫を徹底しましょう。
湯船にしっかり浸かるのはもちろん、お腹が冷えにくい下着や腹巻を選ぶのも効果的です。
シルクやコットンなどの保温性の高い素材を選んだり、お腹をすっぽり覆うショーツや腹巻を取り入れたり、工夫をしてみてください。
■ホルモンバランスの乱れによるおならには漢方薬も試してみて
ホルモンバランスの乱れによるおならの解消には、漢方薬もおすすめです。
更年期のおならの悩みには、「お腹を温めて腸の動きを正常化する」「消化・吸収機能を整えて、ガスだまりや便秘を改善する」「自律神経のバランスを整え、ストレスにより低下した腸の機能を回復する」といった働きのある漢方薬を選び、根本改善を目指します。
おならの悩みにおすすめの漢方薬
大建中湯(だいけんちゅうとう)
疲れやすくてお腹が冷え、ガスがたまりやすく急に腹痛が起こる方におすすめです。
平胃散(へいいさん)
胃や腸にガスがたまってお腹がはり、げっぷやおならが多い方におすすめです。
慢性的におならや便秘が気になる場合には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
■更年期のおならは対策できる!
更年期のおならは、ホルモンバランスの乱れによる胃腸機能の低下や筋力低下によって起こります。
運動や食事を見直して腸内環境を整えたり、漢方薬を取り入れたりすることで対策可能です。
できることから始めて、お腹の調子を快適に整えていきましょう!
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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