自分では気づかないいびき。40・50代になって、家族やパートナーから「いびきがうるさい……」と言われたことはありませんか?
実は、いびきも更年期症状のひとつなのです。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、更年期以降にいびきをかきやすくなる理由と、いびきの対策方法について教えていただきました。
■更年期以降にいびきをかきやすくなる理由
更年期を迎える40代以降、いびきに悩む女性が増えてきます。
なぜ更年期以降にいびきをかきやすくなるのか、その理由を2つご紹介します。
(1)女性ホルモンの減少
更年期を迎えると、プロゲステロンとエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが減少していきます。
プロゲステロンには気道を広げる働きがありますが、更年期に入ると分泌量が減少。気道を広げる働きが衰えることで気道が狭くなってしまうため、いびきをかきやすくなるのです。
(2)加齢による筋肉量の低下・肥満
加齢による筋肉量の低下や肥満も、いびきを引き起こす原因になります。喉の筋力が低下すると、気道がふさがりやすくなるためです。
また、筋肉量が落ちると基礎代謝が落ち、体重が増加しやすくなります。喉の周りに脂肪がつくと気道が狭まりやすく、いびきにつながってしまうのです。
■いびきの放置はNG!
加齢に伴うからだの変化だからといって、いびきを放置してはいけません。「睡眠時無呼吸症候群」と呼ばれる病気が隠れている可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。夜間の頻尿や日中の眠気、起床時の頭痛などの症状も伴います。
睡眠1時間あたり、呼吸が止まったり浅くなったりする回数が5回以上で、かつ、夜間の頻尿や日中の眠気などの症状を伴う場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
いびきが習慣化している場合や、いびきをかき始めてから日中に眠気を感じるようになった場合には、呼吸器内科の受診をおすすめします。
■更年期のいびき改善策3つ
病院の検査結果で異常が見られなかった場合は、寝る体勢や生活習慣を見直して改善を試みていきましょう。
ここでは、いびきを軽減する方法を3つご紹介します。
(1)寝る体勢を変える
普段仰向けで寝ている場合、枕の高さを見直したり横向きに体勢を変えたりすることで、いびきが改善されることがあります。
枕は、首筋がS字をキープできる高さを選びましょう。枕が高すぎても低すぎても、気道が狭くふさがりやすくなります。適切な高さを自分で選ぶのは難しいため、枕専門店で調整してもらうのがおすすめです。
また、就寝時の体勢を横向きに変えるのもおすすめです。仰向けで寝る場合、重力で舌が下がり、気道をふさいでしまっている可能性があります。横向きに寝ることで、舌が気道をふさぐのを回避できるかもしれません。
抱き枕を使ってからだを支えると、横向きでも寝やすくなります。
(2)減量する
毎日続けられる運動を
太り気味の場合は、減量することでいびきを改善していきましょう。
減量の目安は、体重の5%です。
激しい運動ではなく、ウォーキングやランニングなど、毎日続けられる運動で筋力の維持や肥満の解消に取り組んでみてください。
食事の調整も
減量には、適度な運動に加えて食事面の調整も重要です。
食事量を極端に減らしたり、特定の食材に偏ったりするダイエットは、筋力の低下や栄養不足を引き起こすので注意が必要です。
成人女性の1日の基礎代謝量は、1,150キロカロリーが目安です。これを基準に消費カロリーを増やしつつ、バランスのいい食事を心がけましょう。
また、アルコールの摂取もいびきの原因になりやすいため控えてください。
(3)漢方薬を飲む
更年期のいびきの改善には、漢方薬もおすすめです。漢方薬は自然由来の治療薬として、婦人科などで更年期による不調に処方されています。
前途したように、更年期のいびきの原因は、ホルモンバランスの乱れや基礎代謝の低下、肥満などが考えられます。
いびき対策には、以下のような働きを持つ漢方薬を選び、根本改善を目指しましょう。
・ホルモンバランスの乱れを整える
・血流をよくして基礎代謝を上げる
・脂肪代謝を高める
漢方薬は、心とからだ全体のバランスを整えるので、いびき以外にもさまざまな症状を訴える更年期女性に対しては、とくに有効とされています。
更年期のいびきにおすすめの漢方薬
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
滞っている血流の巡りをよくして、ホルモンバランスの乱れに働きかけます。婦人系疾患、しみなどにも用いられます。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
脂肪代謝を高めることで、ため込んだ余分な脂肪を燃焼して肥満症を改善します。
慢性的ないびきに悩んでいる場合は、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
また、漢方薬を選ぶ際には自分の体質に合ったものを選ぶことが大切です。体質に合わない場合、十分な効果を得られないだけでなく、副作用が生じることもあります。購入時にはできる限り漢方に精通した医師、薬剤師などにご相談ください。
最近はオンラインで漢方薬の専門家に、自分に合った漢方薬を気軽に無料相談できるサービスもありますので、試してみるのもいいでしょう。
■いびきが気になり始めたら迷わず受診を!
更年期のいびきには、病気が隠れている可能性があります。
「いびきの悩みで病院に行っていいのかな……」と遠慮する必要はありません。気になる場合には、呼吸器内科を受診しましょう。
また、自宅でできるいびき対策を取り入れてみるのもおすすめです。いびきのない快適な睡眠で、元気な毎日を過ごしましょう!
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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【参考】
※I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS) – 日本呼吸器学会
※肥満の食事療法 – 順天堂大学医学部附属順天堂医院
※ダイエット – 厚生労働省