閉経後は太りやすい、骨がもろくなるなど、さまざまな不調が起きやすくなる、といわれています。放っておくと病気のリスクが高まる可能性も。
そこで今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、更年期世代から受けておきたい検診について教えていただきました。
■閉経後に起きやすい不調とは?
閉経前の不調の原因は女性ホルモンが乱高下することであるのに対し、閉経後は女性ホルモンの分泌がほぼなくなることで、さまざまな病気にかかるリスクが高まるといわれています。
閉経後に起こりやすい不調とそのリスクを解説します。
血圧異常
閉経後は、女性ホルモンであるエストロゲンの低下により、血圧をコントロールしている自律神経の働きが乱れて、血圧が不安定になると考えられています。
高血圧症を発症した場合、動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞などの病気のリスクが高まります。
脂質異常症
エストロゲンにはコレステロールを減らす働きがあるため、閉経後は脂質異常症が起きやすくなります。
脂質異常症により動脈硬化が引き起こされると、心筋梗塞や脳梗塞などを発症する危険性が高まります。
骨が脆くなる
エストロゲンの急激な減少によって、骨代謝のバランスが崩れ、閉経後は骨量が1年に2%ずつ減るといわれています。
若いときに蓄えた骨の量が減少して骨が脆くなり、骨折リスクが高まります。
大腿骨の骨折は、寝たきりの状態になってしまう原因のひとつです。
肥満
エストロゲンには脂肪の燃焼を促す働きがあります。
エストロゲンの減少により脂肪が燃焼しにくくなってしまったり、相対的に男性ホルモンの割合が増加したりすることで、皮下脂肪だけでなく内臓脂肪もつきやすくなります。
肥満は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の大きな要因であるだけでなく、がんのリスクを高めることもわかっています。
■更年期女性におすすめしたい検査3つ
閉経後の病気を予防するためには、早期発見・早期治療が大切です。
更年期に入ったら、受けておいたほうがよい検査をご紹介します。
1年に1回必ず健康診断を受ける
基本的なことですが、健康診断や人間ドックを受けることはとても大切です。
検査項目に、血圧や腹囲の測定、血液検査などが含まれているため、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病の早期発見につながります。
オプションで頸動脈超音波検査や頭部MRI検査を受けて、動脈硬化について調べてもらうこともできます。
骨密度検査
閉経後は早めに骨密度検査を受けましょう。
保健所や一般病院でも骨密度の検査を行っていることが多いです。
X線検査や超音波法による検査方法が知られています。
がん検診
40歳以上の女性では、マンモグラフィによる乳がん検査が推奨されています。
子宮頸がんや子宮体がん検診も同時に受けておくことをおすすめします。
自治体や健康保険組合によるがん検診などを活用した場合、検診の費用を負担してくれる場合もあるため、積極的に活用しましょう。
■閉経前後の病気を予防するセルフケア
閉経前後の不調や病気を予防するために、すぐに始められるセルフケア方法をご紹介します。
生活習慣を整える
高血圧や脂質異常症を予防するために、十分な睡眠時間の確保と、減塩に気を配った和食中心の食事、適度な運動を心がけましょう。
禁煙し、アルコールを控えることも大切です。
散歩は骨を強くするともいわれていますので、日課にするといいでしょう。
リラクゼーション
ご自身がリラックスできると感じる時間や活動を生活の中に取り入れて、ストレスを軽減しましょう。
自然と触れ合う、好きな趣味に没頭する、良い香りのお茶やアロマを使う、ゆっくりお風呂に浸かる、などもいいですね。
カルシウムやビタミンDの補給
骨粗鬆症の予防のために、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨の形成に役立つ栄養素を摂りましょう。
カルシウムとビタミンDは同時に摂取することで、カルシウムの吸収が良くなります。
カルシウムは、乳製品、小魚、小松菜、大豆製品などに。ビタミンDは、サケ、ウナギ、サンマ、シイタケ、卵などに多く含まれています。
漢方薬を飲む
閉経前後の体調を整えるために、漢方薬の服用もおすすめです。
漢方薬は一般的に西洋薬よりも副作用が少ないとされており、対症療法ではなく、体質の改善に働きかけることで根本的な解決を目指します。
閉経前後の心身の変化には、ホルモンバランスの乱れやストレス、過労、冷えなどが影響すると考えられています。
健康維持には、老化により衰えた内臓や脳などの機能を回復するために、以下のような漢方薬を選びます。
・冷えや加齢によるホルモンバランスの乱れを改善する
・血流を良くしてからだ全体に栄養をとどける
・自律神経のバランスを整え免疫力を上げる
漢方薬は心とからだの機能の低下を根本から改善し、今の症状を改善するだけでなく、健康でいつづけることができます。
閉経前後の不調が気になる方におすすめの漢方薬
七物降下湯(しちもつこうかとう)
血圧を降下させることで、のぼせや肩こりなどの高血圧に伴う随伴症状を和らげます。体力中等度以下の人に向いています。
大柴胡湯(だいさいことう)
気の巡りを良くすることで、肥満症や、高血圧や肥満に伴う肩こりなどに働きかけます。体力がある人に向いています。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
胃腸の働きを高め水分循環を良くすることで、筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとりやむくみを改善します。体力中等度以下の方に向いています。
慢性的な閉経前後の不調には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
漢方薬を選ぶ際には自分の体質に合ったものを選ぶことが大切です。体質に合っていない場合は、効果が出ないことや、副作用が出ることもあります。購入時にはできる限り漢方に精通した医師、薬剤師等にご相談ください。
■早めの対処で閉経前後の不調を予防しましょう!
閉経前後の不調は、早めの対処が肝心です。ご紹介した検査や検診などで、自分の状態を把握しておきましょう。更年期や閉経前後の不調の改善には、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、漢方薬の服用も考えてみるのもいいでしょう。
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る「脳」の健康法』『脳疲労に克つ』他。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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