「緊張すると手汗が止まらない」「書類やスマホが手汗で湿る」「握手をためらってしまう」など……、暑くないのにびっしょりと出てしまう手汗。心当たりはありませんか?
手汗は日常生活で不便を感じることも多く、不快感もあります。また、単なる汗っかきではなく、思わぬ症状が隠れている場合もあります。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、「手汗」について教えていただきました。
■手汗の主な原因は「交感神経の活発化」
気温などとは関係なく出てしまう手汗。そのメカニズムは医学で完全に解明されているわけではないものの、主な原因は交感神経の活発化だとされています。
交感神経が優位になると、からだはアクティブになり、汗をかき、心拍数や血圧が上がります。
逆に、副交感神経が優位になると、発汗が抑えられ、心拍数が低下し、筋肉が弛緩。からだはお休みモードになり、精神的にもリラックスしやすくなります。
交感神経と副交感神経の関係は、アクセルとブレーキのようなもの。バランスが重要で、どちらか片方に傾けばいいというわけではありません。
しかし、手汗が異常に多い方は、交感神経が活発化しすぎている可能性があります。
とくに心配ないケースもありますが、あまりにも汗の量が多い場合、「手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)」という症状の疑いもあります。症状がひどい場合、まずは皮膚科を受診してみてください。
■理解されにくい手汗の悩み
周囲の人に相談しても「ただの汗っかきでしょ?」と軽く考えられてしまうこともある、手汗の悩み。認知度が低い疾患なので、「悩んでいる自分がおかしいのでは」と考えてしまう場合もあります。
しかし、手汗の症状は日常生活に弊害を及ぼします。
不便さや不快感がストレスになり、さらに症状が強くなる……と、悪循環に陥ってしまう場合もあるのです。
きちんと対策して、手汗の悩みを解決しましょう。
■自分でできる!手汗対策
手汗を軽減するセルフケアについてご紹介します。
(1)塩化アルミニウム配合のローションを塗る
塩化アルミニウム成分配合のローションを塗ることで、ある程度汗を抑えられます。塩化アルミニウムは、一般的な制汗剤の主成分として広く使用されており、安全性が確認されている成分です。
使用方法は、就寝前に手に塗って朝に洗い流すだけ。交感神経が作用しにくい夜間に塗ったほうが効率よく汗を抑えられます。
塩化アルミニウム成分配合のローションは、一部の調剤薬局やネット通販などで購入できます。ただし、手のかさつきなどの副作用が生じることもあるため、皮膚科医と相談しながら使用するのがもっとも安心です。
(2)リラックスする習慣をつける
日常生活のなかで、リラックスできる習慣をつけるのも大事です。ぬるめのお湯に入浴することで、副交感神経を優位にして、からだをリラックスさせられます。
緊張を和らげるラベンダーやベルガモットなどの天然アロマの香りを、スプレーやディフューザーで部屋に広げるのもおすすめです。
また、好きな音楽を聴く、映画を観るなど、自分だけの時間を確保するのも大事。仕事や勉強などから一時的に離れて、心身ともに落ち着ける時間を作りましょう。
(3)手汗に効くツボを押す
手汗が出たときに、とっさに使えるツボもご紹介します。
ツボは、親指で5秒ほど押してから離します。強く刺激しすぎないように気をつけてください。右手5回、左手5回を目安に行ってください。
労宮(ろうきゅう)
手のひらの真ん中あたり、ちょうど薬指を曲げた先にあるツボです。ストレスや気分の高ぶりを解消し、緊張からくる汗を抑えます。自律神経を整え、副交感神経を優位にするほか、疲労回復にも適したツボです。
合谷(ごうこく)
手の甲側、親指と人差し指の付け根のややへこんだ部分にあるツボです。手汗だけでなく、疲れやストレスを軽減し、気持ちを落ち着かせるツボです。
■手汗対策には漢方もおすすめ
手汗などの発汗異常は別の病気が関連している場合もありますが、西洋医学的に原因が特定できないことも多々あります。
その場合は、漢方薬を活用してはいかがでしょうか。
発汗異常は水分代謝の乱れや、ストレスなどによる自律神経のアンバランスが原因で起こると考えられます。漢方薬はからだのバランスを整えて手汗を根本改善へと導いてくれます。
手汗対策に適した漢方薬を以下に2つご紹介します。
手汗に悩む方におすすめの漢方薬
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
色白でぽっちゃり太りの汗っかきの方に適した漢方薬です。からだの不要な水分を排出することで、水分代謝を促します。
四逆散(しぎゃくさん)
緊張で手汗をかいてしまう方に適した漢方薬です。自律神経のバランスを整え、精神的ストレスによる発汗を抑え、イライラや不安感なども和らげます。
慢性的に手汗が気になる場合には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
漢方薬を使用する際に重要な点は、体質との相性です。いくら良い漢方薬でも、体質と合っていなければ症状を改善するどころか、副作用が起きる危険性もあります。
漢方薬を服用する際は、専門的知識をもつ医師や薬剤師に相談しましょう。
■セルフケアを活用し手汗を抑えよう
手汗は、水分代謝の異常によるものと、精神的要因からくるものがあります。
塩化アルミニウム成分配合のローションや、ツボ押しなどのセルフケアを併用しながら生活習慣も見直し、手汗の悩みを克服していきましょう。
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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