「かかとが痛くて歩くたびに気になってしまう」「朝起きるとかかとが痛む」というお悩みはありませんか?
実は、かかとの痛みは更年期や加齢と関係が深く、原因と対処法を知ることで、痛みを軽減できる場合があります。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師の碇純子さんに、かかとの痛みについて教えていただきました。
■かかとの痛みは更年期に関係している?
かかとの痛みの原因は?
40〜50代の女性に起きるかかとの痛みは、足底腱膜炎(ていそくけんまくえん)という病気が原因になっていることがあります。
足底腱膜炎とは、足裏のかかとと、指の付け根にある組織が炎症を起こしている状態です。
20~30代での発症確率は低く、50歳前後の更年期世代にとくに多い病態です。
更年期世代が発症する理由は?
女性が更年期を迎えると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少します。
エストロゲンは組織を滑らかに保つ作用があるため、更年期にエストロゲンが減ってしまうことで神経の周りにある膜や腱、腱鞘などの組織が腫れたり炎症したりするようになるのです。
足底腱膜炎を発症すると、歩くときの衝撃を緩和する靭帯や腱など、足を支える部分にも影響が出ます。
足底腱膜は足への衝撃を吸収するクッションの役割も担っていますが、更年期にはこのクッション性も低下するため、足の負荷が増して痛みが生じやすくなるのです。
また、足底腱膜炎は、足裏やふくらはぎの筋肉の血行不良がきっかけで起こることもあります。筋肉の血行が悪くなると、必要な酸素や栄養が届かず酸欠状態になり、硬くなってしまうのです。
さらに、加齢や長時間の立ち仕事や激しいスポーツなど、足に負担がかかる生活習慣の影響、扁平足など、複数の要因が絡み合ってかかとの痛みが生じる場合もあります。
■症状がひどい場合は整形外科に相談を
かかとの痛みは、足底腱膜炎以外の病気が原因になっているケースもあります。
・アキレス腱周囲炎
・リウマチ
・痛風
・ヘルニア
上記のような病気でも、かかとの痛みが生じることがあります。
自己流のセルフケアでは限界があるうえ、放置することで病気が進行したり、痛みが増したりするおそれもあります。症状がひどい場合は自己判断せず、整形外科を受診しましょう。
■更年期のかかとの痛み軽減方法
更年期による、かかとの痛みを軽減する方法をご紹介します。以下の3つを参考にしてみてください。
靴を変える
かかとの痛みを軽減するには、まず靴を変えてみましょう。
自分の足に合った適切なサイズであることはもちろんですが、土踏まずを柔らかいインソールで支え、筋膜の緊張を防ぐものを選ぶようにしましょう。
また、ロッカーソールと呼ばれる靴底のものを取り入れるのも有効です。
ロッカーソールとは、つま先が反り上がった形状をしている靴底です。親指を曲げずに蹴り出せるため、筋膜の引っ張りを防ぎ、歩行時の足への負担を軽減できます。ヒールの厚さは3cmほどの適度な高さのものがいいでしょう。
ただし、自分に合った靴選びは難しいことが多いです。
最適なものが見つからず困っている場合は、靴コンシェルジュなどの専門家に見てもらったり、オーダーメイドのインソールを作ってもらったりすると、痛みが快方に向かうかもしれません。
室内では靴下・スリッパを履く
足底腱膜炎は、患部の冷えが大敵です。
足を冷やすと足裏やふくらはぎの筋肉の血行が悪くなるため、症状が悪化しやすくなります。
床がフローリングの場合はとくに足が冷えやすくなるので、なるべく足を冷やさないよう、靴下やスリッパを履きましょう。
また、靴下やスリッパは衝撃を吸収するクッションの代わりにもなるので、かかとを保護してくれます。かかと専用のサポーターをつけるのもいいでしょう。
ストレッチをする
ストレッチや足裏のトレーニングも、かかとの痛みケアにおすすめです。
硬くなった筋肉を柔らかくすることによって、足底腱膜にストレスがかかりにくくなります。継続して行うことで、痛みの予防と改善につながります。
(1)足首のストレッチ
足をすね側にゆっくりと反らす動きを、10回ほど繰り返します。
それを3セットほど、無理のない範囲で行ってください。
(2)ふくらはぎのストレッチ
立った状態で壁を両手で押します。
片脚はひざを曲げて前方に、もう片方の脚はひざを伸ばして後方に置き、そのまま後ろの脚のふくらはぎを伸ばしていきます。
かかとは両足とも床に付けましょう。
(3)足の指の運動
気づいたときに足の指を動かしたり、足の指で物を掴んだりする運動も、足底の筋肉を鍛えられます。
■更年期のかかとの痛みには漢方薬も有効
更年期のかかとの痛みを緩和するには、漢方薬もおすすめです。
かかとの痛みの原因は、ホルモンバランスの乱れや血行不良、冷えなどと考えられています。
更年期のかかとの痛みの対策には、鎮痛作用で急性の痛みを和らげるだけでなく、「ホルモンバランスの乱れを整える」「血行をよくして痛みを改善する」「からだを温めて筋肉をゆるめる」といった漢方薬を選び、根本改善を目指します。
漢方薬は、からだの内側からバランスを整えることで、かかとの痛みだけでなく、イライラや頭痛、疲れやすさなどの更年期のさまざまな不調にもアプローチすることが可能です。
かかとの痛みにおすすめの漢方薬
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
滞った「血(けつ)」の巡りをよくし、血行不良による痛みなどに用いられる漢方薬です。血流をよくして、冷えの改善にも役に立ちます。
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
下半身の痛みや排尿トラブルがある人に適しています。腰の痛みや下肢痛、加齢による疲れやすさも緩和してくれます。
慢性的にかかとの痛みが気になる場合には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
漢方薬の注意点
漢方薬を選ぶときに重要なのは、体質との相性です。同じ「かかとが痛い」という悩みを持つ人でも、それぞれの体質により、適した漢方薬は異なる場合があります。
漢方薬の選び方で困ったときはプロに相談してみましょう。最近では、自分に適した漢方薬をすすめてもらえるオンラインサービスもあります。忙しくて病院や薬局に出向けない人にも便利です。
■かかとの痛みは原因を特定し適切なケアを
かかとの痛みは足底腱膜炎が原因の場合と、リウマチやヘルニアなどその他の病気が原因の場合があります。まずは原因を特定して、正しい対処につなげてください。
痛みを和らげるためには、日常的に足をいたわり、今回ご紹介したようなセルフケアをこまめに行うことが肝心です。
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:碇純子(いかりすみこ)さん プロフィール】
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師/修士(薬学)/博士(理学)。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いから、オンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
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【参考】
※足底筋膜炎におすすめの靴 – AKAISHI
※足底腱膜炎に効果的なストレッチで足底(足裏)の柔軟性を保つ – オムロンヘルスケア