ダイエットで悩むことが多いのは、「どんな運動が効果的なのか?」ということではないでしょうか。有酸素運動や筋トレ・ストレッチ・ヨガなどがありますが、それをやることが最も効果的なのでしょうか?
女性の体型改善の専門家であるパーソナルトレーナーの筆者が、データを元に、ダイエットのために効果的な運動について解説します。
■体重の減少に違いはない
最初に認識しなければいけないのは、どんな運動も「体重を落とす」ことに関してはあまり効果がないということです。
有酸素運動であまり体重は落ちない?
ワシントン大学医学部のKaren E. Foster-Schubertらが、平均BMI30.9の女性439人を集め、以下の4グループにわけました。
(1)何もしない
(2)食事制限
(3)有酸素運動(45分/日、週5日)
(4)食事制限+有酸素運動(45分/日、週5日)
これらを1年間続けて、体重の変化がどれくらいあったかを調査しました。それが以下のグラフです。
(参考文献より筆者が作成)
食事制限を行わずに1年間週5回の有酸素運動を続けた結果の体重の変化は、−2.6kg程度でした。確かに減量効果はあるのですが、この運動量で1年続けて−2.6kgだと、なかなか継続はキツいですよね。
筋トレを行うと体重の増加も!?
また、ミネソタ大学のThomas P. Olsonらが、BMI25以上の女性を30名集めて、1年筋トレをするグループと何もしないグループにわけたところ、以下のような結果になりました。
(参考文献を元に筆者が作成)
統計的な有意差はありませんでしたが、筋トレの方は体重の増加傾向がありました。
あくまでも「筋肉量が増加した」ことによっての体重の増加ですので、脂肪が目立つ体になったわけではありませんが、「筋トレをして体重は減らない」ということはご理解いただけたと思います。
食事制限は減量に有効
一方で、食事制限を加えると体重はしっかりと落ちるようです。
コロンビア大学のA.Geliebterらは、食事制限のみ、食事制限+有酸素運動、食事制限+筋トレを、それぞれ8週間行った結果、体重がどのように変化するのかを調査しました。
その結果は以下の通りでした。
(参考文献を元に筆者が作成)
各グループにおいて体重の減少に統計的な有意差はありませんでした。
体重を減らすことに重要なのは食事制限
以上のように、「体重を落とす」ということに関しては有酸素運動でも筋トレでも大きな違いはなく、食事制限をすることが体重を落とすために重要だということがいえます。
■筋肉量を保つとスリムになる
では、運動はダイエットに全く意味がないかというとそうではなく、非常に重要な役割があります。
特に、筋肉量を保つような運動をすることで、美しい体型を作ることができます。
以下のイラストを見てください。
これは、筋肉と脂肪の特徴を比較するために筆者が作成したイラストですが、同じ1kgでも脂肪は筋肉と比べて20%程度サイズが大きいのです。
また、筋肉は硬く垂れないでアウトラインが整っているのに対して、脂肪は柔らかく下に垂れてしまい、アウトラインも整いにくいという性質を持っています。
ですから、「体重は変わらないけれど体型が緩んできた」という方は、筋肉量を増やすと改善される場合がありますし、同じだけ体重を落としても、筋肉量を残しながら体重を落とすと、さらにスリムな体型になることができます。
■目的別!40・50代におすすめの運動
筋肉量を保つのは筋トレ
筋肉量が落ちるのを防ぐ効果を持つのは「筋トレ」です。
先ほどご紹介したコロンビア大学のA.Geliebterらは、筋肉量の変化についても調査していました。
その変化は以下のグラフを見てください。
(参考文献を元に筆者が作成)
食事制限のみ、食事制限+有酸素運動、食事制限+筋トレの3グループを比較すると、食事制限と食事制限+有酸素運動では筋肉量の減少は変わりませんでしたが、食事制限+筋トレのみ、筋肉量の減少は統計的有意に少なかったという結果になりました。
体重を落とすときに筋肉量はどうしてもある程度落ちてしまうのですが、筋トレを加えることで、体重を落としても筋肉量が落ちにくくなったという結果になりました。
つまり、減量食に筋トレを日々の運動の中に加えることで、よりシェイプアップする効果が高まるということです。
姿勢とスタイルを良くするにはストレッチ
姿勢が悪いとスタイルが悪くなる
また、体型を改善するためには姿勢が重要です。
以下のイラストを見てください。
左から、反り腰、正常、猫背という3つの姿勢を描いていますが、お腹の部分に注目すると、反り腰と猫背ではぽっこりと出てきてしまっています。
反り腰では、背骨を反りすぎることでお腹が前に出てきてしまっています。一方猫背では、背骨が前に曲がることでお腹に脂肪が集まってしまっています。
こういうことを起こさないためにも、姿勢を整えることは非常に重要なのです。
筋肉が硬いと姿勢が崩れる
特に、筋肉が硬くなると姿勢が崩れやすくなります。
どこかの筋肉が硬くなると、骨が硬くなった側に引っ張られてしまい、骨の並びが悪くなって姿勢が悪くなります。ですから、普段から筋肉の柔軟性を保つようにしておかなければいけません。
柔軟性を上げるのはストレッチ
筋肉の柔軟性をあげるために、最も効果的なのはストレッチです。
特に、日常的に運動不足の場合は、関節をあまり大きく動かさずに筋肉が硬くなってしまいます。それが繰り返されることで筋肉が硬くなり、姿勢の悪化を招き、スタイルが悪くなってしまうという結果になるのです。
定期的にストレッチをすることでそれを防ぐことができますから、日常で意識して取り組んでいきましょう。
ヨガやピラティスなどもおすすめ
このように、筋トレやストレッチも非常におすすめですが、ヨガやピラティスなども筋トレとストレッチの要素が入っており、スタイルを良くするには非常におすすめの運動です。
それぞれの運動にメリット・デメリットがあるので、自分が続けやすい運動を選んで、上手にダイエットを進めていきましょう。
(パーソナルトレーナー 藤本 千晶)
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【参考】
※Effect of Diet and Exercise, Alone or Combined, on Weight and Body Composition in Overweight-to-Obese Postmenopausal Women – Wiley Online Library
※Moderate Resistance Training and Vascular Health in Overweight Women – Medicine & Science in Sports & Exercise
※Effects of strength or aerobic training on body composition, resting metabolic rate, and peak oxygen consumption in obese dieting subjects – Oxford University