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女医が教える「更年期のよくある誤解」


つやプラ編集部

つやプラ読者の40・50代女性に、今関心を持っていることを伺うと、美容やダイエットに加えて「更年期」という回答も目立ちました。今まさに更年期で悩んでいる人のほか、どんな不調が現れるのか、今から不安! という人も多いよう。

宋美玄さんメイン画像

そこで、婦人科医として多くの女性の悩みに向き合い、メディアでの発信も積極的に行っている宋美玄さんに、「更年期のホント」を教えていただきました。

更年期はモンスターじゃない!正しく知ることが大切

ーーいつ更年期が始まるのか、どんな不調が現れるのか、不安を抱いている人が多いと思います。更年期について、改めて教えてください。

皆さんやたらと怖がっていますよね、更年期がくることを。よくわからないから、「後ろからモンスターがそろそろと忍び寄ってきて、急に肩を掴まれる」みたいなイメージの人が多くて。

でも、実は更年期の病態はすごくシンプルなんですよ。具体的に言うと、年齢を重ねると共に卵巣の働きが悪くなって、女性ホルモンの分泌が減っていくということなんです。

更年期の症状が出るのは女性の半分! 症状がないまま閉経を迎える人も

ーー女性は女性ホルモンの減り方が急だから、更年期の症状が出るのですか?

そうですね。男性も症状が出るのですが、女性の方が顕著ですね。よく聞くホットフラッシュや不眠など、様々な症状が更年期症状として出る可能性があります。

でも、女性でも更年期症状といわれる症状が出るのは、全体の半分くらいなんです。更年期の症状がないまま、卵巣が引退して閉経を迎える人もいます。

ーー女性の半数は更年期症状がないというのは驚きです。

更年期には二つ問題があって、一つは急激に女性ホルモンが減って、身体が対応できずに起こる様々な症状それ自体です。

もう一つは、その時は症状が軽くても、人生100年時代なので、卵巣が引退した後も長い間生きていかなくてはいけないということ。

更年期症状の病態はシンプルなので、基本的には生理が順調にきている人は問題がなく、特に心配することはありません。生理が不順になってきたら、血液検査でホルモンを計り、検査の結果、足りていなかったホルモンを補充したりするのが、更年期障害の治療の基本です。

検査を受けて自分の身体の状態を知ることも、治療によって根本的に解決したりすることもできるので、必要以上に不安になる必要はありません

ーー生理が不順だと、ホルモンを計測する時期によって値が上下するという話を聞いたことがあるのですが、1回の検査では判断できないということでしょうか?

そうですね、生理周期のどの時期に計るかによって変動はあります。ですが、生理周期によって大きな変動があるということは、まだ更年期ではないと言えると思いますね。本当に女性ホルモンが減ってきたら、生理周期でそこまで変動しないと思います。

ーー症状が出る人は女性全体の半分ということですが、残りの人は全くの無自覚ということでしょうか? それとも、不調は感じるけれど症状という程のものではないから、我慢しているということでしょうか?

難しいのは、更年期による不調の症状が、単に加齢によって現れた不調と見分けがつきにくいということなんです。

「プレ更年期」はない!?生理が順調なら40代前半で心配は不要!

ーー確かにそうですね。30代や40代前半でも、のぼせやイライラなど、更年期症状のようなものを感じると、「もう更年期?」と思ってしまうことがありますよね。ご著書ではそんなことはないと書かれていましたが…

更年期に関する情報は脅し系が多いんですよね。あれもこれも更年期というような。誰が考えたのか知りませんが、「若年性更年期」といった言葉も聞かれますが、そういったものもありません

「早発閉経」といって早めに閉経が起こる人はいますが、生理が順調にきているアラフォーであれば、更年期ということはまずありません。

宋美玄さんインタビューカット

ーー「プレ更年期」といった概念も正しくないということでしょうか?

そうですね。「若年性」というのも医学用語ではありません。妊娠中の「安定期」のように、誰かが勝手に言い出したものだと思います。

早くに生理が終わってしまう人は、元々生理が不順であったり、生理がたまにしかこない人だったりと、何かしら兆候があると思います。

生理があってもなくても、女性はずっと女性であり続けます

ーー不安が大きい人の根本には、「生理がなくなったら女性じゃなくなる」という気持ちがあるのかなと思うのですが…

その辺りの感覚については、ある程度、個人の感じ方を尊重するしかないと思います。ですが、私からすると、生理があることや出産すること、毎月排卵があること、といったことは女性であることの証ではないと思うんです。

でも、例えば子宮筋腫の患者さんに、「もう子供も産まないし、子宮があるとガンになるリスクが上がるので子宮を取りますか」とか「筋腫があって生理が重いなら、子宮を取ることを考えてみては」と提案した時に、「子宮を失うのは嫌です」と言われたら、それはその人の価値観ですから、尊重すべきですよね。

「生理がなくなったら女性じゃなくなる気がする」と言っている人に、「女性は生理が終わっても女よ」と言っても、「それはそうだ」と思う人もいれば、「この人はわかってくれない」と思う人もいるんですよね。なので、なんとも言えないのですが、そういう気持ちになるのは、それはそれで尊重しないといけないことだと思います。

ーー周りの人がケアをしてあげるべき問題なのかもしれませんね。

卵巣には二つ働きがあって、一つは子孫を残すために卵子を出すこと、もう一つは健康のためにホルモンを出すことなんです。年齢を重ねると、卵子は出せなくなるけれど、ホルモンは他から補充する方法があるんですよということは伝えたいですね。

産婦人科の女性医師は、自分でそれをやって更年期も変わらず診療を続けている人がほとんどだと思います。自分のホルモンの状態を調べる方法も、減少したホルモンを補う方法もあります。

そして、それはきちんと確立されている治療なので、そこにアクセスしてもらえれば、健康に生きていくことができます、ということは知っておいて欲しいですね。

劇的に進化しているホルモン補充療法、貼るだけのパッチ剤も登場!

ーーホルモンを補充する方法も劇的に進化していると聞いたのですが。

そうですね、以前は2週間おきに注射を打ったないといけなかったんですが、今は、パッチ剤などの経皮吸収型製剤や錠剤(経口剤)で補充できます。みなさんが心配なのは、血栓症やガンのリスクについてだと思うのですが、乳ガンに関しては少し増加が見られます

ただ、乳ガン自体が頻度の高いガンですし、定期的にガン検診を受ける必要があるという意味では、ホルモン補充療法をしている人もしていない人も同じなんです。乳ガンは初期で発見できれば、予後は悪くないので、他の脳卒中や認知症などのデメリットと総合して考えると、ホルモン補充をした方がいいと思います。

ですが、これについてはそれぞれの考えがあると思いますので、総合的に考えて判断してくださいという感じですね。

ーーホルモン補充が経皮吸収型になることで、吐き気などの副作用も軽減されているのでしょうか?

そうですね、胃腸や肝臓への負担は経口剤より少ないと思います。血栓症のリスクも明らかに低いですね。そして何より楽ですよね。パッチ剤なら週に2回貼ればいいだけです。費用は保険適用で月2000円くらいだと思います。

高額なサプリを買う前に一度婦人科を受診して検査を!

ーー月2000円ですか。もっと高いサプリを飲み続けている人もいますよね。

色々なサプリや健康食品があったり。更年期というマーケットがあるんですよね。保険診療で利便性の高いパッチ剤などを使えるので、それを使うのがいいんじゃないかと私は思います。

漢方薬による治療も保険診療で受けられますし、まずは婦人科で相談するのがいいと思いますね。月に1万円くらいかけてサプリを飲んでいて、病院には行かないというのを聞くともったいないなと思いますね。

ーーできるだけナチュラルなもので、とか、自前のホルモンでなんとかしたいという人も多いと思うのですが。

自前はもう無理ですよね。女性ホルモンが減って出ないから更年期なんですから。ナチュラルなものの方がいいのであれば、大豆イソフラボンを摂るのもいいと思います。

宋美玄さん大豆イメージ

乳ガンでエストロゲン補充ができないのであれば、大豆イソフラボンを摂るのがいいと思いますが、そうではない人はエストロゲン製剤を使う方がいいと思います。

更年期を乗り切るには日ごろの健康づくりが基本!

ーーよく読者の方から、普段からできる対策や生活習慣で気をつけるべきことを知りたいというお声をいただくのですが、40代前半の女性が今からできることはありますか?

普段から自分でできることというと、基礎体温をつけて更年期がやってくるのを早めに察知すること、くらいだと思います。あとは、健康を保つためにするべきことと同じです。よく寝て、バランスの取れた食事をして、適度な運動をする。健康診断を定期的に受けるというのもそうですね。

宋美玄さん基礎体温イメージ

特定の何かを食べるといい、というようなものはないですね。

ーー閉経後の生活が長いということで、それに備える方法はありますか?

やはりホルモン補充だと思います。ホルモン量の検査や補充のために病院に来てもらえれば、ついでにガン検診もできたりするので、まずは婦人科へ行くことだと思います。

ーー更年期は色々な症状が出るので、まず産婦人科へと思わない人も多いのでしょうか?

それもあると思います。ですが、50代の方で、めまいがするから耳鼻科へ行ったら、「更年期じゃないの?」と言われて、きちんと検査もせずに「婦人科へ行って」と言われたというケースもあります。それで婦人科でホルモンの検査をして、減っていれば治療をしますが、それでめまいが治らなければ、更年期の症状ではないんです。

不調があって、何科に行ったらいいか分からないという人もいると思います。そういう人は総合診療科のようなところに行くか、ホルモンについては婦人科で検査をして、各臓器のことはそれぞれの科にかかるとか、そういった対応をするのがいいと思います。

ーー更年期については婦人科医以外にはあまり知られていないのでしょうか?

まだまだ知られていないと思います。どんな薬にも副作用はあるのですが、婦人科の薬は特に副作用を強調されやすいと思います。ですので、きちんと主治医と相談の上、デメリットについても説明を受けて、納得した上で治療を受けて欲しいと思います。

更年期の後にある「次のステージ」を楽しみに、軽やかに生きて欲しい!

ーー今更年期でつらい思いをしている人や、来るべき更年期に不安を抱いている人にメッセージをいただけますか。

更年期は個人の認知の問題が大きいと思うんです。

宋美玄さんイメージ花

「更年期は病気じゃない」とか「母親だから弱音を吐いてはいけない」とか、そういったことから自由になるだけでも楽になると思います。更年期を経て次のステージに行くだけで、女であることに変わりはないのに、「生理が来なくなると寂しい」とか「女の証がなくなる」とか思っていると、よりしんどくなると思うんです。

妻としてとか母親らしくとか、真面目すぎたり、囚われすぎたりするとしんどくなるので。そうではなく、自分はどうしたいのか、どう生きていきたいのか、そういったことを考えながら、もっと気楽に生きて欲しいと思いますね。

【宋美玄さん プロフィール】

宋美玄さん

産婦人科専門医、性科学者。1976年兵庫県生まれ。大阪大学医学部卒業後、大阪大学産婦人科に入局。周産期医療を中心に産婦人科医療に携わる。2007年川崎医科大学産婦人科講師に就任。University College of London Hospitalに留学し胎児超音波を学ぶ。著書に『女のカラダ、悩みの9割は眉唾』(講談社プラスアルファ新書)、『セックス難民~ピュアな人しかできない時代~』(小学館新書)などがある。

 

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