40代ごろになると更年期が始まり、からだにさまざまな変化が生じ始めます。個人差がありますが、多くの方がこの変化を経験しています。
変化の例としては、のぼせやほてり、血圧の上下や発汗、動悸や息切れなどのからだに起こる変化のほかに、イライラや不安感などの精神的な変化もあります。
横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、精神的症状のイライラの原因と、行いたいセルフケアについて教えていただきました。
■イライラが抑えられない……その原因は?
更年期になると、女性ホルモンが乱れてきます。女性ホルモンには、生理や妊娠・出産のほか、思春期に女性らしいからだを作るために作用したり、血行をよくして肌に潤いと弾力を与えたりする作用があります。
また、骨密度を維持する働きや、自律神経のバランスにも関わっています。自律神経が乱れると、イライラや不安感などの精神的症状、吐き気やだるさ、頭痛、動悸などの身体的症状が生じてしまうのです。
そのため、更年期になり女性ホルモンが乱れてしまうと、自律神経のバランスが崩れ、イライラしやすくなります。
また更年期は、家族や自分自身の老いを自覚し始める時期でもあります。親の介護が必要になったり、自分も疲れやすくなり肌や髪に変化があったりと、環境やからだの変化もイライラする原因のひとつといえるでしょう。
■気持ちを安定させるセルフケア法4つ
まずは、家でも簡単に実行しやすいセルフケアを試してみましょう。
(1)不足しているビタミン類の摂取
更年期の症状には、ビタミン類を摂取するとよいといわれています。女性のからだでとくに不足しがちなビタミンは、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、葉酸です。これらの成分は、以下の食べ物に含まれています。
イライラする時、不足しているビタミンが摂れる食べ物
ビタミンB6: ニンニク・ピスタチオ・唐辛子
ビタミンB12: しじみ・あさり・牛レバー・焼きのり
ビタミンC: パプリカ・ブロッコリー・カボチャ
ビタミンD: あん肝・シラス干し・いくら・紅鮭
ビタミンE: アーモンド・ひまわり油・豆乳・ドライトマト
葉酸: 焼きのり・レバー類・青汁・わかめ
(2)アロマセラピーでリラックス
アロマセラピーにはリラックス効果があるため、イライラを抑えてくれる効果が期待できます。
イライラにおすすめのアロマは、ラベンダー・ローズ・ジャスミン・オレンジ・ベルガモットマンダリンなどです。これらには鎮静作用・血圧降下作用などが期待できるため、心身のリラックスにつながります。
(3)ヨガやストレッチをしてストレス軽減
軽い運動をすることで血行がよくなり、からだが温まります。冷え性が改善したり、筋肉の緊張がほぐれたりすることで、からだのストレス軽減が期待できます。
ストレスが軽減するとイライラも減少するため、家で簡単にできるヨガやストレッチを試してみましょう。
(4)睡眠の質を上げる工夫
更年期によくある症状のひとつに不眠があります。自律神経のバランスが崩れ、睡眠の質が悪くなると、精神的にも身体的にも疲労が溜まり、そのストレスがイライラにつながってしまいます。
睡眠の質を高めるために大切なことには、以下のようなものがあります。
睡眠の質を高めるために大切なこと
・寝る前に携帯電話をみないようにする
・寝る前に温かいものを飲む(白湯、生姜湯など)
・就寝の4時間前からはカフェインの摂取を控える
・就寝前の喫煙はさける
・自分に合った寝具を選ぶ
・軽い運動をする
■我慢できないイライラ・不安には市販薬や漢方も◎
セルフケアで改善が難しい症状の場合は、市販薬や漢方薬を試してみることをおすすめします。
市販薬
市販薬は、漢方薬が混ぜ合わされたものがよく販売されています。
メリットはだれでも簡単に服用できることですが、デメリットは漢方薬を混ぜて作っているため、個人に合ったカスタマイズができないことがあげられます。
サプリメント
更年期症状に効果が期待できるサプリメントには、エクオールというものがあります。エクオールは、大豆イソフラボンが腸内細菌によって変換されて生まれる成分で、女性の健康と美しさを保つといわれています。
しかし、大豆イソフラボンをエクオールに変換できるのは、2人に1人しかいないそうです。そのため、サプリメントから直接摂取することで、更年期の症状を抑える効果を期待できます。
ただし、サプリメントは医薬品には属してはいないため、あくまでも補助として服用することをおすすめします。
漢方薬
サプリメントのほかに、薬局などで購入できる漢方薬もおすすめです。イライラには、自律神経を整えることで、心を穏やかにする作用のある漢方薬を選びます。
心とからだ全体を整えることを目的としている漢方薬は、1つの症状だけでなく、更年期に起きるいくつもの症状を同時に改善できるのも特長です。
おすすめの漢方薬には以下のようなものがあります。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
神経の高ぶりを鎮め、高血圧、動脈硬化、神経症や不眠などの心身の状態をよくします。体力が平均以上の人に合った漢方薬です。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
血行をよくし、からだをあたためるほか、上半身の熱を冷ますため、冷えのぼせに効果が期待できます。からだが虚弱で疲れやすく、イライラや不安感を持つ女性に向いた漢方薬です。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血行をよくして熱のバランスを整えます。のぼせや冷えを改善して、子宮などの炎症を鎮める効果や、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。体格のいい赤ら顔の女性に合った漢方薬です。
漢方薬服用時の注意
漢方薬を服用する際に大切なことは、個人のからだに合ったものを服用することです。からだに合わない漢方薬や間違った組み合わせで服用すると、効果が出ないだけでなく、副作用が生じてしまう可能性があります。漢方薬を服用する際は、漢方に詳しい専門家に相談しましょう。
最近では、自分に合う漢方薬を薬剤師が選んで、自宅まで届けてくれるオンラインサービスもあるので、試してみるのもいいでしょう。
また、サプリメントや市販薬、漢方薬を試しても改善しない場合には、無理をせずにお近くの医師に相談することも大切です。
■イライラのない快適な生活を
更年期症状の「イライラ」 の原因と対処法についてご紹介しました。女性の多くが経験する更年期。原因と対処法を知り、更年期とうまく向き合ってよりよい生活を送りましょう!
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る「脳」の健康法』『脳疲労に克つ』他。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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