寝る前に手足が熱くなって、寝苦しいと感じた経験はありませんか? 更年期の女性の場合、手足の熱さは意外な原因から起こっているかもしれません。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、手足がほてる意外な原因や、生活に取り入れられる対策法について教えていただきました。
■手足のほてりの原因は内臓冷え?
手足のほてりには「内臓の冷え」が関係している可能性があります。
自律神経が乱れると、手足の末端部分の血管収縮が悪くなり、内臓に血液を集めにくくなるため内臓が冷えます。手足がほてるのは、この冷えた内臓をからだが温めようとしているサインなのです。
内臓の冷えは自分では気づきにくいもの。手足は温かく、むしろほてって熱いくらいなので、自分のからだが冷えていることに気づきにくく、対策が遅れることも少なくありません。
■夏は内臓冷えが起こりやすい
気温が高い夏こそ、内臓が冷えやすい時期です。
暑い日には、冷たい飲み物を飲んだり、冷房の効いた部屋に長く居たりしますよね。
手足のほてりを感じている人は、このような夏特有の生活習慣によって自律神経が乱れ、内臓が冷えてしまっている可能性があります。
また、エアコンの効いた室内と猛暑の屋外を行き来することによる寒暖差も、自律神経を乱す原因になるため、内臓冷えにつながっていきます。
暑い夏こそ、意識的にからだの内部の冷えを対策しましょう。
■内臓冷えからくる、手足のほてり改善策
では、具体的にどのようにして内臓の冷えを防げばいいのでしょうか。
おすすめの改善策を3つご紹介します。
(1)食べ物を工夫する
内臓の冷えを改善するためには、からだを温める食べ物を積極的に摂ることがおすすめです。
たとえば、生姜やにんにくにはからだを温める働きがあります。
下味に使ったり、薬味として添えたりして食事に取り入れましょう。
また、根菜やきのこ類、ネギなどの食材も、からだを温める作用があります。
(2)温かい飲み物を摂る
内臓の冷えを改善するには、温かい飲み物を摂るようにすることも大切です。
冷蔵庫で冷えたお茶や、氷のたくさん入ったジュースは控え、できるだけ常温に近い温度で水分補給をしましょう。
また、温かいお茶やスープ、白湯などを適度に取り入れるのもおすすめです。
生姜湯やシナモンティーは、からだを温める働きが期待できるため、取り入れてみましょう。
(3)リラックスタイムを設ける
ストレスや疲労も、内臓を冷やす原因のひとつです。
1日の中で、リラックスできる時間を作るようにしましょう。
半身浴やアロマテラピー、ヨガなどをして、忙しい日常を忘れられるようなひと時を過ごせるといいですね。
リラックスできると自律神経が整い、血行が促進されることで内臓の冷えも緩和されるでしょう。
■手足のほてりに悩む人は漢方を試してみて
手足のほてりがなかなか改善されない人は、漢方薬の服用も検討してみましょう。
更年期の不調のひとつである「手足のほてり」に対しては、内科や婦人科などでも漢方薬が処方されています。
更年期になると、女性ホルモンの減少により、体温調節をする自律神経に乱れが生じて手足のほてりが出やすくなると考えられています。
また、「基礎代謝や筋力の低下、血行不良などによって内臓が冷えること」「ストレスなどによって自律神経が乱れること」なども原因として挙げられるでしょう。
そのため、更年期の手足のほてりには、以下のような作用の生薬を含む漢方薬を選びます。
・ホルモンバランスの乱れを整える
・血流をよくして熱を巡らせる
・自律神経を整える
・おなかを温めて内臓冷えを改善する
漢方薬は、心とからだ全体のバランスの乱れを回復して、ほてりだけでなく肩こりや疲れやすさなど、更年期のさまざまな不調にもアプローチが可能です。
また、飲むだけなので毎日続けやすいのもメリットのひとつといえます。
手足のほてりにおすすめの漢方薬
加味逍遙散(かみしょうようさん)
疲れやすく、イライラや不安などを感じやすい方に。からだの熱を取り去ることで、のぼせやほてりに働きかけます。
温経湯(うんけいとう)
冷え症で手足のほてりが気になる方に。上半身にこもった熱を冷ますことで、手足のほてりに働きかけます。
慢性的に手足のほてりが気になる場合には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
漢方薬を選ぶ際の重要なポイントは、その人の状態や体質に合っているか、という点です。うまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。
医師や薬剤師など、詳しい専門家に相談するといいでしょう。
■手足のほてりは冷やすより温める対策を
手足がほてる意外な原因は、内臓の冷えにありました。
とくに内臓が冷えやすい夏は、食べ物を工夫し、温かい飲み物を飲み、リラックスタイムを作り内臓の冷えを予防しましょう。また、漢方薬を利用するのもおすすめです。
手足のほてりに悩む人は、内臓冷えの改善に取り組んでみてください。
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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