更年期を迎える40・50代女性のなかには、「理由もないのにからだがだるい」「目立った病気や怪我もしていないのに、10年前と同じように活動することができない」といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
更年期を迎える頃になると、40・50代女性にはさまざまなからだの変化があらわれてくるはずです。
横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、40・50代女性に起こりやすいからだの不調と更年期を元気に乗り越えるための方法について教えていただきました。
■更年期に起こるからだの変化
更年期を迎えると、40・50代女性のからだにはさまざまな変化が訪れます。では、具体的にどのような変化がみられるのでしょうか。
女性ホルモンの減少
更年期を迎える40・50代ごろになると、卵巣の機能が低下していきます。卵巣の機能が低下すると女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減り、ホルモンのバランスが崩れ始めます。
内臓脂肪の増加
女性ホルモンであるエストロゲンは、脂肪の燃焼を促すはたらきをします。そのため、更年期を迎えてエストロゲンが減少すると、脂肪を燃焼しにくくなるのです。
コレステロール値の上昇
また、エストロゲンには、悪玉(LDL)コレステロールの生成をおさえる役割もあります。そのため、エストロゲンが減少する40・50代の時期には、コレステロール値が上昇しやすい傾向にあるのです。
■更年期から気をつけたい不調・症状・疾患とは?
更年期付近から注意しておくべき症状や疾患について解説します。
ホットフラッシュ
エストロゲンが減少すると、血液の収縮・拡張をコントロールしている自律神経が乱れます。
すると、突然からだが熱くなったり、顔が火照ったりするなどのホットフラッシュの症状があらわれやすくなります。
めまい・耳鳴り
更年期症状のひとつとして知られている、めまいや耳鳴り。めまいや耳鳴りも、自律神経の乱れによって引き起こされます。
高血圧症
自律神経には、血圧をコントロールする役割もあります。そのため、更年期によりエストロゲンが減少し、自律神経が乱れると、血圧が不安定になり高血圧になりやすくなるのです。
脂質異常症
エストロゲンの減少は、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪の増加をも引き起こします。脂質異常症を放置すると、心臓や脳にまで負担がかかってしまうため注意が必要です。
骨粗しょう症
エストロゲンの減少は骨密度にまで影響をおよぼします。骨密度が低下し、骨も脆くなることにより、骨粗しょう症も起こりやすくなるのです。
尿失禁
エストロゲンが減少し、骨盤底筋群がゆるむことにより、尿失禁も起こりやすくなります。
■更年期を元気に乗り越える! 今からできる対策法4つ
更年期を乗り越えるための対策を紹介します。
ストレッチやウォーキングなど軽い運動をする
寝る前のストレッチや朝の軽いウォーキングなど、疲れない程度の運動を行いましょう。
これにより、骨密度を維持することができたり、脂質の低下にアプローチできたりなど、更年期症状の改善に役立ちます。
また、尿漏れ対策として、骨盤底筋を鍛えるストレッチもおすすめです。
早寝・早起きをする
早寝・早起きなど規則正しい生活を心がけることにより、自律神経が整います。自律神経が整うと血行も良くなり、疲れやすさも改善されるでしょう。
和食中心の食事をする
コレステロール値や血圧を下げるため、和食中心の食事に切り替えるのもおすすめの方法です。
出汁を活用する、大豆や納豆など植物性タンパク質を選んで塩分や脂質を控える、など普段の食事を工夫してみましょう。
漢方薬を飲む
漢方薬を服用するという方法もあります。心とからだの不調を整えることができる漢方薬は、いくつもの更年期症状を同時に改善することを得意としています。
漢方薬は、血流や水分の巡りを改善し、ほてり、のぼせ、関節痛などの身体的な不調を緩和すると同時に、自律神経を整えることで、イライラや不眠などの精神的な不調も改善することができるのです。
さらに、自然由来の成分でできているため、一般的に副作用が少ないといわれているのが特徴です。
更年期症状にお悩みの方におすすめの漢方薬
更年期症状を改善するために役立つ漢方薬を紹介します。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
ホットフラッシュやのぼせ、からだのほてりのほか、めまいなどの更年期症状に悩んでいる方におすすめの漢方薬です。そのほか、女性特有の悩みである月経不順の改善にも役立ちます。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血行を改善し、水分代謝を整えることができる漢方薬です。ぼんやりしていて疲れやすい、貧血がある、からだが冷えるなどの症状にアプローチすることができます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
ホットフラッシュなど顔のほてりに加え、イライラや不安など精神面にあらわれる症状の改善にも役立ちます。
自分に合った適切な漢方薬を
漢方薬にはさまざまな種類があります。どの漢方薬が自分にあっているのかわからないと感じている方もいるのではないでしょうか。
自分に合った適切な漢方薬を選ばなければ、期待した効果が得られないどころか、副作用が生じてしまう恐れもあります。
自分に合った漢方薬をプロが選んでくれるようなオンラインサービスもあるため、試してみるのもいいでしょう。
漢方薬は自分の体質やタイプに合ったものを選ぶことにより効果が発揮されるので、まずは専門家に相談することをおすすめします。
■しっかり対策して更年期不調を乗り越えよう!
更年期を迎えると、さまざまな症状があらわれます。しっかり対策を行い、無理なく更年期不調を乗り越えることがポイントです。
また、少しでもからだの不調を感じたら、毎日の生活習慣を見直す、漢方薬を服用するなど、対策を行うことが重要になります。
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る「脳」の健康法』『脳疲労に克つ』他。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
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